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終わりから始まる恋物語  作者: 梅干 茶子
北の神殿
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王国軍合流


 明けて翌日。

 無事にニ十個のペンダントヘッドを用意して表神殿に訪れると、それはフィージアの手から巫女長へ渡された。


 「まあ!ありがとうございます!」

 「数がこれしか揃わなかったので、申し訳ないけれど優先順位を付けて頂けます?配布はアイル巫女長にお任せして良いかしら?」

 「はい!こちらで割り振らせて頂きますわ。戦場に出るものに優先的に使用して頂きましょう」

 「お任せしますわ」


 これから守護結界を張るために、精霊持ちの者は一度アイル巫女長の元へ集う。

 それを狙って一任したのだ。


 今後とも、作成は、サージャ、フィージア、ギルス、クロードの四人になる。負担は大きいがリスクは犯せない。

 今回の兵器騒動で分かる通り、一般に精霊文字が出回るのは多大な危険を伴う事となる。その為、簡単な物もフィージアは他者の協力を良しとしなかったのだ。

 神聖帝国側もその危険は理解しているのだろうから、恐らく扱えるのは一部の者のみに限られている筈だ。とのサージャの見立てである。

 サージャも同じく、偵察部隊にも精霊文字について詳しくは伝えていない。とはいえ、そもそも精霊との会話が成り立つ者でなければ正確なところは理解できないであろうが。



 サージャにしても、フィージアにしても、ギルスやクロードにしても、自分たちの精霊の守りを作るより、今回の方が疲労が少なかった。おかげで朝の段階で随分復活した。今日は前回のようなぐったりした状態ではなかったので、通常通り準備をこなす予定になっている。


 サージャ達が三々五々散ろうとしたその時だった。

 北の神殿に、偵察部隊から連絡が入った。


 「王国軍本体が到着致しました!」


 予定より、半日早い到着であった。




 ※ ※ ※




 「ギルス!」

 「アルヴ!無事で良かった!」

 「お前こそ!」


 ギルスと肩を組み、背を叩き合うのは、同じ金髪の男性。騎士団副団長のアルヴだ。

 背丈もギルスと大差ない。

 ただ、ギルスは背の半ばまで髪を伸ばしているのに対し、アルヴは短く切っている。

 目は、金。彼は王国貴族だった。

 全身黒で正装しているが軽装備のギルスに対し、アルヴは全身鎧で固められている。動く度にガチャガチャと音が鳴った。


 「で、どうだった?先走った行動は抑えられたか?」

 「はは・・・まあ、それは後でな。そっちの状況はどうなんだ?」

 「ああ。進展なし、だな」

 「違うだろ。兵士の方だよ」

 「何だそっちか」

 「当たり前だ」


 軽口を叩きながら、王国軍の現状を確認する。

 こう言う気安い同世代は、ギルスにとってもアルヴにとっても貴重だった。ついつい軽口が先行してしまう。


 「なんとか、道中控えてた連中を引っ張ってきた。逆にこっちの重症者は置いてきたから、兵士全体では三百ちょいって所だ。うち、歩兵が二百五十、魔法兵団は五十人ってところか」

