第4話 胃痛の日曜日でした。
第4話です。
今回から、冒頭で話の主役になるキャラのあらすじ(のようなもの)で始まるようにしました。
僕は四月一日真司。
前回から、終野家に居候することになったんだけど、まだまだ終野家の人たちとの付き合いは浅い。
だから少しずつ、理解しあえるようになっていければ……そう思っている。
「………ん……ふぁぁ…。」
昨日はあの後、みんなで、僕が寝泊まりするために、倉庫と化していた小屋を片付け、そこで最低限の衣住をすることになっている。
「朝……か。」
食に関しては、終野家の本宅のリビングで終野家の人たちと一緒にすることになっている。
「おはようございます……。」
残っている眠気のせいで、情けない声がでた。
「お!真司、おはよう!なんや眠そうやな?」
返事してくれたのは姫華さんだった。
「はい……色々と安心してゆっくり寝すぎたみたいで……。」
「よく寝れてないんやったらもうちょっと寝とく?ちょっと早起き過ぎんで?」
そう言われ、時計を見ると、午前5時に短針があった。
「………あ……ほんとだ…。あれ…?姫華さんはなんで早起き……?」
「そら、早起きは3文の得って言うしな!なんやったら、味噌汁くらいやったら作ったんで?」
「あ…じゃあ……戴きます…。」
言葉に甘えて戴くことにした。味噌汁でも飲めば目も覚めるかもしれないし…。
「はい、どうぞー!熱いから火傷しなやー。」
「……………………戴きます。」
妙に茶色い味噌汁が出てきた。味噌を少し入れすぎたのだろうか?そうだと信じたい。
…………うぐっ。
「な、なんだこれ。苦っ!不味っ!?」
味噌汁の強烈な苦さと不味さに思わず声が出た。
「あれ?なんか失敗したかな?目ぇ覚めるようにコーヒー入れたんやけど。」
な、成る程……。ある意味目が覚めたと言える。
「うちも飲んでみよー。………んぶっ!?苦っ!不味っ!?なんやこれ!?……あ、でもなんか眠気すっきりしたかも!」
はい。確かにすっきりはしました。
「まぁ、良薬口に苦しって言うもんな!よっしゃ!みんなの分も作ったろ♪」
良心で生み出された兵器が投下されてしまう………が、僕には止められない。あの笑顔は…崩せない…!
「あー眠。おはよう……あれ?姫華と真司だけか。」
王牙が降りてきた。犠牲が………。
「おとん!眠いんやったら味噌汁あるで!バッチリ目ぇ覚める奴!」
「お、んじゃ貰おうかな。」
……飲んでしまった。
「……………ん?…お、悪くねぇな。あ、まじで目が覚めてきた!」
なに!?不味くないのか?
「けど、これ普通の人は間違いなく不味いって言う味だな。味覚兵器。」
「けど、良薬口に苦しって言うやん!」
「苦くない薬でも良く効くやつはあるぞ?」
「え?……あ、そっか!わかった!苦味を消すには………蜂蜜やー!」
嬉々としてキッチンに行ってしまった。兵器は日々改良されるんだ……。
「………あ。」
輝希が、起きてきた。
「輝希、おはよう!」
「…………フン。」
やっぱり昨日の件は響いてるらしい。この様子だと口も聞いてくれそうにない。
「あ、そうだ。真司、ちょっとこっちで付き合ってくんねぇか?」
「あ、うん。わかった!」
輝希のことは気掛かりだが今は王牙に付いていくことにした。
「ハァ…!バッカみたい。」
「出来たー!…って輝希しかおらんの?」
「え?……ああ、さっき出ていったよ。」
「なんや、折角味噌汁作ったのに。」
「み……味噌汁…?これが……!?」
「そ!スッゴい目ぇ覚める味噌汁!輝希も飲んでみ!ほらほら!」
「あっ、いや……ボクは………!わ、わかったから無理矢理飲ませるのだけは………!」
僕が王牙に連れられて来たのは、なにやら研究室のような部屋だ。
「ここはな、オレの研究実験室。まぁ……なんか作ったり、作ったもので実験したりとか……まんまだな。」
確かに、完成品か、試作品かもわからない道具がそこらの机の上に置いている。
「ほら、これなんかどうだ?」
そう言って、剣のようなものを投げられる。
「うわっ!……?あれ?軽い……。」
渡された剣は、まるで羽のように軽く、重さを感じさせない。
「だろ?その剣は鞘から抜くまではそれなりの重さなんだが、鞘から抜けば重力制御装置が作動して重さがなくなる。だが、軽い分剣の重さで押しきることが出来ない。剣を使う奴の力と技が直接剣の威力に繋がる…そういったもんだ。」
よくわからなかったが、とにかく、凄い発明であることは事実のようだ。
「因みに、その剣に名前はまだ無い。付けるなら、チャンスだぞ?」
剣の名前……羽のように軽い剣だから……!
