38-A -終戦の音、開戦の闇-
銀楼がイーバ装甲兵を引き連れ、月の都へと侵略してきた。200体近い数のイーバ装甲兵が宮殿内に侵入するのを阻止するために、勾玉とマテリアとレイの三人、風魔と刹那の二人、そして月の四使徒のルーンは出来るだけ数を減らすために迎撃していた。
宮殿内に侵入した銀楼はアルテミスの居る玉座へとやってきた。その部屋で月花と銀楼の熾烈な戦いが始まった。
蒼輝と奈樹とアルテミスが見守る中、月花は月光嗔の頃に使用していた月の宝具『月詠七星剣』を解放した。
銀楼「やっと出しやがったか」
蒼輝「あれが……月詠七星剣……」
アルテミス「あの宝具は、ダイダリオスを除いて……ただ一人、月光嗔のみ解放することの出来た武器……七つの星を渡って月へ辿り着いて完成した我々、月の象徴とも言える武器」
奈樹「振る度に斬撃を飛ばしている……。あの力は咎力……じゃない……」
奈樹の瞳に映った
アルテミス「そうです……。あの斬撃は咎力ではないものです。一時的に刃を実体化させるもの。つまり……咎力に対して斥力を発生させる『白蛇の銀鎖』の効力では弾くことはできません」
蒼輝「それじゃこの勝負……!」
蒼輝は喜んだ表情を見せた。しかし、奈樹はジッと月花と銀楼を見ている。
奈樹「いいえ……。銀楼は月詠七星剣の能力と特性を知っているはず。闇討ちをしてまで月花さんを探し出したんだから、何も対策せずに戦いを挑みに来たとは思えない」
アルテミス「……銀楼……」
邪刀・三日月で反撃に出る銀楼。月花はギリギリで回避して側転しながら剣を振って斬撃を飛ばす!
月詠七星剣の能力を活かすものの、銀楼には当たらない。
月花「氷遊折花紙……」
着地した片手を広げ、氷を集める。
銀楼「遅いぜ!」
刃を伸ばし、攻撃準備をしている最中の月花を狙う。
銀楼「いつからテメェは……そんなに甘くなった!?」
銀楼は月詠七星剣の対策をしていた。月花が剣を振る前に斬撃のコースを読んで回避していた。いくら元々使用していたとは言え、数日前に解放する感覚を取り戻した武器では今の銀楼を斬ることは難しかった。
銀楼「前までのテメェは制圧するためなら容赦しない奴だった! もっと積極的に攻める奴だった!」
猛攻を回避し続ける月花。その間に邪刀・三日月の隙を探す。
伸びた刃は常に湾曲し、回避しても背後から襲う。
三日月と言う宝具は、伸びる速度は目に追えるのだが縮小するのが速い。一歩間違えればズタズタに切り裂かれるのは、喰らわずとも一目瞭然だった。
月花「くっ……! だが……隙はあるはず……!」
月花は三日月を回避しながら、月詠七星剣を振る。しかし、銀楼に当たることはなかった。
アルテミス「……」
奈樹「銀楼は……完全に戦闘パターンを見切っている……!」
蒼輝「……これが月の宝具同士の戦い……。なんて激しさだ」
特殊な能力を持った武器のぶつかり合い。その蒼輝と奈樹も所持している同系統の物。それがどれほどの性能を持っているか……それを目の当たりにしていた。
序盤と違い攻防は入れ替わり、月花は三日月を回避する状態になっていた。万全に対策をしてきている銀楼に、月詠七星剣の飛ばす斬撃の速度と範囲は見切られている。氷遊折花紙を作り出そうとすると、その瞬間を狙って三日月の刃が迫ってくる。
月花「ならば……」
状況を変えるため、剣で三日月の刃を受け止めて咎力を溜めるのに集中することにした。
だが……銀楼はその瞬間を狙っていた。
銀楼「もらった……死ねっ!」
邪刀・三日月を凌いでいたはずだった月花。しかし、銀楼の突き出した刃が月花の肩に刺さった! 伸びる刃に身体が持って行かれ、座った状態で壁に叩きつけられる! 刃が肩を貫通し、壁に刺さる。
蒼輝「月花!」
奈樹「月花さん!」
アルテミス「あれは……!」
銀楼の右手に握られていた刀……それは左手にも握られており、二本に増えていた。
銀楼「聖刀・三日月……」
アルテミス「何故……宝具が二つに……!?」
月花「……今まで使ってた武器の……名前を変えていただけじゃ……なかったのか」
銀楼「一度でも、そんなことを言ったかよ」
銀楼は突き刺したまま、歩み寄る。そして縮小させた右手の邪刀・三日月を月花に向けた。
月花「ハハッ……それもそうだ……」
銀楼は聖刀・三日月を月花の肩に突き刺したまま、月花の腹部へ邪刀・三日月を突き刺した。