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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第四章 銀の鎖と空の鏡
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40-B -覚醒の予兆-

月花「解放せよ……月詠七星剣つくよみしちせいけん……!」


 剣をダークに向かって振る! 月を連想れんそうさせる形の斬撃ざんげきを飛ばす!


ダーク「そんなもの当たらないカナ……!」


 回避かいひするダーク。そこへ勾玉(まがたま)風魔(ふうま)、レイがダーク後方のポッドに集中する!


ダーク「そんな行動は読めてるカナカナァァ!」


 (さけ)び、半回転してアームではらって三人をはじばす! 


月花「ここだっ!」


 今度は月花がダークに斬りかかる! ダークはふたたび半回転して月花を見るが、勾玉、風魔、レイもダークの背後へ(せま)る!


ダーク「前後のはさちィィ! すーべ想定済そうていずみカナァァ!」


 アームの先が割れるように開き、斥力せきりょくのバリアを発生させて月花達を吹き飛ばした! 全てデータ通りの、読み通りの動き。そのことにダークは優越感ゆうえつかんを覚え、徐々に声が大きくなっている。


ダーク「クククゥゥゥ! 君達の狙いは解っているカナァ! (ゼッ)ッッッッッッ(タい)にぃぃぃぃ! 奈樹は手放さないカナァァァ!」


 さけぶダーク。バリアが徐々に弱くなり……消滅しょうめつした瞬間だった。



 ガシャアアアアアァァァァン!



 ガラスの割れた音。それはダークの背後から聞こえた。ポッドが破壊された音がひびいた。ポッドにはやいばが突き刺さっていた。


ダーク「ナ……ナナナ!?」



 刃は徐々に短くなってゆく。その湾曲わんきょくした、月のような刀の持ち主。それは……。



月花「まさか……!?」


 月花が見た者。銀色の髪をなびかせ、月の宝具である聖刀せいとう・三日月を持つ男。銀楼(ぎんろう)だった。


ダーク「クァアアアアアォォォ……! 銀楼……! 何故(ナーゼ)……吾輩(わがはい)のジャマヲヲヲヲヲヲッッ!?」


 銀楼の眼は、にらむようにダークを見ていた。



銀楼「ババァの能力で会話は全部聞かせてもらったぜ」


月花「銀楼……まさかお前……つき四使徒しとに戻って……!」


銀楼「勘違かんちがいするんじゃねぇ。アイツにイイように利用されてたことにムカッぱらが立ってるだけだ」


 ダークの背後のポッド。そこから光の粒子りゅうしれ始める。


ダーク「あぁぁぁ……こぼれ落ちる……吾輩の……吾輩の……奈樹が……」

 

 宙を舞い流れる粒子を寄せ集めようとするが、虚空(こくう)(つか)む。


蒼輝「な……奈樹……」


 長らく()つん()いの状態で動かなかった蒼輝は顔を上げた。その姿、髪や瞳は元の状態に戻っていた。


 蒼輝の前に集まる粒子。それは徐々に人の形となってゆく。 そして……光が凝縮ぎょうしゅくされた瞬間、奈樹が横たわっている状態でよみがえった。


ダーク「ヌオオオォォォ!」


 (きょ)を突かれ、一度は手にした奈樹を手放してしまったダーク。それにより冷静さをうしない、いきおいよくアームを奈樹へ振り下ろす!



蒼輝「奈樹!」



 まだロクに動かせない身体。だが、力を振り絞り、いそいで駆け出した蒼輝は気を失っている奈樹をかかえ、ダークのアームによる攻撃から助け出す!


ダーク「クッ……!」


銀楼「聖刀(せいとう)……三日月(みかづき)!」


 ダークが蒼輝と奈樹に追撃をしようとした、その時……ダークの身体へと刃が湾曲しながら伸びる!


