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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第一章 ノスタルジア
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4-B -降り立つ刺客-

 E生物(スティグマ)の子供達と遊ぶ奈樹(なじゅ)。島に来た当初(とうしょ)は誰にでも(おび)えた様子だったが、その状態は無くなった。その姿に安心する蒼輝(そうき)

 子供達が帰り、蒼輝は飲み物を取りに小屋へ入る。すると、一人になった奈樹を呼びかける声がした。奈樹は無意識(むいしき)のように声のする方向へ歩いて行く…。




「奈樹」


 ホームの小屋付近では、もうこの声はしない。蒼輝が小屋から出てくる。


蒼輝「おまたせ…って…あれ? 奈樹…?」


 周りを見渡すが姿が見えない。座っていた場所を入念に見てみる。


蒼輝「土と草を見る限り、(あらそ)ったような後はなさそうだ…。物音や奈樹の声もしなかった…。トイレでも行ったのか?」


 トイレをノックするが、返事はない。扉を空けてみるが誰もいない。

 イーバの追っ手に声を上げる間もなく誘拐(ゆうかい)された。そんな不吉(ふきつ)なことが頭を()ぎる。


蒼輝「奈樹…。どこ行ったんだよ…!」


 蒼輝は周囲を探しに出る。




「奈樹」


 奈樹は丘の上にまで来ていた。


奈樹「声は…ここから…」


 丘の上に生えている一本の木を見る。


「奈樹…」


 声の(ぬし)は木の(かげ)から姿を(あらわ)した。


「…奈樹…」


 茶色の長い髪に大きなヘッドバンドとリボンをして、傘を持った少女。

【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】



奈樹「…!」


 奈樹は(おどろ)きを隠せなかった。


奈樹「マテリア!」


 駆け寄って両手を(にぎ)る。


マテリア「久しぶりです…奈樹…」


 奈樹の手を握り返す。


奈樹「イーバから脱出できたの?良かった…私…心配してた…」


マテリア「警備が薄くて逃げることができたです…。心配してくれてありがとうです…」


奈樹「イーバでいた…たった一人の友達だもの…。心配しないはずないじゃない」


 手を握ったまま目を見つめ、奈樹が微笑む。


 マテリアはイーバで出会った友達。お互いに時間があればいつも会っていた。イーバの中では楽しいことなんて(ほとん)ど無かったが、二人でいることは楽しかった。辛いことも相談し合った。

 奈樹はある時から一年以上マテリアと出会えなくなった。それから脱走をしてこの島に来たので、お互いにしばらく、どうなっていたかは知らなかった。


奈樹「そういえば…どうしてこの場所へ呼んだの? 声が近くからして森にいたと思ったんだけど…。」


マテリア「それは…奈樹がどこにいるかわからないから…『あの力』を使ったです…」


奈樹「えっ…そう…そうだったのね」


 奈樹は少し違和感(いわかん)を覚えた。声の主がマテリアだとわかって、ここまで来たが…それにしてはマテリアの『あの力』を全く感じなかったからだ。


マテリア「奈樹…」


 考え事をしてしまっていたところに声を掛けられる。


奈樹「えっ…? どうしたの?」


マテリア「奈樹は今…一人です?」


 奈樹は質問の意図がよくわからなかったが、一応答えた。


奈樹「この島に私を助けてくれた人達がいて…その人達にお世話になってるの。今は一人でここまで来てしまったけど…」


マテリア「そうですか…」


奈樹「皆に紹介するから。マテリアのことも、きっと歓迎(かんげい)してくれる。ねっ? 行きましょう」


マテリア「あっ…けど…」


奈樹「大丈夫よ、本当に良い人達だから…。私…この島のこと大好きになったから。」


マテリア「わ…わかったです…」


 マテリアは申し訳なさそうにしながらも微笑(ほほえ)んだ。引っ込み思案(じあん)な性格のマテリア。その様子に先程(さきほど)覚えた違和感(いわかん)は忘れることにした。


奈樹「それじゃ、行きましょう」


 奈樹が丘を下ろうと振り返り、歩き出す。マテリアは奈樹の後を歩く。


奈樹「……。(まさかマテリアがこの島に…脱出できて本当に良かった…)」


 そう心の中で思う奈樹。


 その奈樹の背後で、マテリアは懇親(こんしん)の力を込めて(にぎ)った傘を両手で持ち、頭上高く振り上げていた。

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