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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第二章 剣と聖
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20-A -舞い散る桜の花びら-

ノスタルジアへ侵略してきたイーバ。刺客はギルドで雇(やと)われた刃塚(やつか) 氷牙(ひょうが)と子分のシアン。連れてきたE兵器(クリミナル)であるレッド・ワームと腐食人造(フルイド・ゾンビ)。

 そしてイーバ幹部のマッドと戦う勾玉だったが、マッドの剣技(けんぎ)に破れる。その危機に駆けつけたのは聖クレア教会の聖女、マリアリアドネレイドリス・ヒエロスだった…。



勾玉(まがたま)の危機(きき)を救ったマリア。到着してバリアで守ることはできたが、その身体(からだ)は万全(ばんぜん)ではなかった。


マリア「ハァ…ハァ…」



…―――――


 数分前…花の屋敷(やしき)。


 マリアはフラフラとロッドを杖(つえ)のように歩きしながら、門へと向かう。


マテリア「危険です…! そんな状態で…」


 マテリアは身体の状態を心配して、止(と)めに入っていた。


芙蓉「確かに今、島に危険が訪(おとず)れている。けど、今のアンタが行ったところで…」


マリア「大丈夫です…。今は…この邪悪(じゃあく)な気配を…放(ほう)っておくわけにはいきません…」


 マリアは制止(せいし)を振り切り、使命感(しめいかん)を原動力に足元をおぼつかせながらも走り出し、門の結界(けっかい)から抜けて行った。


颯紗(さらさ)「どうして…どうして争(あらそ)うの…。 苦しいことって、皆知っているはずなのに…どうして…」


桔梗(ききょう)「そ…そりゃイーバが悪いってことで…」


マテリア「……」


桜羅「ボ…ボク達どうすれば…」


芙蓉「行ってしまったものは仕方ないわ。あの聖女(こ)は皆に任せて、私達は家の中へ戻りましょう…。いつでも帰りを迎えられるようにね」



 マリアは走った。今にも転倒(てんとう)しそうだったが走った。自分には、もう失(うしな)うモノは無い。だから…無心(むしん)で前を向いて走った。全てを失っても構わなかった。自身の、命さえも…。



――――…


 蒼輝(そうき)と奈樹(なじゅ)は腐食人造(フルイド・ゾンビ)の群(む)れをなぎ倒していた。

しかし、いくら攻撃しても立ち上がってくる。奈樹は足を掴(つか)まれ、地に倒された。


奈樹「きゃあ! 蒼輝…!」


 蒼輝は陰剣(おんけん)ブレイド・シャドウで、奈樹の足を掴む腐食人造(フルイド・ゾンビ)の腕を切ろうと走ろうとしたが…!


 蒼輝「クソッ! 放せ!」


 奈樹と同じように足を掴まれた。その絡(から)む腕を切り捨てるが、次々に襲(おそ)いかかってくる! 奈樹は全身が腐食人造(フルイド・ゾンビ)の手に撫(な)で回されるように絡まってゆく。咎力(きゅうりょく)を使おうにも、身体にまとわりつく手の感覚で、咎力を集中できずにいた。


挿絵(By みてみん)

奈樹「蒼輝…!」


 蒼輝は全力で暴(あば)れるが、それでも振り払うことはできなかった。


蒼輝「奈樹ーーー!」




 一方その頃…


レイ「イーバのE兵器(クリミナル)…どれほどの力か見せてもらおうかな」


 レイが対峙しているのはレッド・ワーム。巨体をうねらせてレイに突進を仕掛(しか)けてきた! レイは右手を迫り来るその牙へ向けた。


 ズザザザザザザザザ! と、音を鳴らしながら凄(すさ)まじい勢(いきお)いのレッド・ワームの突進を、牙を持って左手で受け止め続ける! 15メートルほど押され後退して、止まる。牙と口内がおぞましく蠢(うごめ)いている。


レイ「……」


 レイは右手を天に翳(かざ)した。


レイ「天空で鎮座(ちんざ)せし日輪(にちりん)よ。今こそ全てを照らし、その光で世界を赤く染めるといい」


 多大なる力を生み出す詠唱(えいしょう)という行為。咎力で作られた赤く輝く槍。それを手に取る状態となった。


レイ「赫灼(かくしゃく)槍(そう) パニッシュ・スピア」


 槍をクルクルと回転させた後、脇へと槍を引く。そして受け止めているレッド・ワームの口の中に向かって槍を突き出した! 爆音と輝かしい光と共にレッド・ワームの巨体は縦に半分に割れ、その巨体が二分割(にぶんかつ)になって倒れた。ビクンビクンと動いた後、生命活動を停止した。


レイ「……」


 レイはレッド・ワームを見たまま、後ろへ下がる。その二分割した怪物に警戒(けいかい)したままだった。

 すると突然二つの巨体はジタバタするように暴れ、生き返って動き出した! 切り裂かれた赤く断裂(だんれつ)した血管(けっかん)が伸び、再(ふたた)び体を結合(けつごう)してゆく。そしてレッド・ワームは瞬(またた)く間に姿を戻し、二分割されていた怪物が半分の大きさの二体に増えた。