ダーク「馬鹿(バカ)カナァアァァァアァ!? 吾輩が! この吾輩が一度手を組んだ君の宝具を解析していないとでも思ったカナァアァーーー!?」


 解析済みのデータ。避けるまでもないと、その場を動かないダークだった。


銀楼「そいつはどうかな……」


ダーク「ナナッ……!」


 身体を貫通かんつうする刃。実感していた。体感していた。その貫かれたダメージを。その光景を見ている宮殿のアルテミス達……。



ラミア「やったぁ! 銀ちゃんカッコイイー!」


 大喜おおよろこびしてピョンピョン飛び跳ねるラミア。


ルーン「イイ一撃だったな」


アルテミス「やはり……手をほどこした聖刀・三日月の攻撃は無力化できなかったみたいですね」


セレーネ「相手にさとらせないで攻撃を仕掛ける銀君も、なっかなかの演技派だねー」


ラミア「やっぱり銀ちゃんは強いんだよ! 頑張がんばれー! 銀ちゃーん!」


 アルテミスの映し出す映像に向かって応援するラミア。



 銀楼の持つ三日月が貫いた者。ダークはふるえていた。想定外の事態に困惑していた。


ダーク「何故……何故カナ……まさか……」


銀楼「テメェに調べられたことで三日月は邪気じゃきびていたそうだ……。それをババアが取り払ったのさ……。ただ、それだけだ」


風魔「なるほど……ルーンとセレーネの武器は今の状態からイジリようがないが……あの聖刀・三日月だけは例外で、ダークに解析されたものと違う状態に書き換えることができたのか」


 解析した際に、ダークに触れられることによって邪気(じゃき)()びていた月の宝具、三日月。その邪気を取り払えば、ダークが解析したものとは別の武器という(あつか)いになると考えたアルテミスの行為だった。


ダーク「ナナナ……!」


銀楼「解析ってのはムズイんだろ? だから少しでも数値をイジられると思うように無効化できねぇ……違うか?」


ダーク「……おの……れ……! 吾輩を出し抜くとは……許しがたいカナァァァ!」


 激昂げきこうしてかお血管けっかんが浮かび上がるダーク。その身体から溢れ出すやみ咎力きゅうりょく。そのおぞましい瘴気しょうきに、気を失っていた奈樹は蒼輝の腕の中で目を覚ました。


奈樹「う……」


蒼輝「奈樹! 良かった……」


 安堵あんどした表情を浮かべる蒼輝。ボーッとしている奈樹の焦点しょうてんが、蒼輝に合った。


奈樹「蒼輝……私……」


蒼輝「皆が……助け出してくれたんだ。無事で良かった……」


奈樹「ごめんなさい……私……私……」


 謝罪しゃざいする奈樹。本当に悲しげな、申し訳なさそうにしている。


蒼輝「無事だったんだ……それでいいさ」


 奈樹を抱える手に力が入る。もう、もう二度と奈樹を傷付けない。粒子化リコールなんて絶対にさせない。そうちかう蒼輝だった。


ダーク「奈樹ウゥゥぅぅぅ! 吾輩はあきらめてないカナァァァァ!」


蒼輝「!」


 ダークのアーム二本が、両手を組むような形で合わさる! そこへ強大な闇のエネルギーが収束しゅうそくしてゆく……!


ダーク「コイツで……! また奈樹を粒子化させてやるカナ……! 邪魔するものは全て消すゥゥゥ!」


 動けない奈樹は、荒ぶるダークに萎縮(いしゅく)していた。蒼輝は奈樹を背にし、暗黒剣ルシフェルをかまえた!


