第二章 剣と聖 プロローグ
イーバ内部
粒子帰還。幹部だけが使える技術。光の粒子を身に纏い、イーバへ帰還することができる。
粒子帰還した者が最初に立つ小さな一室。エビルは深手を負い、ノスタルジアから帰還した。
エビル「ハァ…ハァ…。クソッ…この僕が…」
膝を着き、呼吸を整える。出血する身体から血が流れ落ち、ポトポトと音を立てる。
「そんな姿で粒子帰還とは…相当酷い目に合わされたのカナ…?」
医者のような白衣を着て、長く黒いネットリとした髪をした眼鏡の男が部屋に入ってくるなり、エビルに言った。エビルは睨むようにその男を見た。
エビル「ダークか…」
ダーク「吾輩のことはD.D、もしくはDr.ダークと呼んでくれといつも言っているが…幹部同士の仲なのに覚えてないのカナ…?」
エビル「…何の用だ…?」
ダーク「こっぴどくやられたみたいカナ…? 奈樹を取り戻せなかったのカナ…?」
エビル「あぁ…まさか芙蓉が寝返るとは予定外だった…。あんな奴らに入れ込んでいるとは…思ってなかった…」
ダーク「芙蓉なんてどうでもいいカナ…吾輩は奈樹…奈樹さえいればそれでいいカナ…。あぁ…あの小さい身体の中に溢れる無限の可能性なる力…もっとイジリたかったカナ…吾輩なら至高の兵器に仕上げられる…ククク」
エビルはダークの卑しく下品な笑い顔が嫌いだった。しかしこう見えてダークはイーバで最高権力を持つ研究者であり、武装兵器開発長で生物兵器拷問長官。
この男と付き合うのは面倒だが、それ相応の見返りはあると考えていた。
ダーク「おっとっと…生命循環液に入る準備を整えてあげようと思ってたんだったカナ…その傷も一時間あれば、すぐに元通りカナ…ククク」
エビル「あの島の…咎値はいつ溜まる…?」
ダーク「新しいポッドを作るのも時間が掛かる…咎霧領域を使うにも侵略用ポッドは無い…適当なE生物に仕込むのもいいけど、二度は通用しないかも知れないカナ…」
エビル「霧はどうでもいい…いつだ…いつ溜まる…」
ダークは部屋から出て、廊下からエビルを横目で見て一言。
ダーク「二週間」
そう言ってイーバ内部を歩いて行った。
数日後…
ノスタルジアから遠く離れた島『ファラル大陸』。
この大陸では様々な文化を持つ村や町が存在していた。桜の国『桜馣』。信仰者の村『モネル』と教会『聖クレア教会』。花の都『ゼラニウム』。ガラクタの街『ユジーヌ』。異邦者の村『ルクス』。
楼馣王国
城は炎で包まれていて、夜とは思えないほど明るい。城の敷地内には死体の山。城内は侵略してきたE兵器の集団と、楼馣の兵の死体で溢れかえっていた。
「王子…! 王子はここからお逃げ下さい…!」
傷だらけの男と女が、二人で城の裏口から外へ出る。一席の木のボートがあった。
「俺も戦う! まだ…負けたワケじゃない! 負けを確信しちゃいない!」
「いけません! 王子だけでも生き延びて下さい…王子が…桜馣の血を持つ者さえ生きていれば、いつか必ず国は再建できます」
「けど…!」
E兵器が一体、頭上から襲いかかってくる! 男をボートへと突き飛ばして、女は剣で受け止めた!
「私達は信じています! 王子のことを…!」
言い終わる前に攻撃を止めていた剣が折れ、E兵器の攻撃で女は倒れた。 男はボートのエンジンを起動させ、発進させる。
「クソッ…! クソッ…!」
勢いよくボートが走り続け、海面を切って走っていく。波で上下に揺られる度に、男の目尻から出た悔し涙が風で飛び、海の一部と化していった。




