召喚士を選んだら魚介類が召喚されました
「おっしゃ! やっと手に入れたぞ!」
俺は届いたばかりのVR機器一式を手に取り、嬉しさのあまりテンションがあがってしまう。
このVR機器は『フリーワールドオンライン』というVRMMOをプレイするためのセットだ。
人気が高く、常に品薄だったが運よく手に入れることが出来た。
「えーと、VRヘッドギアを付けてと……」
すぐに準備を始め、ログインすることにした。
『フリーワールドオンラインへようこそ。まず初めにキャラクターを設定してください』
ログインすると、どこからか声が聞こえてきた。
声に従い、自分のキャラを決めていく。
『では最後にジョブを選択してください』
「ジョブ?」
『はい。この世界では様々なジョブが存在しており、それぞれスタイルが異なります』
「どんなジョブがあるんです?」
『ジョブ一覧を表示しますのでそこから選んでください。詳細を見たい場合は選択すると表示されます』
すると、色々なジョブの名前がずらずらーっと表示された。
ふむふむ。結構多いな。
剣士、僧侶、弓士、重戦士、魔導士、呪術士、闘士……
本当に色々ある。
しばらく眺めていると、面白そうなジョブを発見した。
【召喚士】
……ほう。召喚士か。
詳細を見てみよう。
■召喚士
モンスターを召喚し、戦わせることができる。
最大3体まで同時に召喚することができ、戦況を有利に進めることができる。
使役するモンスターによって個性が異なり、状況に応じて使い分けることが重要だ。
ほうほう。面白そうだ。
ポケ〇ンみたいにモンスターを戦わせることが出来るのか。
これにしよう。
『召喚士ですね。こちらでよろしいですか?』
「はい」
『それでは町へ転送いたします。フリーワールドオンラインをどうぞお楽しみください』
そう聞こえた後、辺りが真っ暗になった。
「ここが……VRMMOの世界か……」
目を開けると、そこには人々が行きかう街並みがあった。
五感がリアルに伝わってくるのが分かる。
買ってよかった。本当によかった……
「よーし。さっそくモンスターを召喚してみるか!」
メニュー画面を開くと、モンスター召喚の項目があったのがそれを選択。
「おお……?」
地面が光り、そこからモンスターらしき物体が見え始めた。
徐々に光が収まり、モンスターの姿がハッキリと見えるようになってくる。
そこに居たのは――
「んなっ!?」
平べったい物体だった。
そいつは空中にユラユラと漂い、ヒレを動かしながら飛んでいた。
だがこいつは見たことがある。
というか現実世界にもいる生物だ。
平べったい姿。
上から見ると黒っぽいが、下から見ると白っぽい。
そして細長い尻尾があった。
けどそいつはあまりにも場違いなモンスターだった。
どう考えても陸に生息しているようなやつじゃない。
なぜならそいつは――
「……エイじゃねーか!」
そう。
召喚されたモンスターはどう見ても『エイ』なのだ。
どうなってんだこりゃ。
なんで陸に居るんだよ!?
つーか何で浮いているんだよ!?
ここは海じゃねーんだぞ!
さすがにこれはない。
もっとカッコいいモンスターがよかった。
「……そ、そうだ! 最大3体まで召喚できるんだったな!」
気を取り直して追加でモンスターを召喚することにした。
再び地面が光り、モンスターの姿が現れる。
「………………は?」
だがそいつも場違いなモンスターだった。
つーかどう見ても水辺に生息しているはずのモンスターだ。
固い甲羅。
二つの大きいハサミ。
美味しそうな姿。
そいつの正体は――
「…………今度はカニかよ!?」
そう。
どう見てもカニだった。
エイよりかはまともかもしれない。
だが俺が求めているモンスターではない。
「次!」
最後の召喚だ。
次こそはまもとがモンスターであってほしい。
地面が光り、モンスターが現れる。
「頼む……今度はまともであってくれ……!」
が――
「……………………」
空しくも希望は叶うことが無かった。
他の2体よりも大きく、その姿はよく見るやつだった。
食べたこともあるし、どういう生物なのかもある程度知っている。
だがやはり場違いには変わりなかった。
だってどう考えても海に生息するやつだもん。
そいつの正体は――
「…………マグロ」
そう。
あのマグロである。
エイと同じく、何故か空中に浮いている。
まるでここが海の中にいるかのように泳いでいる。
こんなの現実では絶対にありえない光景だ。
「…………そうだ。すし屋を開こう」
プレイスタイルが決まった瞬間であった。