 「騎兵は?」

 「出来る奴は居るが、そもそも馬が足りなくてな。荷馬車用に数頭。後は十人位ってとこだ」

 「そうか・・・突破力に欠けるな」

 「ここで調達できりゃって思ってたんだかな」


 ギルスは首を横に振る。


 「そもそも騎兵が居ないんだ」

 「・・・やっぱりか」


 二人揃って渋い顔になる。


 「ある数でやるしかない。そうだろう?」


 サージャがギルスの背後から声を掛けた。


 「サージャ様!ご無事で何よりです」


 アルヴは流れる動作で礼をする。

 流石は貴族。慣れたものだ。


 「ああ。アルヴ殿も無事で良かった。長旅で疲れているところ申し訳ないが、早速、魔法兵団の団長、副団長も入れて会議がしたいのだが、大丈夫か?」

 「はっ。天幕も既に用意して頂いていますので、後は兵士に任せられますから、こちらは大丈夫です」

 「では、魔法兵団の方は私が行こう。ギルス、アルヴ殿を北の神殿へ案内してくれ」

 「了解致しました」


 サージャは踵を返して、魔法兵団の天幕に向かう。

 誰に聞いた訳でもない。精霊が教えてくれただけだ。


 黒い戦闘服を身に纏い、黒緑の髪をなびかせて颯爽と立ち去る後ろ姿に、アルヴは溜息を漏らした。


 「相変わらず、キリッとした御方だな・・・」

 「・・・やっと、本調子が出て来たな」

 「何だ?今迄本調子じゃなかったのか?」

 「ああ、ちょっと色々あってな。何とか間に合ったって感じだ」


 ギルスも、サージャの後ろ姿に安堵の溜息をを漏らす。

 北の神殿に着いてからのサージャは、調子を崩しがちだったのだから。


 「何だ色々って」

 「王族の機密、聞きたいか?」


 アルヴの疑問にそう返せば、アルヴは暫く考えてから首を横に振る。


 「・・・いいや、今は止めておくよ。士気に関わりそうだ」

 「正解だ。ま、解決したら話すさ」


 ギルスは言って、頭の後ろで手を組んだ。


 「ほれ。早く指示して来いよ。待ってるから」

 「ああ。すぐ戻る」


 アルヴは近くの天幕に入って行く。

 それを見送って、なんとはなしにサージャの方を見る。

 サージャは魔法兵団のウィンズ団長と話をしている所だった。

 髭の長い、金髪銀目、宿る光は青の初老の男性だ。

 サージャは引く事無く、堂々と話している。同じ戦士として、対等に。

 それはギルスが一番馴染み深いサージャの姿だった。


 サージャの横顔を見て、ギルスはフッと微笑んだ。


 「・・・もう、大丈夫そうだな」


 視線を戻せば、丁度アルヴが天幕から出てきた所だった。


 「行くか」

 「ああ」


 二人は連れ立って、歩き出した。




 ※ ※ ※




 作戦会議は表神殿のいつもの部屋だ。

 面子は神殿側は各長が、王国軍側は、騎士長代理としてアルヴ、魔法兵団からは団長のウィンズ、副団長のイリア、諜報部隊からはアオとオウカ。それから、サージャとギルス、フィージアとクロードだ。


 最初は情報のすり合わせ、北の神殿の戦力や、状況を伝え、王国兵の戦力と合算する。さらには諜報部隊から敵の情報、フィージアからは兵器の情報が提供される。


 「神聖帝国軍の位置は、あと一日半。今日はどこかに野営するとしても、進軍状況では明日の朝から戦闘が始まってもおかしくはない。問題は、あちらが使ってくる兵器の飛距離だ。あんまり遠距離過ぎると効果が出ない、と思いたいのだがな・・・」

 「こちらの兵士にはろくな休みも与えられないのが痛いですね。ここまで八日間、強行軍だった。何かいい方法が欲しい所だな」


 ウィンズとアルヴがそれぞれの状況を述べる。


 「それだったら、今日は温泉を開放するからゆっくりとしてもらうといいわ。とは言っても準備はあるから、交代になるとは思うけど。温泉には回復効果もあるし、入ると入らないとじゃ大きく違うはずよ」

 「食事はこちらで用意しよう。兵士には、とにかく各自回復に専念する様に言ってくれ」


 返すのはフィージアとクロード。


 「あの、魔法兵団の精霊達を守ることは出来ますか?」


 控えめに意見を述べるのはイリアだ。


 「それについてなのだが、準備が間に合わなくてな。個別の物は用意出来なかったんだ。ただ、精霊を守れる箱をこれから作る。その中に精霊石を入れてもらえれば、精霊を守ることが可能だ」

 「そうですか。魔法兵団は基本的には一か所から精霊魔法を放ちますから、団員に関してはそれで大丈夫でしょう。ですが、やはり団長と私には個別の物が必要かと・・・申し訳ありませんが、ご用意いただけませんか?」

 「分かった。ではそちらも明日までに用意しよう」

 「無理を言って済みません、サージャ様」

 「いや。必要なものはきちんと共有すべきだ。むしろ言いにくいことを言って貰ったな。気が付かず済まなかった」


 イリアは慌てて首を横に振った。顔が真っ赤だ。あまり公の場で発言するタイプではないのだ。


 「サージャ様、箱は私が。個別の方をサージャ様にお願いしても良いかしら?」

 「ああ、すみませんフィージア様。よろしくお願い致します」


 と、言う事で、いつもの四名の今夜の作業は決定した。


 「武器の数はどうだ?足りるか?」

 「ええ、十分です。あれだけの質の高いものをご用意いただけるとは思いませんでした」


 これはホールディとアルヴの会話だ。

 こちらはお互いに、戦う上で連携する間柄だ。これからお互いの配置について詳しく話し合う必要がある。


 「それから、偵察部隊ですが・・・今夜の野営地を狙います。そこで武器の破壊を試みます」


 アオの発言で、その場にいた大人たちがザワリとした。

 サージャとギルスは平然としているが。


 「それは・・・ちょっと危険ではないの?貴方達は偵察だけでもいいのよ?」


 そう言うのは、アイル巫女長だ。

 横でイージット神官長もうんうんと頷いている。


 「いいえ。彼らは夜陰に乗じて動くことを最も得意としております。兵士たちに気づかれず、文字に針を刺し、個別に破壊して戻って来る。見つかる危険が一番少ないのは彼らです」

