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人生くじ  作者: 夢の芽
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目覚め

目がさめる。

いつもの自分の部屋で自分の身体だ。

自分の身体を少し懐かしいと感じた。そして心底安堵した。これからずっと菊池の背後霊みたいな存在として生きていくという不安があったからだ。


日付はちゃんと翌日になっている。

今日は大学の講義は3限だけの日だ。

こう1コマだけ入れられると、丸一日休むことができないのではっきり言って迷惑だ。

しかし、必修科目であるため行かないわけにはいかない。



普段は昼まで家で漫画やアニメを見て過ごすが、今日ばかりは、例の宝くじの店が気になって仕方がない。


風呂に入り、体をさっぱりとさせて家を出る。


例のお店は普通の宝くじ売り場に戻っていた。


私は、何か触れてはいけないものに触れてしまった気がした。

ごくりと唾を飲む。

意を決して、宝くじ売り場のおばちゃんに声をかけた。


「あの、ここって夕方あたりに別のお店になったりしますか?」


怪訝そうな顔でこちらを見てくる。

それは、そうだ。

逆の立場だったら私も同じ対応をしただろう。


「いいえ、そんなことはありませんよ?」


じゃああれは一体なんだったのだろうか。

少しの間を嫌うようにおばちゃんは話し続けた。


「宝くじを買いに来るお客さん最近へっちゃってねえ。でも、時々300円当たったってニコニコしながら小学生くらいの子がそれを渡してくれるの。それが嬉しくて、この場は誰にも譲りたくないわねえ。」


私は、こうはなれないな。と思っていた矢先・・


「昨日も6時くらいにお客さんが来てーー


背筋がぞくぞくと震えた。

その時間は私もちょうどきたが私はこの人には会っていない。


「昨日、私もここに来てたんですけど」

と、震えた唇必死でこらえながら声に出した。


「ごめんなさいねえ。あなたの事は覚えてないわ。」

私は、そうですかとしか言えなかった。


これ以上触れてはいけない。

考えるより先に身体が拒否している。


その場を後にして、大学へと向かった。

途中菊池とすれ違うがお互い声をかけることはなかった。


今日もまた1日が終わっていく。

あの場所を避けて帰ろうと電車を降りた後は、別の道を選択した。

はずなのに・・・



見覚えのあるあの店がまたある。

人生くじ

とどす黒く構えた看板に身が竦んだ。


まだ、30mの距離はありそうなのに

今日も買って行って下さい。


そうはっきりと聞こえた。


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