2-A -炎の一族-
前回のあらすじ
浮遊要塞研究所イーバから、脱出用ポッドで孤島ノスタルジアへ降り立った少女、金雀児 奈樹。
島民である影葉 蒼輝、飛竜勾玉、風魔の三人は、金雀児 奈樹がイーバの戦闘用兵器であるE兵器と知りながらも匿うことにした。
脱走した奈樹を抹殺するために三体のイーバ装甲兵なる追っ手が現れたが、三人は難なく倒すことに成功した。
「ん…」
ベッドで目を覚ました少女。
金雀児 奈樹
平和な島ノスタルジアの森の中にホームと呼ばれた小屋の中。ベッドから体を起こし、周りを見渡す。ベッドは一つだからかソファーで横になり寝ている蒼輝がいた。
奈樹はシーツを蒼輝に掛け、洗面所で蛇口を捻り水を出し顔を洗う。水の冷たさで意識がハッキリしてくる。事前に用意されていたタオルで顔を拭く。寝癖がないかチェックし、蒼輝を起こさないようにそっと扉を開け外へ出た。
自然が溢れる森。澄んだ空気。小鳥のさえずり。その空間に身を委ねているだけで心が落ち着く。
「起きたか。早いな」
聞いたことのある声。奈樹は声のする方を見た。
奈樹「おはようございます…勾玉さん」
勾玉「おはよう。蒼輝は居るか?」
奈樹「まだ寝てます。ごめんなさい…。私のせいで見張りなんて…」
昨夜、奈樹の歓迎パーティと言い、蒼輝は勾玉と風魔をホームへ招集した。飲み食いをしながら多少話をすることで奈樹は少し打ち解けることができた。
その後、更なる追っ手が来ないか念のために三人交代で見張りをしていた。
勾玉「気にするな。奈樹はこの島の住民だ。手助けするのは当然のことだ」
奈樹「ありがとうございます…」
軽くお辞儀をする。
「うわぁああああああ!」
小屋が騒がしくなり、扉が勢いよく開く。蒼輝が焦った表情で出てきたが、奈樹を見てホッとする。
蒼輝「あー、ビックリした。奈樹がいなくなってて焦ったぜ…」
奈樹「ご…ごめんなさい…。勝手に出てきてしまって…」
蒼輝は小屋の中。外では深夜は風魔が、朝は勾玉が見張っていた。
蒼輝「まぁ、無事で何よりだぜ…。そうだ、腹減っただろ? 朝飯買ってくる! 勾玉、奈樹を頼むぜ」
勾玉「任せておけ」
蒼輝は奈樹を見て軽く手を上げてから、走っていった。
奈樹「ここって島なんですよね? 食料とか生活品の配給はどうなってるんですか?」
奈樹は前日聞けなかったことで疑問に思ったことを聞いてみる。
勾玉「この島の商店街でE生物達が店を経営している。船が他の島と行き来して貿易により、食料や生活品が配給されている。月一で島民には専用通貨が渡され、それをやりくりして生活している」
奈樹「なるほど…。貿易って…何か特産物があるってことですか?」
勾玉「島の周りに小さな孤島が幾つかあってな。そこで他の大陸では珍しい鉱石や植物が取れるそうだ。俺達も釣りや島全体の掃除くらいはして、島の協力をしている」
奈樹「そうでしたか…自然に囲まれているのに、随分と便利そうな物が色々あると思って気になっていたんです」
勾玉「他の大陸にはこの島では考えられないほど発達した文明を持つ都市や街もある。そういった物は殆どが輸入されてきたものだ」
奈樹はふむふむと勾玉の話を聞いていた。
奈樹「あっ、そういえば昨日はここの近くの泉の所へ行きました。水も綺麗で…とっても素敵な場所でした」
勾玉「…そうか。この島には森だけではなく、浜辺も丘もある。自然が好きなら、いずれ行ってみるといい」
奈樹「すごいですね…本当に自然がいっぱい…。私…もっと早くこの島に居たかったです…」
話をしていくことで少しずつ勾玉への信頼感も増していった。だが、勾玉は違った。奈樹を一目見た時から感じていた引っかかり。違和感。
奈樹とは関係の無いこと。
それを確認するために、今後気に病む必要性を無くすために…自分の思っていたことを奈樹に問いただすすることにした。
勾玉「奈樹」
奈樹「はい、なんですか?」
柔らかく微笑み、勾玉を見る奈樹。一見すれば…この娘がそんなことをするとは思えない…。しかし勾玉は続けて言った。
勾玉「お前は…人を殺したことがあるか…?」
その言葉に、奈樹の表情から微笑みが消えた。