ダーク「ククク……! たてになっても無駄カナァーー! 今から暗黒同化砲(ダーク・インフェクション・キャノン)を受けた者は……かならず死ぬことになるカナァ……!」


蒼輝「なんだと……!?」


ダーク「受けた者は吾輩とともに闇の空間にいざなわれる……そこから脱出することは出来ない……吾輩と二人だけの領域りょういき。徐々に闇にわれ、時間がてば闇の一部となるカナァ……。つまり……確実かくじつに死ぬ!」


 つまり、奈樹に当てれば確実に粒子化リコールさせることが出来る。かばうことで他の者に当たれば……その者が死ぬことになる。


蒼輝「その空間の中で……テメェを倒せばいいんだ!」


ダーク「ククク……それは正しいカナァ……。さっきの大荒おおあれした君ならともかく……正気に戻った君相手に吾輩がくっするはず無いカナァァ……!」


 砲台を蒼輝に向ける。正確には、蒼輝の後ろに居る奈樹を狙っている。


レイ「あのままじゃ……蒼輝が……」


月花「あの砲台を破壊するしかない!」


銀楼「行くぜ!」


 皆が動き出そうとした、その時だった……!


疾速しっそく模倣(イミテーション)タイプ……ハルベルト」


 突如とつじょ、高速で勾玉達の前に、両手を広げて()(ふさ)がった疾速(しっそく)! そして、ハルベルトの結界能力を使用した。


疾速「鉱石球体場(こうせききゅうたいじょう)…アレキサンド・ランド」


月花「しまった……!」


 勾玉、風魔、レイ、月花、銀楼……そして疾速自身をつつむように結界が発生する! 


疾速「最高(さいっこう)のタイミングでキメちまったなぁ。これでアンタらは逃げられ……」


 結界が完成してしまうと思われた、その瞬間……!



 結界の中の者、疾速をのぞいて何かに攻撃されて吹き飛ばされた! その衝撃で完全に閉じこもる前に結界の外へ出た!


月花「刹那ちゃん!」


刹那「奈樹様を、お願い!」


 皆を攻撃して、結界の外へ弾き出したのは刹那だった。たった一人で、疾速と一緒の結界に入ったのだ。


 月花は再び中へ入ろうとしたが、完全に中と遮断しゃだんされる!


月花「刹那ちゃん! どうして……!」


 結界の中。刹那が対峙たいじするのは疾速しっそく


疾速「へぇ……まさか君と一騎打いっきうちになるなんてね。うれしいよ」


刹那「刹那が外にいるより……皆が外にいたほうが……絶対いいもん」


疾速「自分が犠牲になるってこと? 優しいんだね」


刹那「……」


 疾速には絶対なる自信があった。模倣もほうを使わなくても刹那とは階級かいきゅうが大きくちがう。その時点で、刹那に負ける要素ようそは一切無かった。


疾速「戦いにもならないだろうけど……許してよ?」


 刹那の目の前から、疾速の姿は消えた。超速で移動する疾速の持つ鉄パイプが、無情むじょうにも刹那の身体に打ち付けられた。




 外に居る月花は、刹那を救い出そうとした。


月花「確かこの四つの柱を倒せば……結界は解除されたはず……!」


勾玉「月花! お前はダークを阻止そしするべきだ!」


 ダークに解析されてダメージをあたえられない勾玉、風魔、レイ。この状況では、ダークを阻止できるのは月花と銀楼しか居ない。


銀楼「チィッ!」


 三日月をダークの砲台に向けて伸ばす! 月花もダークへと走る! しかし、刹那の安否に気を取られて反応が遅れた短時間、この差が砲台の発射を許してしまった。


ダーク「エネルギー充填完了カナァァァァァ……! 暗黒同化砲(ダーク・インフェクション・キャノン)……発射!」


奈樹「蒼輝! 逃げてっ!」


蒼輝「くっ……!」


 構える蒼輝はその場を動かない。もう、絶対に奈樹に手を出させるつもりはなかった。そのためなら……自身が死ぬ覚悟をもしていたからだった。



 ドオオォォォォォォォン!



