第6話 異世界の学校は疲れました。
第6話です。
学校初登校後編となります。
僕は四月一日真司。
今日はいきなり学校に通うことになり、この世界の学校に初登校することになった。
糸巻マンティエル…通称マントちゃんや、月村翔琉、グリム・R・ベルクの3人と仲良くなるも、海原小波という不良少女に因縁を付けられてしまった。
……そういえば、王牙はどうしたんだろう?僕の転入の残りの手続きを終わらせるとは言ってたけど………。
「終わっった……!」
短いようで長く感じた1時限目から4時限目までの授業。なんとか乗りきった。その疲れからか、意識しなくとも大きなため息が出てくる。
「お疲れ様です、四月一日くん。」
「お、お疲れ~。グリムは大丈夫?」
「ぼくは、なんて事ありませんよ。これくらいは朝飯前です!」
流石だ。マントちゃんからも頭がいいと言われているだけある。
「やっと昼ごはんだな!あーっ!オレ、腹減ったー!」
「そうデスネ!マントちゃんもお腹ペコペコデスー。」
翔琉とマントの二人の会話であることが頭を過る。
「あれ?そういえば、僕……お昼ごはんどうすれば……。」
「四月一日くん、お弁当無いんですか?だったら、1階に購買部が………。」
「…お金も忘れちゃった。」
「えええ!?」
グリムが目を丸くして驚く。まあ、普通はお弁当なり、購買部で購入等で昼食を済ませる。その両方が不可能なのだから当然だ。
「王牙に聞けば何か分かるかも…!」
そう思い立ち、王牙を探しに行こうとしたとき翔琉に止められる。
「王牙なら「今日は昼から合流する!」って連絡来てたぞ。」
昼から!?僕聞いてない!
「えっと、じゃあ王牙とはどこで合流を………?!」
「ンー。屋上じゃないデスカネ?王牙クンの定位置デスシ。」
屋上?とにかくそこに行けば………というより、3人とも王牙の友達なのかな?僕より詳しいような…。
「じゃ、みんなで屋上に行くか!」
翔琉がそう言って僕らを引っ張っていく。結構力が強く、そのまま引っ張られながら教室を出る。
教室から出て、少し歩いてからだろうか。なにやら外で黄色い声が聞こえた。気になって窓から覗いてみると、
「……………………………。」
輝希が女の子たちに囲まれてキャーキャー言われながらも黙々と食事を続ける姿が見えた。
「輝希くーん!私が作ってきた卵焼き、食べてー!」
「………………。」
「あ、ずるーい!私のもー!」
「…………………………。」
「じゃあ、私はあ~んってしてあげる!」
「……………………………………………………。」
「私も私も!」
………すごい人気だ。輝希は確か2年生のはず……なのに、同級生だけでなく、3年生や1年生と思わしき女子もいる。
確かに輝希はルックスはかなりいい。性格も気は強いけど、はっきり言うし、嘘はつかない。しかも、クールで大人びている。これだけ揃っていれば、あれだけモテるのも必然…?
「にしても、モテすぎじゃあ………。」
あまりの衝撃に思わず言葉が漏れてしまう。
「あー、王牙の弟だろ?いいよな~。あれだけかっこよかったら、そりゃモテるよなー!」
王牙の弟……?まあ、大々的に息子なんて言えないだろうし、弟という事になっているんだろう。
「その上、運動神経抜群で、剣道部のエースで剣道二段。しかも剣道の規定上、位は二段ですが、実力はもっと上だと言われているそうです。」
「更に、ナント!料理も得意らしいデス!憧れマスネ~!」
………まさに、才色兼備というわけ…か。モテて当然のスペックだ。勝てる気がしない。
「でも、本人はあんまり嬉しそうじゃないんだよなー。」
「やっぱり、実は迷惑に思ってたりするんですかね?」
確かに、あそこまで囲まれるとかえって嫌かもしれない。羨ましいとは思うけど、やっぱり大変なのかな?
