5/7
【chapter1-4】
アスベルクからはまだ血の香りがする。
僕は「王族がいた」という彼の言葉をどうにかして飲み込んだ。
「ポークさんは貴族にも情報を流したらしい。あの人もクーデター反対組だからね。」
アスベルク曰く、今日出会った上級層の女はクーデターについての偵察であろうということであった。
「アスベルク、また変わったことがあったらすぐに知らせてくれるかい?」
絶対に二人を革命に巻き込むわけにはいかなかった。正直死ぬまである。死にたくはない。
それには情報をいち早くキャッチする必要があり、すなわち情報収集が肝心になってくる。これが今できる精一杯の『対策』だった。
「もちろん」
弟はそう言って無邪気に微笑んだ。
しかしその時だった。事件は起きた。
「二人とも。なにこそこそしてるの!」
トルマが布団をはいでがばっと起き上がる。
宙を舞った埃まみれの布はトルマの足に絡まって、半分だけ地面についていた。
「うわぁああっ!」
「はー...ばれたか...」
トルマの眼力に二人とも震え上がる。
「とるまぁ」
情けない声を出したのは気の弱い長男だった。