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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第四章 銀の鎖と空の鏡
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40-A -覚醒の予兆-

 月の都に攻め入ってきたダークと戦闘を開始した。

 イーバ幹部の能力を模倣(もほう)するシステムを利用して戦うイーバ騎兵士(ナイツ)疾速(しっそく)に苦戦する勾玉(まがたま)風魔(ふうま)、レイ。

 ダークと戦う蒼輝のピンチに(あらわ)れ、合成術と創聖樹(そうせいじゅ)・ユグドラシルで対抗する奈樹(なじゅ)であったが、ダークによって粒子化(リコール)されてしまった。




ダーク「これで金雀児(えにしだ) 奈樹(なじゅ)は……吾輩(わがはい)の物だぁぁぁぁぁぁーーー!」


蒼輝「奈樹……奈樹……」


 視界には高笑(たかわら)いするダーク。奈樹の居たはずの場所には血溜ちだまり。襲い来る絶望感。


蒼輝「奈樹……」


 つんいの状態で呆然ぼうぜんとしている。くちびるくちく。身体が震える。まばたきが出来ない。地に付いた手が徐々に、強く強くにぎられてゆく……。



 その手には――――……暗黒あんこくの剣。



蒼輝「うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ! ああああぁぁぁぁぁぁ!」


 咆哮ほうこう。悲しみとにくしみがまじわったさけび。蒼輝から蒼いオーラが発生し、体内から流れ出している!


風魔「蒼輝……!?」


 おどろきによって身動みうごきが取れない風魔。勾玉も同じ状態であった。蒼輝の異変に、そこから(あふ)れ出す力に、二人は硬直してしまった。



蒼輝「解放せよ……!」


 (すさ)まじい力が蒼輝から発生し、周囲を包む! バリアがられている宮殿きゅうでんの壁にヒビが入る! 




 宮殿の中にいるアルテミス。必死に咎力(きゅうりょく)を与え、月の宝具によるバリアの力を強めていた。


アルテミス「なんという力……! 私の……アーク・オブ・アルテミスの力を無効化してきている……!」


セレーネ「だ……大丈夫……? これ……」


 キョロキョロとして揺れる建物を見ているセレーネ。


ルーン「……見守るしかないさ。俺らの武器も解析されてんだ。地上の人らに任せて、ここで待機しておくしかない。……何が起きようとも」


 誰よりも冷静にしているルーン。つき四使徒しとのリーダーとして、誰よりもあせってはいけないと考えているからだった。


アルテミス「影葉(えいば)……蒼輝(そうき)……」


 青ざめた顔で画面を見ているアルテミス……。蒼輝を見る目……そこから湧き上がる感情は、恐怖だった。




ダーク「ククク……ハァ……ハァ……。奈樹……ククク……後はこれを持ち帰れば……ん?」


 自分の世界にひたっていたダークは、ようやく蒼輝の異変いへんに気が付いた。

挿絵(By みてみん)


 蒼黒あおぐろいオーラ。眼が赤黒あかぐろく光る。髪は逆立さかだち、その目付きは狂気きょうきまっていた。まるで……蒼輝がかたくなにさせたくなかった、暴走した奈樹を彷彿ほうふつとさせる姿だった。


蒼輝「返せ……!」


 低い声色(こわいろ)。いつもとは違う威嚇いかくするような声に、仲間達でさえ恐怖を感じた。そして……息を飲み、指一つ動かせない緊迫感きんぱくかんの中で蒼輝を見ていることしか出来なかった……。


ダーク「ククク……金雀児えにしだ 奈樹なじゅを返せというのカナ……? もう奈樹は吾輩わがはいのナカ……ククク……それ以前に元々君のモノでもないカナ……」


 ダークの視界に居た蒼輝が、一瞬で姿を消した。


ダーク「ナ……ナナナ? 何カナ……?」


 ダークは違和感いわかんを覚えた。キョロキョロと周りを見渡みわたすが、見つけられなかった。それもそのはず。自身の身体の上に立っている蒼輝がいたからである。


蒼輝「……」


 上に立つ蒼輝をつかまえようとアームを伸ばす!


ダーク「ナナ……?」


マテリア「きゃあ!」


 ドシャアァァ!


 マテリアと刹那の前に巨大な何かが落下してきた! それは……ダークのアームの一つだった。


蒼輝「……」


 ばしたアームは、蒼輝の暗黒剣ルシフェルによって切断され吹き飛んでいた。


ダーク「バカナナナ……そんなことあるはずないカナ……!?」


蒼輝「奈樹を……返せっっ!」


 蒼輝は暗黒剣ルシフェルを天に(かざ)した。そこに暗闇が集まってくる……。


ダーク「ククク……暗黒は吾輩の専売特許せんばいとっきょカナ……。吾輩に闇の力で勝てるはずないカナ……!」


 ダークは蒼輝を振り下ろして大きく後退こうたいしてジャンプする!


