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しらゆりのゆびわ  作者: 優月黒乃
6/7

【chaoter1-5】

相変わらず悪趣味だ、なぜ壁に馬の首などを飾る。

「国王様、ルラ様をお連れしました。」

「ごくろうダヨ、下がっていいダヨ。」

私をエスコートしてくれた比較的やせ形の男がロボットの様に言葉を並べる。

それとは逆に肥満体系の大男が特徴のある口癖をつけながら返した。

「国王、私はある少年に助けられました。」

いきなりすぎるかと思ったが関係ない。「ほう」と合いの手を打ってきたがすぐに話を続けた。

「ある路地で味方と情報を交換しているときです。人の気配がありました。すぐに巡回のスラム人だと悟り、なにか情報を知っている可能性があったので、吐かせようと作戦を立てました。私が囮になりわざと目に付くよう髪をおろし立っていたところ。案の定、男は釣れました。気を引かせ後ろから拘束するという簡単なものでしたが、あと数秒でという時に一人の少年が現れたんです。名をアスベルク=ネルといいます。―――」

私はありのままを話した。 

呼吸が困難な状態での切り返しの速さ。そして、躊躇うことのない攻撃。

「なるほどダヨ。んでどうしたいダヨ?軍への勧誘か?」

一通り聴き終わった国王は退屈そうに首の骨をならし、手元の紅茶を啜った。

「はい。クーデターが予測される中、次期王女だけは革命に巻き込んではいけません」

「もちろんダヨ。」

「ならば敢えてスラムに隠してはどうでしょう?」

国王の表情が変わった。

退屈そうにしていた姿から一転し猫目をさらに鋭くしたような眼を刺してきた。

「お前今なんつった?」

特徴のある語尾が無くなった。

「覚悟の上です。」

「却下。」

ここまでは予測道理だ。モラルがある人間、いや一人の父親の心境として、あの不衛生で腐った無法地帯に愛娘を送り込むなど言語道断。それならば自分が死んだ方がまだましだろう。

それでも私には大きな確信と自信があった。


スラムはレオナルドでありながらもレオナルドではない。他の国からの卑見を気にし、数年前スラムを表向き上で勝手に独立させた。

腐っても国は国なので、スラムと呼ばれる下層は正式に、

【旧レオナルド国下層地域/現フェニックス小国】とあるが、たいそうな名前だけというとても皮肉な現状だ。それでも縛られぬ独立で皆が浮足立っていた。

しかし、数か月たっても期待は空しく表向き上国同士に別れた今でもまだフェニックス小国はレオナルドに従わなければならなかった。理由もわからず疑問を抱き始めたそんな時。フェニックスに大量の新聞がばら撒かれた。また国名が変わったのだ。瞬間、王政から抜け出せて尚且つスラムの景気が回復すると活気づいているフェニックスの皆が察した。

それは―――

【旧レオナルド国下層地域又旧フェニックス小国/現レオナルド植民地】

一度要らぬと離したものを同国ではなく支配下に置いたのだ。

またもや表面上は安全を保障すると発表しているが。


野太く低い聴いたことのない獣のような声が鼓膜を揺らす。

「リスクが大きすぎる。」

「ならば、許可してくださるまで粘ります。」

私はアスベルクに畏れを抱いた、普通に生きてきた人間があんな黒い目を人間に向けることはできない。無力を感じた。あんな風に人を斬る人間は初めてだ。

すると国王は立ち上がり、ガラス窓に寄り、滴り始めた雨を眺めた。しばらくの空白が続き、

「はぁ...お前は我が国に必要不可欠な大戦力だ。私もあまり信頼関係を崩したくはない。そこでだ、問おう。娘をスラムに、敵陣に送って勝算は幾つだ?」

沈黙を破ったのは国王だ。

「勝算ですか? わたしに勝算を問うのですか?」

この男はつくづく嫌になる。

「申せ」

「愚問ですね、国王。100です。」

驚くこともせず、国王はただただ雨を見ていた。

「嘘ならば剣を持つ腕を断て。」

こちらを振り返る、するとその顔は私の知らない表情だった。とても言葉では表せないが酷い顔だった。よほど選択に苦しみ、強く噛んだためか、黒く簾た下唇から血がぽつん、ぽつん、と落ちていた。

「そうですね...剣を持てない人生ならば」

窓に大粒の雨が、


「首がいいですわ。」


ばしゃり

ばしゃり

ばしゃり


―――この時、長い長い戦争が幕を開けた。



第一章完結です!

次からchapter2へ移ります!

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