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シロアリたちは みんな、 やせほそり、 めが おちくぼんで、 うつろでした。 みんなそろって くらい かおをして、 ぼうぜんと、 ただただ、 すわりこんでいました。
「どうしたの?」
そらが たずねました。
「ぼくたち、 となりむらの ルッカに すんでいるんだけど、 このあいだの たつまきで、 いえも、 そだてた やさいも、 ぜんぶ だめに なってしまって。 たべものと すむところを さがして、 あるいて きたんだけど、 もう みんな つかれはてて しまったんだ」
おおきな ためいきを ついて、 シロアリは うなだれました。
「のどが、 からからだ」
おじいさんの シロアリが いいました。
すると ゆめは、 すいとうの なかの、 パルコの いずみの みずを、 おじいさんに さしだしました。
「……くれるのかい?」
ゆめが うなずくと、 おじいさんは のどを ならして、 いずみの みずを のみほしました。
ぼくも ほしい、 わたしも、 と、 シロアリたちは、 いずみの みずを、 あっというまに のみほして しまいました。
「ありがとう、 おじょうちゃん」
シロアリたちは、 なみだを ながして かんしゃしました。
そのようすを みていた そらは、 リュックから まほうの すずを とりだして、 シロアリたちに わたしました。
「この すずは、 ねがいを ひとつ かなえてくれる、 まほうの すず なんだって。 この すずで、 むらを もとどおりに して」
てわたされた シロアリは びっくりして いいました。
「こんなに すごい たから、 もらえないよ。 きみたちの だいじな もの だろう?」
そらは くびを よこに ふりました。
「へいき。 おれの おねがいごとは、 あたらしい おもちゃだけど、 おかあさんに おねがいするから いい」
「ゆったんも、 いちごは おかあさんに おねがいする」
ながい ひげを はやした シロアリが、 そらと ゆめの まえに きました。
「わたしは ルッカの そんちょうです。 あなたがたの 『ぜんい』、 ありがたく うけとります。 これは、 せめてもの おれいです。 うけとって ください」
そういって、 そんちょうは、 カビの はえかけた パンを、 そらと ゆめに さしだしました。
「むらが もとどおりに なったら、 あらためて おれいに うかがいます。 ほんとうに ありがとうございます」
シロアリたちは、 なんども おじぎして、 おれいを いいました。
そらと ゆめは、 やっと おうちの まえに とうちゃくです。 そらも ゆめも、 おうちに かえってきたのは うれしかったのですが、 きもちは どんよりしていました。
『なかよしの あかし』も、 『おもいやりの あかし』も、 なくなって しまったからです。
そらは リュックから、 『ゆうきの あかし』を とりだして、 かなしくなりました。 きんいろの はなは、 すっかり しおれていたからです。