 「なるほど。敵は破壊されていることに気が付かない。その隙を付いて、こちらから先制攻撃を入れるつもりか」

 「それなら、確かに・・・見つかるリスクが高いとはいえ、直接戦闘の率は低い、か?」

 「ええ」


 サージャの発言に、唸るホールディとアルヴ。


 「私たちは、直接戦力としては未熟な者が多くおりますわ。ですが、こういった事に関しては、ずっとサージャ様の元で学んできたのです。信頼していただきたいですわ」


 オウカが堂々と言い切る。

 「だったら」と言葉を挟んだのはフィージアだ。


 「リンジアを付けるわ。彼女は隠形が得意な上位精霊よ。守りも完成しているし、それでどうかしら?」


 一同を見まわし、最後にサージャを見る。


 「ええ。お願い出来るのでしたら、これ以上心強いことはありません。私はジルージャを付けようかと思っておりましたので」

 「ジルージャは、今晩の作業に必要でしょう?確かに彼女が行くならそれが一番でしょうけれど、作業がある以上難しいわよね。私もイージアは出せないし。サージャ様の力は特殊だから、他の精霊の力を借りるのも難しいし・・・やっぱりリンジアが適任よ」

 「助かります」


 サージャはフィージアに頭を下げる。続けてアオとオウカも頭を下げた。


 「前線に出せる騎馬兵は?」

 「十、と考えていただいた方が・・・」

 「少ねえな・・・」

 「そもそも騎馬に出来る馬が居ないわよね・・・」

 「ふむ。この土地では馬の調達は難しい。牛なら沢山居るが、それらを使ってしまうと戦の後の民の生活が不安ですな」


 ホールディの質問に答えるアルヴ。それについて意見を出したのはアイルとイージット。

 ここでまた、フィージアが口を挟む。


 「馬に乗れる兵士の数は?」

 「は。百名は居りますが・・・」

 「なら、風の馬でも良いかしら?」

 「風の馬?」


 フィージアは、自分の精霊達が風で馬を作り出せることを説明する。


 「馬の形をした、風の塊。これが出来るのは前の巫女長に仕えていたアルジアとスージアだけなの。ただ、一人三十騎しか作り出せないから六十しか用意出来ないわ。乗り方は普通の馬と同じよ」

 「そうか。確かに前の巫女長様はそうやって俺らにも馬をしつらえてくれたな」


 風の馬は、大地の地形などものともしない。海の上でも走って行ける。力が続く限り、山も海も関係ない。風だから。

 そんな馬を、代々の巫女は作り出すことが出来た。アルジアとスージア、どちらかが必ず巫女の選定をしていたからだ。海兵を持たない北の神殿が、海から回り込む敵に備えて持っていた力だ。


 「速さはどうですか?」

 「風ですもの。馬より早いわ」

 「・・・事前に練習する事は出来ますか?」

 「ええ。アルジアは麓の街の守護をしているし、スージアは手が空いているから大丈夫よ。伝えておくわ」

 「宜しくお願いします。こちらも乗る人員を選出しなきゃな・・・ギルス」

 「ん?」

 「お前手が空いてたら手伝えよ。俺一人じゃ流石にキツイ」


 アルヴにご指名を受けたギルスはサージャの後ろに立っていた。

 サージャは振り返り、ギルスと目を合わせる。


 「・・・だ、そうですが。サージャ様少し手伝ってきても宜しいですか?」

 「ああ。私は諜報部隊の準備で手一杯だ。遠くに行く予定もないし、ジルージャもアオ達も傍にいるから問題ない」


 サージャもアオ達も頷く。


 「クロードは巫女兵の方があるから貸せないわ。ごめんなさいね」

 「いや、クロード殿も俺も王国軍と合流して策を練らなきゃならん。堀は出来てるが、衝立はまだ建て終わってないしな。こっちも一緒にやろう」


 フィージアの言葉にホールディが重ね、男四人の作戦会議が決定した。


 「では、私達も。まず、戦力外の者達に湯あみの準備と炊き出しの用意をさせましょう。同時に守護結界の構築ですわね」

 「ええ。そちらには私と精霊達も同席させてもらいますわ」


 アイルとフィージアは二人で動き出す。


 「私共は町民の避難ですな」

 「ええ。精霊が使えるものを巫女長に引き渡したら、私もそちらを手伝いましょう」


 ロイドとイージットが頷き合う。


 「・・・残った我々は」

 「兵士の引率係、と地形の把握ですかね」

 「それでしたら、温泉の後で良いので諜報部隊に合流して頂けませんか?」


 ウィンズとイリアに、サージャとアオ達が近づく。


 「というと?」

 「魔法兵器の実物を見て頂こうかと。あと精密な地図を持っておりますので、ご利用いただければと思いまして」

 「それは、是非」

 「では・・・」


 サージャの言葉を引き次いで、アオが宿の場所を説明する。

 魔法兵団は優先的に温泉を使用し、その後ウィンズとイリアは諜報部隊と合流と言う事になった。


 「では、各自宜しくお願い致します」


 フィージアの言葉で締められ、それぞれがそれぞれの役目を果たしに、動き出した。



ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

アルヴとギルスのやり取り、そこにクロードとかを絡めたら・・・絶対楽しんだけど、書いたら和数が膨らみ過ぎるので自重。

いつかやってやる。

そろそろ戦闘開始です。


ブックマーク有難うございます!

評価宜しくお願いします!


ポイント上がると本当にやる気が出るので、作者としては本当に助かるのです。

切実。

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