Chapter.2に於ける登場人物と用語
登場人物
・ミーナ
人類文明が滅び、僅かに生き残った人間が『壊物』に怯えながら細々と暮らす世界で老翁の様な声と喋り方の『妖刀』と共に生きる十代前半の少女。
銀髪に白い肌、そして紅い虹彩を持った儚げな見た目とは裏腹に非常に快活で好奇心旺盛。
安息の地を求める旅の果てに『古の都』と呼ばれる大遺跡の表層部に築かれた集落に辿り着き、そこを治める『帝』リヒトに『奴』を滅ぼす為大遺跡を巡ることを求められ、旅の途中で出会ったシャチ、リヒトの親族であるフリヒトと共に再び旅に出た。
旅の中でどうにか『奴』の臓腑の中でも最も重要な部位、『心臓』の破壊に成功する。
・妖刀
ある日突然ミーナが手に入れた、人語を話す刀。
但し、その声は限られた者にしか聞こえない。
壊物との戦いに於いては、『正の思念』の宿った武器として重要な役割を担う。
旧文明を滅ぼした『奴』との戦いの中で命を投げ出した者達の一人でミーナの血縁者であるとリヒトやビヒトは推察しているが、未だ謎が多い人物。
・ルカ
ミーナが旅の途中で出会った青年で、彼女より少し年上。
力は並の人間と然程変わらないが、リヒトにその知能が買われ日々知識を授けられていた。
リヒト、ビヒトと共に『奴』との戦いに於いて採るべき行動を話し合っており、直接的な戦闘には関与しないものの重要な役割を果たす。
・シャチ
ミーナが旅の途中で倒れていたところを助けた青年で、旧文明滅亡の真実に迫るべく遺跡を探索していた。
ルカよりも少し年上で、この時代の人間にしてはかなり上背と体格に恵まれており、それに見合う以上の強靭な肉体を持っている、
特に戦斧の攻撃は振るうだけで壊物をバラバラにするほどの旋風を巻き起こす。
自身を特別な存在と信じて疑わない傲慢かつ自意識過剰な性格で、ミーナからも当初いけ好かないと思われていたが、遺跡探索に彼女を同行させたことをきっかけに友に好奇心を満たす冒険仲間と認識されるようになる。
ミーナにはその冒険心に振り回されながらも何処か惹かれている節がある。
何気に出自は謎であったが、人間から壊物に身を変えたダーク・リッチが自身を強化する為に生み出したクローンの中でも優秀な個体だったという事実が判明した。
その為壊物に対しては「この世界に在ってはならないもの」として強い敵愾心を抱いている。
・リヒト
シャチが遺跡の奥地で度々出会っていた青年で、『古の都』と呼ばれる巨大遺跡で多くの人々を統治する『帝』と呼ばれる人物。
若作りで痩せた風貌だが、何処か神秘性を備えている。
聞く者を陶酔させる甘美な声色で穏やかに語り掛け、また近しい者からも捉え処の無い人物と評されている。
ミーナとシャチに人類文明最大の妨げとなる『奴』を消し去るよう依頼し、その為の遺跡探索をサポートする。
その正体は嘗て滅亡しかけていた人類に捨て身の戦法を取らせる先陣を切った高貴な身分の人物で、既に肉体は死亡したものの思念体となり器に宿って百年以上生き続けてきた。
知性ある壊物からはその功績を『人類最後の英雄』と称えられるが、本人はこの呼び方を快く思っていない。
人類文明の再興に並々ならぬ執念を燃やし、その為ならば時には非情且つ過激な手段に出る事も厭わない。
ダーク・リッチを道連れに『命電砲』の閃光となり、『奴』の復活を捨て身で防ごうとしたが、その志は叶わずこの世を去ってしまった。
・フリヒト
当初リヒトの弟を名乗っていたクニヒトの息子で、ミーナよりもやや年下の少年。
父亡き後に少しでも『古の都』の役に立つ為、連射器を備えたクロスボウを訓練する。
また孰れ後継者となる為にリヒトから知識を授けられるが、伯父と思っていた彼の事を兄と思い込まされる。
リヒトの一族として必要とされ、ミーナとシャチの助けとなるべく旅に同行することになった。
・アリス
リヒトの側近で、妖刀から「人形の様」と評される事務的で無感情な女性。
