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赤い風船  作者: 青葉 雪人
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序章 旧世界より

その日は曇り空のどこか息苦しい日であった。


ビルや大型デパートの立ち並ぶ街の、少し開けた交差点。

特筆すべき事もない会社員の私は、その日も営業先へと向かうためにスーツ姿で歩いている。ぼんやりとした気持ちでいる中、ふと空を見上げると一つ風船が空高く飛んでいるのが見えた。


--赤い風船


ゆらりゆらりと不自然な軌道で空を舞っているのが見える。

特段風も強くなかったため、その風船はとても不自然なように見えて、私は目を凝らすべく立ち止まった。

すぐそこに見えるデパートの屋上には遊園地があり、小さな観覧車が顔を覗かせている。そこから飛び立ったのだろうと思考を巡らせながら、観察を続けてみる。

どこかに飛んでいくわけでもなく、上に向かうわけでもなく、ただその場をゆらりゆらりと飛ぶ風船に、私の意識は釘付けになっていた。

その時だ。わたしはその風船に寄り添うような形で共に揺れる、影を見た。


---


目覚まし時計の音とともに目が覚め、すぐさまその音を止めた。別に早く起きる理由はない、心の底からそう感じられた。今日で無断欠勤は5日目に突入する。電話の線は切っている。仰向けのままぼーっと天井を見る。なにか理由があって出社をやめたわけではない。今までの生活は順風満帆とまではいかないまでも、不自由はない平坦なものであった。何故自分がこのような状態になったのかは自分でもわからない。


あの日から、あの風船を見た日から、ただなぜか様々がどうでも良い事のように感じられるのだ。しばらくそのまま横になり、眠っているのか眠っていないのかわからないうたた寝の状態で、酩酊と覚醒を繰り返す。

30分ほど経過しただろうか。もう自分に眠気がなくなったことを確認してしぶしぶ体を起き上がらせた。朝の気だるさを振り切ってそのまま立ち上がると、思いっきり伸びをして次にデスクチェアにもたれかかる。

「さて、今日は何をしようか」と考えてみる。この四日間は何をしていたかあまり思い出せないほどに何もしていない。一日中横になっていたり、家にいることにあきて近場を散歩したり、と、その程度だ。

その日の朝も漠然と過ごした四日間と同じ様な、平凡な朝であった。しかし何を思ったか私は、遠くに行こうという正体不明の動機をして家にある水と少しばかりの食べ物を持ち、ドアノブに手をかけた。


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