20-A -舞い散る桜の花びら-
ノスタルジアへ侵略してきたイーバ。刺客はギルドで雇われた刃塚 氷牙と子分のシアン。連れてきたE兵器であるレッド・ワームと腐食人造。
そしてイーバ幹部のマッドと戦う勾玉だったが、マッドの剣技に破れる。その危機に駆けつけたのは聖クレア教会の聖女、マリアリアドネレイドリス・ヒエロスだった…。
勾玉の危機を救ったマリア。到着してバリアで守ることはできたが、その身体は万全ではなかった。
マリア「ハァ…ハァ…」
…―――――
数分前…花の屋敷。
マリアはフラフラとロッドを杖のように歩きしながら、門へと向かう。
マテリア「危険です…! そんな状態で…」
マテリアは身体の状態を心配して、止めに入っていた。
芙蓉「確かに今、島に危険が訪れている。けど、今のアンタが行ったところで…」
マリア「大丈夫です…。今は…この邪悪な気配を…放っておくわけにはいきません…」
マリアは制止を振り切り、使命感を原動力に足元をおぼつかせながらも走り出し、門の結界から抜けて行った。
颯紗「どうして…どうして争うの…。 苦しいことって、皆知っているはずなのに…どうして…」
桔梗「そ…そりゃイーバが悪いってことで…」
マテリア「……」
桜羅「ボ…ボク達どうすれば…」
芙蓉「行ってしまったものは仕方ないわ。あの聖女は皆に任せて、私達は家の中へ戻りましょう…。いつでも帰りを迎えられるようにね」
マリアは走った。今にも転倒しそうだったが走った。自分には、もう失うモノは無い。だから…無心で前を向いて走った。全てを失っても構わなかった。自身の、命さえも…。
――――…
蒼輝と奈樹は腐食人造の群れをなぎ倒していた。
しかし、いくら攻撃しても立ち上がってくる。奈樹は足を掴まれ、地に倒された。
奈樹「きゃあ! 蒼輝…!」
蒼輝は陰剣ブレイド・シャドウで、奈樹の足を掴む腐食人造の腕を切ろうと走ろうとしたが…!
蒼輝「クソッ! 放せ!」
奈樹と同じように足を掴まれた。その絡む腕を切り捨てるが、次々に襲いかかってくる! 奈樹は全身が腐食人造の手に撫で回されるように絡まってゆく。咎力を使おうにも、身体にまとわりつく手の感覚で、咎力を集中できずにいた。
奈樹「蒼輝…!」
蒼輝は全力で暴れるが、それでも振り払うことはできなかった。
蒼輝「奈樹ーーー!」
一方その頃…
レイ「イーバのE兵器…どれほどの力か見せてもらおうかな」
レイが対峙しているのはレッド・ワーム。巨体をうねらせてレイに突進を仕掛けてきた! レイは右手を迫り来るその牙へ向けた。
ズザザザザザザザザ! と、音を鳴らしながら凄まじい勢いのレッド・ワームの突進を、牙を持って左手で受け止め続ける! 15メートルほど押され後退して、止まる。牙と口内がおぞましく蠢いている。
レイ「……」
レイは右手を天に翳した。
レイ「天空で鎮座せし日輪よ。今こそ全てを照らし、その光で世界を赤く染めるといい」
多大なる力を生み出す詠唱という行為。咎力で作られた赤く輝く槍。それを手に取る状態となった。
レイ「赫灼槍 パニッシュ・スピア」
槍をクルクルと回転させた後、脇へと槍を引く。そして受け止めているレッド・ワームの口の中に向かって槍を突き出した! 爆音と輝かしい光と共にレッド・ワームの巨体は縦に半分に割れ、その巨体が二分割になって倒れた。ビクンビクンと動いた後、生命活動を停止した。
レイ「……」
レイはレッド・ワームを見たまま、後ろへ下がる。その二分割した怪物に警戒したままだった。
すると突然二つの巨体はジタバタするように暴れ、生き返って動き出した! 切り裂かれた赤く断裂した血管が伸び、再び体を結合してゆく。そしてレッド・ワームは瞬く間に姿を戻し、二分割されていた怪物が半分の大きさの二体に増えた。
