表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第一章 ノスタルジア
3/176

1-A -悠久の島 ノスタルジア-

 都市や国など大陸によって大きく文化や技術が違い、魔法と言われる力が存在する世界。その力は世界で共通して『咎力(きゅうりょく)』と呼ばれていた。


 咎力(きゅうりょく)は全ての人が使えるわけではなく、素質や才能で個人差がある。生まれ持って使用できる者、施設(しせつ)会得(えとく)する者、一族特有の能力など多種多彩(たしゅたさい)であった。


 その咎力(きゅうりょく)を利用する研究所が存在した。高々度を浮遊し徘徊(はいかい)する要塞研究所(ようさいけんきゅうじょ)『イーバ』。


 そこでは様々な開発・研究が行われていた。咎力(きゅうりょく)を利用した実験や、生物兵器の改造。

 イーバで(つく)られた生物兵器(せいぶつへいき)は『E兵器(クリミナル)』と呼ばれている。地上に廃棄(はいき)される生物兵器は戦闘能力を(たい)して持たない失敗作であり、『E生物(スティグマ)』と言われる。

 E生物(スティグマ)は危害が無い上、中には人と違いがわからない者もいる。そのため世界の人々にとって危険な存在ではなかった。この世界では知ってか知らずか、人々は自然にE生物(スティグマ)共存(きょうぞん)していた。



挿絵(By みてみん)


 そして舞台は、数ある大陸から遠く離れた自然溢(しぜんあふ)れる孤島(ことう)『ノスタルジア』。ノスタルジアではE生物(スティグマ)が多く住んでいる。住宅と商店街を作り、それぞれが好きな商売をして生活している。


 島で人と呼べる者は(わず)か三人の男。彼らはそんな一風変わった平和な島で自由に過ごしていた。




「こんな所に居たのか、蒼輝(そうき)


 島を一望(いちぼう)できる丘の上。大きな一本の木の影で寝ていた男は声を掛けられた。


 影葉(えいば) 蒼輝(そうき)。平均的な体型と身長。蒼いスカーフと金色のハネた髪が特徴的な青年。


蒼輝「んー…よっと! なんだよ勾玉(まがたま)。何か約束してたっけ?」


蒼輝は軽く伸びをして、足で反動をつけて起き上った。


勾玉「用があるわけではないがな…たまたま見かけただけだ。こんな所で昼寝とは珍しいと思ってな」


 飛竜(ひりゅう) 勾玉(まがたま)。蒼輝と同じ島民で、数少ない人間の一人。性格は冷静で真面目。


蒼輝「まぁ、俺だって自然と触れ合いたい時もあってだな…」


勾玉「食欲(しょくよく)最優先(さいゆうせん)の男のセリフとは思えんな」



 突然丘に強い風が吹き、勾玉の腰まである黒い髪をなびかせる。木の枝ガサガサと揺れ、緑色の木の葉が数枚ヒラヒラと落ちてくる。二人は上を見上げた。


蒼輝「風魔(ふうま)か?」


 そう言って少しすると、一人の男が木の上から降りてきた。


風魔「バレた?結構自然だったと思ったんだけどな~」


 長く赤いマフラーをした緑の髪をした青年が、頭を()きながら残念そうに言った。


挿絵(By みてみん)


 風魔(ふうま)。蒼輝と勾玉の友。この島で人間は、この三人の青年のみである。


勾玉「丁度いい。さっきうどん屋の割引券を(もら)ったんだが、どうだ?」


 勾玉はポケットから三枚セットの割引券を取り出す。


風魔「いいね~。行くか!」


蒼輝「お、俺はいいかな…」


勾玉「珍しいな…食べることが一番のお前が(ことわ)るとは…」


風魔「どうせその店で食い逃げしてきたところなんだろ」


蒼輝「ババババ、バカ! ちげーよ!」


 隠し事ができない分かりやすい態度だった。


勾玉「……」


風魔「違うのか~、それじゃ二人で行くか勾玉」


蒼輝「ズルいぞ! 裏切り者!」


風魔「やっぱ食い逃げしてきたんだろ!」


 いつものやりとりに勾玉は(あき)れていた。ふと、空を見上げると黒い何かが目に入る。


勾玉「あれは…」


 蒼輝と風魔が一度勾玉を見て、その視線を同じ方向へ向ける。


風魔「ポッド…? イーバから落ちてきたんじゃない?」


蒼輝「ヤバイ! 降ってきてる! 皆ぁ! 伏せろおお!」


 蒼輝が急いで頭を(かか)えて伏せる。


ゴオオオオオオオオオオ


 轟音(ごうおん)を鳴らしながら、(はる)か遠方を通過する落下物。


ドォォォォォォォォン!!!


 地面が少し揺れた。こんな非現実的(ひげんじつてき)と思える状況だが島民にとっては()れたものである。



勾玉「森の方へ落ちたな」


風魔「行ってみるか! 中に何が入ってんだろーなー」


 勾玉と風魔が丘から森に向かうように進む。伏せたまま放置された蒼輝が立ち上がる。


蒼輝「ちょっとくらいノってくれてもいいのに…」


 トボトボと二人の後を追う蒼輝。三人はポッドの中身を確認すべく、森へと向かった…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