蒼輝「逃がさない……お前だけは……!」


ダーク「逃げる? ククク……君は少しイライラしすぎカナァ? そのせいか吾輩(わがはい)だけしか見えていない……だから……負ける」


蒼輝「……」


 蒼輝の真後まうしろに、超速ちょうそくあらわれた疾速しっそく! 手に持つ鉄パイプで即頭部そくとうぶを殴り付けようと振った!


疾速「ガッ……!」


蒼輝「どけ……!」


 裏拳うらけん。蒼輝は背後に振り返りながら疾速をなぐった! 疾速はぐに、もうスピードで吹き飛んだ! 30メートル以上の距離を無抵抗むていこうのまま吹き飛び、月の都をかこう外壁に衝突しょうとつした! 


ダーク「バカな……何故なぜ……そんな力が……。さっきまでそんな能力を持ち合わせて……」


 ダークは徐々に後ずさる。


レイ「バニッシュ・スピア」


ダーク「!?」


 ダークの背後。レイ持つ槍。その狙いの先は、奈樹が粒子化りゅうしかされたポッド。

 

 ダークは跳躍ちょうやくして、レイの攻撃を回避する! 高々度に飛び上がり、月の都を見下みおろす状態。そのダークの目の前に蒼輝があらわれた。


蒼輝「破壊をたのしの剣よ。暗黒の(つばさ)覚醒かくせいさせ、あらゆる事象じしょうおととせ」


蒼輝「黒式(こくしき)失墜(しつい)(はね)


 暗黒剣ルシフェルに、闇の咎力きゅうりょくみ出された六つの漆黒しっこくの羽が広げられる! 


蒼輝「白式(はくしき)()けの明星(みょうじょう)


 漆黒の羽は、またたく間に純白じゅんぱくまる! その瞬間にダークはあけまれ、光に切り刻まれる!


ダーク「ぐおぉぉぉぉぉぉ! な……! ぐぬううう!」


 耐えるダーク。大きく吹き飛び、都の真ん中辺りで着地する。


蒼輝「殺す……! 殺す……!」


 肉体の限界ギリギリの動きをしていることは明らかだった。身体中の血管が浮き上がり、恐ろしいほど殺意に満ちていた。




『ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたーら……』



 蒼輝の脳裏にひびく声。それは過去に聞いた声。過去の約束。



『うーそつーいたーら、蒼輝君が笑顔になーる。ゆーびきった!』




蒼輝「くっ……!」


 突如とつじょ追撃ついげきを止めて停止ていしする。着地した蒼輝はひざを付いてつんいになった。


勾玉「蒼輝……!」


 理性が(うしな)われている暴走状態。蒼輝の身体は限界をむかえていた。頭に響いた声は、無茶をする蒼輝を制止するためだったのかも知れない。


風魔「限界みたいだね……」


レイ「……奈樹を助け出すことが可能かも知れない」


 その言葉に、勾玉と風魔はレイを見た。


勾玉「何故なぜそう言い切れる?」


レイ「ダークは僕らの攻撃を解析して、ダメージを無効にしてきていた。けど……さっきの一撃は回避した……。それには……回避しなければならない理由があったんだ」


勾玉「そうか……! あの背後のポッド……。それを確認するために攻撃を……」


 レイの観察眼(かんさつがん)と判断力。ダークが全ての攻撃を解析して無効化できるのであれば、避ける必要など無いことを再確認していた。


風魔「あのポッドはダークの能力の一部じゃないってことね……。つまりアレを破壊すれば……ナッちゃんを救い出せるってことか」


レイ「そういうことさ。ただ……あのポッドだけを狙おうにもダークはあの部分にかなり警戒(けいかい)を持っているだろうね。どうにかして注意を別に向けないと……」

 

勾玉「だが……俺達の攻撃は無効化されている……。真正面から向かうような、並の戦略では通用しない……」



『俺に……任せて下さい』


 

 その声の主。名乗なのり出たのは月花だった。片手で腹部ふくぶを押さえながら立ち上がっていた。


刹那「月花様……!」

 

月花「俺のこの剣は……まだ解析されていない。注意を向けるから皆は奈樹ちゃんを……!」


風魔「やれるの?」


月花「やってみせるさ」


 月花の強気な言葉に、風魔はフッと笑った。月花は月詠七星剣つくよみしちせいけんを取り出して、手に持った。


月花「奈樹ちゃん……ゴメン……。俺が不甲斐ふがいないから……。月の誇りに誓って、かならず助け出してみせるから」


 そう言った視線の先には奈樹が粒子化リコールし、収容されたポッド。奈樹のためだけではない。蒼輝を始めとした他の仲間達。そして、ノスタルジアで帰りを待つ者達のためにも救い出さなければならなかった。

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