ミーナ達を『古の都』の地下遺跡へと案内したり、冒険に必要な道具を用意したりと、何かとリヒトの意を受けて彼女達を助けることが多い。
またミーナが知識を求めた際、主からの命で彼女に勉強を教えることになった。
リヒトと同じく思念体として器に入りこの世に留まり続けてきた人物で、ビヒトが接触してきた際、彼に器を明け渡す形でこの世を去った。
・エリ
ミーナ達が旅の途中で出会った女性で、遺跡探索者を名乗っていた。
しかし遺跡探索者としてはポンコツも良い所で、度々罠にかかってはミーナ達を混乱に巻き込む。
正体は『双極の魔王』に飼われていた壊物の手先であり、ミーナ、シャチ、フリヒト、リヒトの四人を殺害するように命じられていた。
嘗ては類稀な戦闘能力を買われ集落を守るために戦っていたが、ダーク・リッチや『双極の魔王』の絶望的な戦力に屈服し、人類は壊物の家畜として生きるしかないという考えに囚われていたが、用済みとしてゴモラに殺害されそうになったのを機に壊物と決別、人類の為の戦力に復帰した。
ソドムとゴモラに骨から造られた短剣を渡されており、ダーク・リッチなど負の想念体にも通用する武器としている。
・ビヒト
南の大遺跡で出会ったリヒトの本当の弟で、兄やアリス同様肉体は既に死んでおり思念体としてこの世に留まっている者。
兄とは考えが異なり、人類は存続させるが文明は復興すべきではないと考えている。
また、人類の為に命を散らせ、その後も思念体として高い指導力を発揮した兄に対して並々ならぬコンプレックスと蟠りを抱いている。
遺跡という『奴』を封印する為の機構を組み上げた張本人であり、遺跡の扱いに関してはリヒト以上に大きな知識と権限を持っている。
・ダーク・リッチ
極めて珍しい、『知性ある壊物』で、人間の三倍ほどの大きさがある骸骨のような姿をしている。
人間と壊物を使って自身を強化する実験と研究をしており、ミーナの仲間たち全員と大なり小なり因縁を持っている。
シャチをクローンとして生み出したオリジナルであり、彼のことをSH=Aと実験体の記号の様に呼ぶ。
ミーナに二度破れて敗走したが、その後『奴』の臓腑を集めてその復活と肉体の乗っ取りを図る様になり、遺跡で度々遭遇することになる。
・ソドム
突如現れた、これまでとは次元の違う壊物『双極の魔王』の一体。
顔半分と背中、そして鉤爪に黒鷲の部位を備え、また手持ちの剣や装飾品に「髑髏鉄十字」の意匠が拵えられている。
ダーク・リッチと同じ様に高い知性を持っており、尊大な口調で話す。
嘗ての人類文明に存在し、滅びた国家の『負の想念』を核とする存在で、度々言動にそれを匂わせるところがある。
その戦闘力、殺傷能力は絶大であり、『古の都』襲撃では甚大な被害を齎し、またダーク・リッチを全く寄せ付けずに敗走させた。
同じ『双極の魔王』のゴモラとは相互にバックアップを担っているらしく、何方かが斃されても何方かが生き残っていればまた復活できると言う。
また、現状で唯一正の思念による攻撃に対策技を持っている。
・ゴモラ
ソドムと同じく『双極の魔王』を名乗る壊物の一体。
ソドムとは対極的に白鷲の部位と「星空南十字」の意匠を持つ。
また、尊大なソドムに対し粗野で下品な話し方をする。
ソドムと同じく強大な戦闘力を持ち、一時ミーナとシャチをも戦闘不能に追い込み全滅の一歩手前まで追い詰めたが、新たな力に覚醒した二人に斃された。
また同時にソドムも大傷を負った為、少なくとも回復までは復活できない模様。
・ネメシス
嘗て旧文明を滅ぼした、リヒトやビヒトから『奴』と呼ばれる原初の壊物。
ダーク・リッチが個人の負の想念、ソドムとゴモラが国家規模の負の想念を核とするのと同じく、世界規模の負の想念を核とする正に最大最悪の厄災。
嘗てその強大な力で人類を絶滅寸前にまで追い込んだが、リヒトが捨て身の攻撃によって広めた檄によって鼓舞された人類の前に敗北し、脳髄と臓腑の計十二個の部位が五大遺跡に封印されて動けない状態にある。