レイ「二体を半分にしたら四体になるつもりかな? 簡単には倒れないみたいだね…」




氷牙「行くぜ、シアン!」


シアン「おうともよ! 親分(おやびん)」


 刹那を背にした月花は、何が来てもいいように身構える。

 氷牙は、シアンの前に四本の氷柱(つらら)を生み出した。シアンをそれを掴むと、刹那には及(およ)ばないものの素早い速度で、20メートルほどの一定間隔(いっていかんかく)で土に埋(う)めてゆく。それは刹那と月花、氷牙を囲(かこ)う形で埋め込まれた。


氷牙「イッツ・ショータイム!」


月花「刹那ちゃん! 外に出るんだ!」


 氷牙が手を上げると、土に埋め込まれた氷柱が伸びて高い氷の柱となってそびえ立つ。その上に分厚(ぶあつ)い氷板(ひょうばん)、周りに薄(うす)いガラスのような氷板が発生した。そして…手には氷で作られた長い爪の武器。


氷牙「響氷空間(きょうひょうくうかん) そして…音響爪(おんきょうそう)ハウリング」


 月花と氷牙の二人が響氷空間(きょうひょうくうかん)に、刹那とシアンが外にいる状態になった。



月花「なんとか刹那ちゃんは巻き込めずに済みそうだな…」


氷牙「なーに言ってんだ? 俺のターゲットは最初からテメェなんだよ」


月花「…それはどういう…」


 氷牙が爪をキィンキィンと鳴らしながらニヤリと笑った。


氷牙「イーバからの依頼(いらい)だ。指定されたカプセルを遣ってE兵器(クリミナル)をこの島に撒(ま)き、そしてこの赤い霧(きり)を発生させる。後は壁で遮断(しゃだん)して邪魔(じゃま)されないようにする。全て計画通りだ」


月花「俺を狙っている理由はなんだ?」


氷牙「抹殺対象(まっさつたいしょう)を倒せず、撤退(てったい)している場合は無視するつもりだったそうだ。けどお前はタブーを犯(おか)した。それは反逆(はんぎゃく)…ここの奴らに手を貸してるようなら殺せってな」


 氷牙は音響爪(おんきょうそう)ハウリングを装着したまま、月花を指差した。




マリア「セイント・バリアー!」


 マリアは聖なるバリアでマッドの剣撃を凌(しの)ぐ! しかしマッドは二撃、三撃ほどで破壊する。下がりながら次々とバリアを張っていく。


マッド「逃げるだけなら何故ここへやってきた。聖女よ」


マリア「私は…私にはもう何もない…! だったら誰かのために散る…!」


 焦燥感(しょうそうかん)を漂(ただよ)わせる表情で、マッドの攻撃を防(ふせ)ぐ。しかし連続で出すバリアのペースが徐々に遅くなっていく。


マッド「死(し)の舞踏(ぶとう)…地獄連斬(じごくれんざん)!」


 マッドが素早い連撃でバリアを瞬時に破壊する! マリアは萎縮(いしゅく)してしまい、尻餅(しりもち)を着いて座り込む。


マリア「せ……。せ…セイント…」


 震(ふる)えながらロッドを持った手を前に出したところで、マッドに手首を掴まれた。マリアの細腕(ほそうで)が折れそうなほど強く握(にぎ)られる。ロッドがカランと地面に落ちる。


マリア「い…痛い…!」


勾玉「くっ…」


 勾玉は立ち上がろうとするが、マッドに斬られた傷の痛みで身体が動かない。


マッド「…剣士の道を邪魔する者に用はない…。貴様は害悪(がいあく)な存在だ…。その純白(じゅんぱく)を紅く染(そ)め、地獄へ逝(い)け」


 マッドは紅の刃を振り翳(かざ)した。恐怖と自身に迫る死を眼前(がんぜん)にして、マリアの視界がジワリと涙で滲(にじ)む。自身の終わりを覚悟し、目を強く閉じた。


マッド「!」


 マッドがマリアの手首を放し、一足飛びで大きく後退する。ガタガタと震えるマリア。何が起きたかわからなかった。徐々に目を開くと、前に影が見えた。


『泣き虫なんだから…無茶するなよ。マリア』


 その声を聞いたマリアの瞳に光の炎が灯った。


マッド「貴様は…」


マリア「あ…ぁ…、…あぁ…!」


 言葉にならない声。その理由は、喜びだった。


バサラ「…剣士がお望みなら俺が相手になるぜ」


マッド「待っていたぞ…。貴様のような男をな…」


 桜の柄(つか)をした剣を持ったバサラが、マリアを守るように堂々と立っていた。ようやくマリアは求め続けた人を見つけた。だが、求め続けた者を見つけたのはマッドも同じだった…。

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