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救急車のサイレンが耳の片隅で聞こえた。
私は多分、運ばれたのだ。そう思って目を開けると、そこはさっきユウにふられたあの雑木林だったのだ。
「え…」
ユウの姿はなく、辺りはシンと静まっている。
「…」
1つ思った事がある。
ひょっとして、ユウが運ばれたのかもしれない。
あの青ざめた顔はやはり尋常じゃなかった。
慌てて立ち上がるととっさに走った。
「はぁっ、はぁっ、」
近くの病院は全て行ったが、どこにもユウはいない。
勘違い…かな…
ふと振り返ると、そこに体が透けたユウが背後にいた。
「ごめん」
ユウが言った。
「……どう…したの…?」
「俺病気で余命3ヶ月でさ、もう今日が最後だから、会いたいけどもう死ぬだろ?だから、そんな事知られたくなくて別れようって言っちゃって…」
…頭が真っ白になってしまった。
ーーーーーユウが死んだ?
いつも側にいてくれたユウが?
「信じられないよ…
ねぇ、嘘って言って‼︎」
涙をこぼしながら訴えた。
こんな事言ってもしょうがないけど…
「最後にお礼を言いたくて。」
どうして
どうして
どうして?
私の大切な人がまた死んだ。
私の親もそうだった。
どんどん奪われていく。
桜のように散ってゆく。
「お礼なんていらない。」
抱きしめても当然透けている。
「お礼ってなに?」
私は何もしなかった。
ユウはいつも私の我儘を聞いてくれた。
こんな私にお礼なんて無いよ。
ーーーーーーただ側にいて。
そう言おうとした。
また我儘だ。
「貴方がいてくれて嬉しかった。」
ユウがそう言った。
私の目からは涙が溢れ出た。
そのまま、ユウは何かを言いかけて心地よい木漏れ日と共に太陽の光に包まれていった。