「フェザー!」
「あれ!?意外とそのまんま。」
「ダメだったかな?」
「いや……よし。こいつの名前は羽剣フェザーだ!!」
……あれ?何か多いような…。
「うっし、フェザーの名前も決まったことだし、オレの最高傑作を見せてやる。」
最高傑作。さっきの剣も十分に凄いと思ったが、最高傑作の太鼓判を押された発明があるのか。少し楽しみになってきた。
「ほら、これさ。」
そう言って王牙が握った物は、また剣のようだった。フェザーとは違いまるで機械丸出しの剣が。
「こいつには名前がある。〔千の技を生み出し、万の敵を斬る〕その名も、プロトソードだ。」
最高傑作が、プロト……?プロトタイプのプロトかな?
「無限の可能性の願いを込めて、原型の意味のプロトタイプからプロトソードってつけたんだ。」
なにやら深そうな理由で着いていた名前だったのか……。
「こいつは使い手の本質に感応して能力を発揮する。例えば、オレの場合は……!」
王牙が力を込めると、なんと!剣の刀身が伸び、刃が鋭くなっていた。
「ま、こんなもんよ。真司もやってみ。」
また、ポイッと剣を投げられる。中に浮いている内に剣は元に戻ってしまった。
そして僕が持つと……。
「……………わあっ!?」
なんと、剣の刀身が白く発光しだした。
「こ、これはどういう影響なの……!?」
「増強………ようするに破壊力の向上だ。」
使い手の本質に感応する……ならこれが僕の?
「………まさか、ここまで旧人類と同じなのか………。」
また何か言われた気がした。
「どうかした?」
「いや、プロトソードには連携できる物があってさ………。」
そう言って腕輪のような物を取り出した。
「ほら、腕輪にホルダーがついてんだろ?そこに……この、カセットを装填すると……人の本質を上書きできる!ようするに、ソードで発揮できる力を変えられる!!どう!?スゲーだろ?」
やはりよく分からないが、凄いことはわかる。
「でも、こんなものを作ってるけど、王牙は…研究者なの?」
「んー……元、研究者。で、今は趣味……って感じかな?」
趣味で研究………凄まじいな。
「元研究者……そういえば、昔は王牙って何してる人だったんだ?」
ふと思ったことを訪ねてみた。
「昔のオレね………世のためになるような仕事してたかなー。」
「じゃあ、幼く見えるのは?」
「それは……呪いってやつ?子供になる呪い。昔はダンディなハンサムだったんだけどなー!」
本当なんだろうか?王牙が……ダンディなハンサム……?想像できない。それに、なんだかこれ以上は聞いてはいけない気がする。
「………なんだ?これ以上、聞きたいことは無いのか?」
「今は………とくに。」
「………正直助かる。あんま昔のこと話したく無いんだよねー!!あんましいい思いで無いからさ。あ、結婚してからの思いでならいくらでも!」
本人も、あまり話したくないようだし、そうだな、次からはあの4人のことでも聞いてみよう。
「んじゃ、そろそろ戻るか?そろそろ昼飯でも作ってるかも。」
「そうですね。姫華さんの味噌汁も心配だし。」
「研究室があることだし、なんか作って欲しいものがあったら言ってくれ!期待に120%で答えるぜ!!」
「うん!何かあったら、よろしくね!」
そして僕たちはリビングに戻ってきた………が。
「あ…………あぁ………?」
「これは………………。」
「あ、おとん!真司!聞いてーやぁ!みんな味噌汁飲んで倒れてもぅてん!なんかマズイもんでも入れてもぉたんかなー?」
死屍累々のリビングで僕たちを待っていたのは、今朝苦しめられた物以上の………
〔味覚兵器〕だった。
閲覧ありがとうございました。
胃痛には気を付けてください。