ミーナ達の奮戦により心臓を破壊されたが、ダーク・リッチの暗躍によって他の全ての臓腑が集められ、飢餓状態にありながら復活を果たした。
現在は復活早々に受けた甚大なダメージ回復のため、百年以上眠っていた『古の都』の地下遺跡の奥底でじっと息を潜めている。
用語
・壊物
外の世界を多数徘徊する、異形の姿をした存在。
リヒトによると、この世界の生物にとって種という概念を壊し、摂理を造り変えてしまう、「在ってはならないもの」。
食事によって摂取した生物や壊物の遺伝子情報から有用なものを取り込み、自身の身体を変化させて無用な絞り粕を新たな壊物として造り替え、卵として吐き出して増える。
その性質故に寿命は存在せず、また種という概念を持たず一個体で完結しており、その為一部例外はあるものの「自分以外の全ては餌か敵」という「弱肉強食」の生態を持つ。
リヒト曰く、元は旧文明滅亡の際に顕れた『奴』の身体がバラバラに砕け散った残骸であるらしく、『奴』を壊物に取り込まれた時、人類は滅亡するという。
また、ダーク・リッチや『双極の魔王』、『奴』ことネメシスなど、最上位クラスの壊物は知的生命体の『負の想念』を核とすることで強大な力を備えている。
・空間の裂け目
ミーナ達の住む世界のいたるところにある不気味な闇を覗かせる裂け目。
正確には『時空の亀裂』であるらしく、主に壊物の棲み処となっている。
旧文明の末期に人為的に作られたものらしく、人類が辿る事の出来なかった様々な世界や歴史の可能性を探し求める際に生み出されたが、それが「全く異なる形で生物が進化した世界線」とこの世界を繋げてしまった為、壊物というイレギュラーが跋扈することになった。
ソドムとゴモラによると、壊物もまた元々別の世界線から移動を試みる存在であり、同じように知的生命体が作った『時空の亀裂』を餌場の目印にしていたらしい。
・遺跡
旧文明が残した建物の中で、現在も一部機能しているもの全般を指す。
ダーク・リッチの研究施設の様な建物規模のものもあれば、『古の都』の様な都市規模のものまで数多存在する。
リヒトとビヒトの間で管轄が割り振られており、『古の都』と東西の大遺跡、他小規模の遺跡をリヒトが、遺跡のシステムを作動させるエネルギー供給を担う『原子力遺跡』こと北の大遺跡、南の大遺跡を含む他の遺跡をビヒトが担当している。
元々はビヒトが『奴』ことネメシスを封印する為に作り上げたものであり、多くの権限は彼にある。
・『古の都』
数ある旧文明の遺跡の中でも最大規模のもので、リヒトに統治される形で表層部には多くの人間が生活している。
また地下にはやはり他の遺跡と同じく探索が必要な領域が広がっており、その奥には旧文明滅亡の原因となり人類に終わりを齎し得る原初の壊物、ネメシスの脳髄が眠っているらしい。
・『正の思念』
・『負の想念』
その名の通り、人間などの知的生命体が抱く精神的な影響力。
ポジティブな『正の思念』は死んだ人間の思いをこの世に留まらせたり、壊物に対して有効な武器となったりする一方で、ネガティブな『負の想念』は壊物の核となることで強大な厄災となる。
アリス曰く、科学的に解明されたものであるが人類が信仰してきた霊的な存在とはまた別であるらしい。
・『命電弾』
・『命電砲』
人類が壊物、特にネメシスとの戦いの為に生み出した非人道的兵器。
物体に対する破壊力は無い代わりに『負の想念』を核とする壊物に覿面の威力を誇る。
しかし反面使用者には甚大な負担を強い、『命電弾』は寿命を、『命電砲』は命の全てと正の思念の殆どを消費してしまう。
元々は『命電砲』としてネメシスとの戦いに開発されたもので、初期の者は威力が小さい代わりに正の思念を全て消費し切らなかった為、最初に自らを捧げたリヒトは正の思念をこの世に残した。
その後改良され、より威力と負担が大きい後期型の『命電砲』と、威力と負担を著しく軽減した『命電弾』が生み出された。