輝希を眺めるのを止めて、僕たちは屋上へと足を進めた。
そして屋上前にたどり着き、ドアを開けるとそこには、大の字で寝そべっている王牙の姿があった。
「ア、やっぱりいマシタ!王牙クン!」
「んぇ?あれ、みんなどうしたんだ?」
「どうしたじゃありませんよ!昼に合流のはずでしょう?」
「あ、やっべ。色々用事が終わって忘れてた!」
やはり4人は友達だったみたいだ。なんともらしい会話が展開される。
「で、四月一日が王牙に用があるって。なっ?」
翔琉に話を振られ、王牙もこちらに目を向ける。
「えっと、王牙。僕のお昼ごはんって、どうすれば……。」
王牙は暫し停止した後、ハッとした表情で置いていた鞄から2つの弁当箱を取り出した。
「あっはは!わりぃわりぃ!つい渡すの忘れちまってた!はいこれ。」
そう言って左手に持っていた弁当箱を僕に渡してくれた。
「オレが作ったんだぜ?しっかり食べてくれよな!」
そう言い終えると「座ろうぜ!」とみんなを招く王牙。王牙の料理が美味しいのは知っているから安心だ。
そしてみんなで屋上に座り込んで各々、自身のお弁当を手にしている。
弁当を食べ始めるとみんなで会話するのはどこでも同じなんだなと思いつつ、ハンバーグを頬張る。美味しい。
「そうだ。王牙に聞こうと思ったんだけどさ。」
「なんだ?」
「午前中、授業に出なかったって相当だろ?何やってたんだ?」
翔琉がもごもご言いながら王牙に聞いている。良い子は真似しないように。
「ん~…野暮用かな。思ったより時間くっちまったしな。校長に用があったんだよ。言わないけど。」
「気になりますけど、言いたくないなら仕方ありませんね。」
僕の編入の件についてだろう。どんなことをしたか、僕も気になるけど……。
「そういえば、王牙クンと四月一日クンってどういった関係なんデス?」
「四月一日はな、オレの親戚で今家に居候してんだ。なっ?真司。」
「えっ?あ、うん。そうなんだ。だいぶお世話になってて。」
咄嗟に話を振られ、慌てて話を合わせる。
「だから、転校してきたんですね。この学校に。」
「うん。最初はどうなるかと思ったけど、なんとかなりそうって思ってきた。」
「授業はまだまだ付いてこれてないけどな!ははは!」
うぐっ。心配してることを言われた……。でも、嫌な気持ちにはならない。
こんなに楽しく学校に行けるのか…。小学校以来かもしれないな…こんな気持ち。
昼食が終わっても、4人との会話は弾み、飽きることを知らない。楽しいままの気持ちで昼休みは終わったんだ。そのあとの授業も苦戦こそしたけどなんとか切り抜けた。順風満帆な登校初日が幕を閉じた。
「じゃあな、四月一日!気を付けて帰れよ!」
翔琉がこっちに手を振っている。4人は部活で帰るのが遅れるからだ。僕はまだどの部にも入ってないしね。
「悪ぃな。一人で帰らせる事になっちまって。」
3人が部活に向かった後、王牙が申し訳なさそうに言ってくる。
「そんなことないよ。僕なら大丈夫。ところで、王牙はなに部に入ってるの?」
「ああ、オレか?オレは演劇部だよ。だから、演技は結構得意なんだぜ?」
演劇部……そんなものもこの学校にはあるんだ。でも、王牙が演技はちょっと想像出来ないけど……。
「じゃあ、僕はそろそろ行くよ。王牙の邪魔するわけにもいかないしね。」
「おう!ホント、気を付けてな。」
そう言って解散する。僕は家へと歩みを進める。だけどその時、輝希の姿が見えた。
「あれ、輝希?」
「………………。」
相変わらず無視される。けど、なんだろう?この違和感。そう思って輝希をじっと眺めると、なんだか傷のようなものが見えた。気になって聞こうと思ったけど、その時にはもう輝希はいなかった。
「なんか……この感じ…前にも見たことがある気がする…。」
不思議な感覚を覚えながら、僕はまた、家へと続く道を歩き始めた。
明日もまた、学校だ。
閲覧ありがとうございました。
次回7話ですが、一応、暫く学校関連の話はありません。