レイ「二体を半分にしたら四体になるつもりかな? 簡単には倒れないみたいだね…」
氷牙「行くぜ、シアン!」
シアン「おうともよ! 親分」
刹那を背にした月花は、何が来てもいいように身構える。
氷牙は、シアンの前に四本の氷柱を生み出した。シアンをそれを掴むと、刹那には及ばないものの素早い速度で、20メートルほどの一定間隔で土に埋めてゆく。それは刹那と月花、氷牙を囲う形で埋め込まれた。
氷牙「イッツ・ショータイム!」
月花「刹那ちゃん! 外に出るんだ!」
氷牙が手を上げると、土に埋め込まれた氷柱が伸びて高い氷の柱となってそびえ立つ。その上に分厚い氷板、周りに薄いガラスのような氷板が発生した。そして…手には氷で作られた長い爪の武器。
氷牙「響氷空間 そして…音響爪ハウリング」
月花と氷牙の二人が響氷空間に、刹那とシアンが外にいる状態になった。
月花「なんとか刹那ちゃんは巻き込めずに済みそうだな…」
氷牙「なーに言ってんだ? 俺のターゲットは最初からテメェなんだよ」
月花「…それはどういう…」
氷牙が爪をキィンキィンと鳴らしながらニヤリと笑った。
氷牙「イーバからの依頼だ。指定されたカプセルを遣ってE兵器をこの島に撒き、そしてこの赤い霧を発生させる。後は壁で遮断して邪魔されないようにする。全て計画通りだ」
月花「俺を狙っている理由はなんだ?」
氷牙「抹殺対象を倒せず、撤退している場合は無視するつもりだったそうだ。けどお前はタブーを犯した。それは反逆…ここの奴らに手を貸してるようなら殺せってな」
氷牙は音響爪ハウリングを装着したまま、月花を指差した。
マリア「セイント・バリアー!」
マリアは聖なるバリアでマッドの剣撃を凌ぐ! しかしマッドは二撃、三撃ほどで破壊する。下がりながら次々とバリアを張っていく。
マッド「逃げるだけなら何故ここへやってきた。聖女よ」
マリア「私は…私にはもう何もない…! だったら誰かのために散る…!」
焦燥感を漂わせる表情で、マッドの攻撃を防ぐ。しかし連続で出すバリアのペースが徐々に遅くなっていく。
マッド「死の舞踏…地獄連斬!」
マッドが素早い連撃でバリアを瞬時に破壊する! マリアは萎縮してしまい、尻餅を着いて座り込む。
マリア「せ……。せ…セイント…」
震えながらロッドを持った手を前に出したところで、マッドに手首を掴まれた。マリアの細腕が折れそうなほど強く握られる。ロッドがカランと地面に落ちる。
マリア「い…痛い…!」
勾玉「くっ…」
勾玉は立ち上がろうとするが、マッドに斬られた傷の痛みで身体が動かない。
マッド「…剣士の道を邪魔する者に用はない…。貴様は害悪な存在だ…。その純白を紅く染め、地獄へ逝け」
マッドは紅の刃を振り翳した。恐怖と自身に迫る死を眼前にして、マリアの視界がジワリと涙で滲む。自身の終わりを覚悟し、目を強く閉じた。
マッド「!」
マッドがマリアの手首を放し、一足飛びで大きく後退する。ガタガタと震えるマリア。何が起きたかわからなかった。徐々に目を開くと、前に影が見えた。
『泣き虫なんだから…無茶するなよ。マリア』
その声を聞いたマリアの瞳に光の炎が灯った。
マッド「貴様は…」
マリア「あ…ぁ…、…あぁ…!」
言葉にならない声。その理由は、喜びだった。
バサラ「…剣士がお望みなら俺が相手になるぜ」
マッド「待っていたぞ…。貴様のような男をな…」
桜の柄をした剣を持ったバサラが、マリアを守るように堂々と立っていた。ようやくマリアは求め続けた人を見つけた。だが、求め続けた者を見つけたのはマッドも同じだった…。




