第2話 紅い髪の子に世話になりました
第2話です。
紅い髪の少年の人格が明らかになります。
やってしまった。そう思う他にない。
些細な失敗で、取り返しのつかない結果に繋がることもあると父さんも言っていたが、まさかこんなにも早く僕が体験することになるだなんて。
僕の最期に覚悟を決めて目を閉じる。
「おーい。お前、何やってんだー?目ぇ閉じたってなんにも無いぞー?」
「……………え?」
恐る恐る目を開けてみると、先程の少年が此方の顔を覗き込んでいる。
「お、大丈夫そうだな。」
「ぼ、僕を……襲わないのか……?」
と、正直な疑問をぶつけてみると、
「え?……んーとな、オレは竜だからって人は食わねぇぞ?」
…また新しい疑問が増えた。
「りゅ、竜?」
「そう、竜!……というより竜人かな。まぁ、竜には変わりないけど。がおー。」
少年の軽い返答になんだか気が抜ける。なんだか緊張していたのが馬鹿らしく思えてきた。
「で、単刀直入に聞くが……なんでお前、倉庫でこそこそしてたんだ?」
最もな疑問だ。僕だって僕自身に聞きたい。だが、正直に言ったところで信じて貰えるのだろうか?「異世界に来てしまったかもしれない」なんて。
「……………………。」
少年は真っ直ぐ此方の目を見ている。
どうせ嘘をついてもどうにもならない。だったら正直に言ってみるのもありかもしれない。
「ぼ、僕は………別の世界から来た!それで………この世界に迷い込んでしまったかもしれないんだ!」
「…………へ?」
少年は目を丸くして驚いている。当然のことだろう。僕だって信じたくない。だが、彼の答えは僕の方こそ驚かされる答えだった。
「そっか、別の世界から来たなんて大変だったな!さぞ、吃驚したろ?」
なんと、あっさりと信じてくれたんだ。
「し、信じてくれるのか!?」
「嘘ついてるようにも見えねぇもん。それに、嘘をつくならもっと普通の嘘をつくだろ?だから信じられると思った!」
「ニヒッ」と無邪気に笑って見せる少年。
「でも、別の世界から来たんなら、寝床はあるのか?」
そういえば、色々と重なりすぎてそんなことすっかり忘れていた。
「無いんなら、暫くはこの倉庫で寝泊まりするといいよ!一応、元は人が住むために作った家なんだ。…結局、全然家として使ってなかったけどさ。」
「え…良いのかい?」
「ああ!一応、毎日掃除はしてるから大丈夫大丈夫!布団くらいは持ってきてやるし!」
そんなことまでしてもらって良いのかとも思うが、外に出ても生きられないのは火を見るより明らかだ。ここは言葉に甘えることにしよう。
「ところでアンタ名前は?」
そういえば、名乗るのを忘れていた。
「僕の名前は四月一日真司だ。」
「そうか、オレは終野王牙!さっきも言ったけど人種は竜人。………そっか、別の世界から来たから真司の人種は………!?」
王牙と名乗った彼の口が止まった。
「……………まさか、旧人類……?」
〔旧人類〕?そう聞こえたけど、僕のことなのか?
「どうかした?」
僕が尋ねると、
「いや、今日の晩飯、なんだったかなと思ってさ。いやー、歳を取ると物忘れってするんだな!」
と、誤魔化し気味に此方に笑い掛ける。
「それじゃあ、布団、取ってくるわ!ここで寝るのは寒いだろうしな、少し待っててくれ。」
そう言って王牙は小屋を後にして行った。
今日の数時間で僕の身に色々な事が起こった気がする。その最終形が異世界への転移……か。
これから先、僕はどうなってしまうのだろうか。それを考えただけで凄まじい疲れが僕を襲う。王牙が布団を持ってきてくれるより先に僕の眠気が来そうだ。
そういえば…………王牙は…何歳…なのだろう?
ご覧くださり、ありがとうございました。
次回3話は王牙の家族が出てくる感じになると思います。