 着弾によるはげしい爆音ばくおん砂煙すなけむり! 月花と銀楼は間に合わなかった。目を閉じていた蒼輝は、自身に直撃する攻撃に耐えようと構えていた。が……その衝撃は身体に無かった。


 恐る恐る目を開く。その視界に映るのは……赤いマフラー。


蒼輝「お……オイ……!」


 蒼輝の前に、盾になるように両手を広げて立っていた者が居た。


勾玉「風魔……!?」


 風魔が蒼輝の前に立ち、暗黒同化砲(ダーク・インフェクション・キャノン)を、その身に受けていた。


奈樹「風魔さん!」


蒼輝「風魔! お前……!」


ダーク「思わぬ邪魔が入ったカナ……まぁいい……最初の犠牲者は君カナ! 暗死空間(ダーク・ゾーン)の中で、順番に吾輩の闇の一部にしていってやるカナァァ!」


 風魔がダークと共に闇に包まれてゆく!


奈樹「風魔さん! どうして……!?」


風魔「……犠牲になったなんて思わないでいいよ。これは――……」



 風魔は、誰にも見えないようにニヤリと笑った。


風魔「……ただの好奇心こうきしんさ」



 完全に闇に飲み込まれた風魔とダーク。


蒼輝「風魔……風魔あぁぁぁぁぁーーーーー!」


勾玉「……何かさくがあるのか……? 風魔……」


 風魔が無策(むさく)で何かをするとは思っていない。しかし不安に駆られる勾玉。外からは闇の中の様子は見えない。この先、風魔がどうなってしまうのか……それを知るのは風魔自身と、ダークだけだった……。


奈樹「風魔……さん……」


 奈樹は立ち上がろうとするが、まだ身体全体がしびれたような様子で動けていない。


月花「風魔さん……刹那ちゃん……!」


 月花はハルベルトの能力の結界を思い出した。周りにある四つの柱から出てくる鉱石戦士(ハード・ソルジャー)を倒せば、刹那を助けられると考えた……。




 暗黒同化砲(ダーク・インフェクション・キャノン)の効果で暗死空間(ダーク・ゾーン)の中に居る風魔とダーク。


風魔「二つほど聞いていいかな?」


 キョロキョロと暗闇の中を見渡す風魔。


ダーク「ククク……冥土めいど土産みやげってやつカナ……?」


風魔「そういうこと……。どうせ消えるんだ。教えてくれてもいいんじゃない? 聞きたいことの一つは……」


 最初の質問に答えるダーク。風魔は(うなず)いた。


風魔「なるほど……。それじゃあ、もう一つ……この空間が、外から見たらどうなってるかってことだけど」


ダーク「ククク……そんなことカナ? 単純な話カナ……君の死に様は誰にも知られないカナ……」


風魔「つまり……この中は外から見えないってことか?」


ダーク「ククク……そういうことカナ……。闇の一部となって吾輩に吸収され消えゆく……その様は外からじゃ見えない……」


風魔「なるほどね。安心したよ」


ダーク「自分の無様な死期なんて見られたくないもの……誰だってそう……ククク……」


風魔「誰にも見られる心配がないなら―――……『思う存分戦える』ってことだ」


ダーク「オヤオヤァ? それはつまり吾輩を倒すつもりカナ……? 残念ながら君の咎力きゅうりょく未知闇鵺(ジ・アンノウン)(すで)に解析済み……。今更なにをしたって無駄カナ……ククク……」


 風魔は時間が経てば、闇と同化する。風魔の力を解析済みであるダークからは、もはや手を下すまでもないと言った状況だった。


風魔「今から見せるのは……アンタらの得意分野の力だ。今から目の前で起こることを、夢物語じゃない現実と認識して、その身に刻み付けるといい」


ダーク「一体……何を言って……」


 ダークが言い終わらない内に、風魔の周囲に暴風が巻き起こった。


風魔「皆を強くするために……この力は、エビル相手に見せるには早過ぎたんだ」


ダーク「ナッ……!?」


 フワッと身体が浮き上がり、風魔は(うち)なる力を解き放つ言葉を口にした。



風魔「開錠(かいじょう)


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