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つめたい かぜが、 びゅうびゅうと、 そらの ほほを なでました。
そらは、 つぎに つかむ いわを、 しんちょうに えらびながら、 すこしずつ がけを のぼっていきます。
あっというまに、 ペトラと ゆめから みた そらは、 おまめくらい ちいさくなりました。
「ひだりに、 でっぱった くろい いわが あるだろう? はなが さいていたのは、 たぶん そこだよ!」
ペトラが そらに むかって さけびました。
そらは、 うなずくかわりに、 ひだりに てを のばしました。
ずるっ
のばした てが いわを つかんだとたん、 ひだりあしが すべりました。
そらは、 てに ちからを こめて ふんばります。
なんとか、 いわに あしを かけなおし、 でっぱった くろい いわに、 ぶじ とうちゃくしました。
そこには、 きんいろに かがやく いちりんの はなが、 りりしく さいていました。
ひるでも めをひく そのはなは、 よるには、 きっと、 もっと すばらしいだろう、 と、 そらは おもいました。
「おはなさん、 ごめんね」
てを のばすと、 きんいろの はなは、 ぬかれるのを まっていたように、 するりと ねっこから ぬけました。 そらは、 その はなの くきを やさしく つかみました。
がけの したに おりると、 ペトラも ゆめも、 そんけいの まなざしを、 そらに むけました。
「がけから おちそうになった ときは、 いきが とまるかと おもったよ。 そらは、 ゆうきが あるなぁ」
「にいに、 すごーい!」
そらは、 すこし てれながら、 すりむいた ひざこぞうに、 すいとうの みずを かけました。 すいとうの みずは つめたくて、 ひざこぞうに よく しみます。 そらの めから、 ひとつぶ なみだが でましたが、 そらは、 なみだを さっと ふきました。