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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第四章 銀の鎖と空の鏡
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36-A -明けの明星と創世の樹-

 月の都にて女神アルテミス、月の四使徒(しと)であるルーンとセレーネから過去の話を聞いている。


 月の四使徒しと……リーダーであった月光嗔げっこうしんけ、ルーンが引き継いだ。自我の強い銀楼(ぎんろう)は実力はルーン以上であっても、リーダーという 抜けた枠には新たにリュートが加入し、日々任務をこなしていた。


リュート「…………」


 夜の銀色の荒野で()をしている四人。リュートが弦楽器げんがっきを引いている。ルーンとセレーネはその音色の(とりこ)となり、無意識に身体(からだ)をゆっくりと揺らしていた。銀楼は少し離れた所で別の方向を向いて座っている。


セレーネ「はー、いやされる……」


リュート「フフッ。ありがとう」

 

セレーネ「アンコール! アンコール!」


ルーン「そろそろ寝ないと明日も早いぞ?」


リュート「そうだね……そろそろ寝ようか」


 楽器をケースに仕舞しまうリュート。セレーネは元気よく立ち上がった。


セレーネ「ザーンネン。また明日聞かせてね!」


 ニッコリと笑い、アンコールの続きをうったえかけた。リュートはそれにうなずいた。


ルーン「おーい、銀。俺達そろそろ寝るぞー?」


銀楼「あぁ。見張りはしておく」


ルーン「二時間で交代するから、よろしく」


 そう言って建てておいたテントに入る三人。銀楼は一人で座ったまま遠くを(なが)めていた。


セレーネ「リュー君」


リュート「なんだい?」


 テントの中で川の字に横になって、話しかけるセレーネ。


セレーネ「ありがとうね。リュー君が入ってくれたから四使徒(しと)の活動も安定してるよ」


ルーン「月光嗔……どこ行っちまったんだろうなぁ……」


 つぶやくくルーン。少しの沈黙ちんもくが続いた。


セレーネ「銀楼君……ずっと元気無いよね」


リュート「たがいを高め合う存在は大切だからね。その目標を失ったんだ」


ルーン「そだな……。けど、まだ死んだと決まったわけじゃない。それを銀楼も思ってるだろう」

 

 四人は月光嗔が生きていると信じていた。何処(どこ)かで生きていると。(けっ)して死んではいないと。そうして……一年ほど、その状態は続いていた。



セレーネ「その後……私が事故であしくしちゃってね。四使徒から脱退。やっぱり私が抜けた一人分の穴は大きかったみたいで……リュー君は殉職じゅんしょく……」


月花「そっか……」


 月花は椅子から立ち上がり、頭を下げた。


月花「ごめん。俺が……俺がセレーネの脚とリュートの命をうばったんだ」


セレーネ「そんなことないよ。四使徒として活動できなくなったけど、まだ私の名はセレーネ。月の宝具の所持者。四使徒としてのほこりは(うしな)ってないよ。リュー君だって誇りを持って亡くなったんだから。謝らないで」


 月花のつらい気持ちをやわらげる優しい言葉。どれだけいようと、どれだけその言葉に心は救われた。それは言葉だけではない。記憶を失っていても、かつて信頼し合っていた仲間だという事実が悔いる心を救った。


 月花はセレーネに言われ、椅子に座り直した。そしてセレーネと話をしながら。一緒にドーナツを食べ終えた。リュラ・セレネイドが中へ入ってきて、食器を片付けようとした。


月花「運ぶの手伝うよ」


リュラ「えっ…! そ、そんな。ごゆっくりしていてください」


月花「宮殿を少し見てみたいんだ。いや……宮殿だけじゃない。都も見て回りたい」


リュラ「けど……」


月花「いいからいいから」


 月花は部屋の外へ出て、扉を閉めようとした。中からセレーネが笑顔で手を振る。


セレーネ「いってらっしゃーい」


 月花は自分の分の食器を持った。リュラはセレーネの分の食器を持った。部屋を出て扉を閉めた。廊下を歩く。リュラは姿勢を正したキッチリした歩き方をしている。


月花「まだ小さいのに、しっかりしていて(えら)いんだね」


リュラ「お兄ちゃんの影響です…」


月花「えっ?」


リュラ「リュート・セレネイドは……私のお兄ちゃんなんです」


月花「リュートの……妹さんだったんだね」


 リュラは(だま)って(うなず)いた。


リュラ「お兄ちゃんは……四使徒(しと)であることを(ほこ)りに思ってました。だから私も月の都の役に立ちたくって……けど私……強くないから……」


月花「だからアルテミス様の側近なんだね」


 月花は以前まで月の四使徒(しと)であったセレーネと、リュートの妹であるリュラと(せっ)することで、四使徒(しと)の使命感を取り戻しつつあった。そして……銀楼と戦う覚悟を決めた。それは月の四使徒(しと)やアルテミスのためだけではない。

 ノスタルジアで傷つけられた氷牙(ひょうが)恋夢(こゆめ)、マテリアの仇討(かたきう)ち。島の皆を恐怖に(おとしい)れた罰を(つぐな)わせるつもりだった。

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