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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第四章 銀の鎖と空の鏡
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35-B -女神と咎人-

 アルテミスから告げられた言葉。それはノスタルジアの仲間であるディアナは、月の女神ダイアナの生まれ変わりだということであった。



蒼輝「ディアナが月の女神だって……?」


 二人はおどろいたが、ショックを受けたり呆然ぼうぜんとなることはなかった。ディアナには今まで不可思議(ふかしぎ)な点が多数あった。だからこそ、意外と感じなかった部分があった。

 そう思っていた奈樹だが、蒼輝は否定的(ひていてき)な感想を言った。


蒼輝「冗談じょうだんキツイぜ。いくらなんでも女神の生まれ変わりだなんて……」


アルテミス「『ダイアナ・ムーンライト』。私と共に月へやってきて、共に都を(きず)き上げた月の女神です」


奈樹「……」


蒼輝「そりゃまぁ名前は似てるけど…」


アルテミス「ダイアナは元気いっぱいの笑顔をすべての者に振りまき、周りの者まで笑顔にする素晴すばらしい神でした…。先程さきほど、貴方が言っていた紫闇(しおん)。そして(みお)。その二人は、ダイアナ専属せんぞく四使徒しとだった者達です」


蒼輝「…えっ…!? 四使徒(しと)って……紫闇は悪魔だし、澪は記憶喪失きおくそうしつだし……」


アルテミス「まさしくその二人がディアナと居たことはありませんか?」


蒼輝「……そ……それは……」


奈樹「あります」


 奈樹はハッキリと答えた。蒼輝は奈樹を見た。


アルテミス「では教えましょう……ダイアナと二人の関係を」


 アルテミスは、当時ダイアナが話をした紫闇と澪との出会いを語った……。




 月の都からはなれた大地。一人で散歩に出ているダイアナ。部屋に閉じこもっているのが好きではないアウトドア派で、いつも宮殿きゅうでんからけ出しては都の外に出ていた。


ダイアナ「ふんふふーん」


 鼻歌はなうたじりに歩く。気配を感じた。ダイアナはのぞいた。そこには全裸ぜんらに近い状態の黒い髪の女性が、ボロボロになってたおれていた。それは、かつての澪。


ダイアナ「だ……大丈夫!?」


 すぐさまり、身体をらそうとした。だが、傷が悪化あっかしそうなので触れるか触れないような状態で声を掛ける。


澪「…う……」


ダイアナ「折れてたりしない? 平気? すぐに運んであげるからね!」


 ダイアナは澪をおぶって都へ走った。澪の息は小さく、今にも呼吸が止まってしまいそうだった。都に運んだダイアナは宮殿の廊下を走った! 

 廊下で出くわしたアルテミスは、プンプンと怒っていた。


アルテミス「ダイアナ! また勝手に出掛でかけて……」


ダイアナ「大変だよ! 大変!」


 いそいで澪を部屋べやに運び込み、治療ちりょうを開始した。ダイアナは必死に弁解べんかいするが、勝手に出掛けたことをアルテミスにこっぴどくしかられた。

 20分ほどして、ようやく説教が終わった。 


ダイアナ「あーんなに怒んなくてもいいのにねー?」


 眠っている澪に話しかけたダイアナ。誰よりも心配しており、自身が率先(そっせん)して様子を見ていた。三日が経過すると、ベッドで横になっていた澪は目を覚ました。ひどい怪我だったが、命を()()めることができた。 


澪「ん……」


 手をにぎられている感覚に気付いた。その方向を見た。


ダイアナ「起きたー! よかったー!」


 ニコニコしているダイアナ。澪は、この様子を見て神だとは思っていなかった。何故なぜ、自分がここで目を覚ましたのか、この女性はだれなのか不安になっていた。


ダイアナ「ねー! 名前なんて言うの?」


澪「ミオ……私は……みお……」


ダイアナ「そっかー! みおっちゃんって言うんだね! よろしくね!」


 ダイアナはニコニコしていた。澪は、その笑顔を見ているだけで心の内の不安が消し飛んでいった。


ダイアナ「あー、でも(みお)っちゃんだと、おっちゃんになっちゃうなぁ……じゃあ、(みお)ちゃんでいいか!」


澪「あなたは……」


ダイアナ「私はダイアナ! この月の都で女神やってるんだよ!」


澪「女神……」


 澪はダイアナと語り合った。澪は、とある戦闘部隊の一員だったそうだ。しかし戦果(せんか)を上げられず、次に戦いにやぶれれば一族から追放という条件と、強い覚悟で戦いにいどんだ。

 しかし、結果は敗戦。瀕死(ひんし)になっていたところをダイアナの発見したのであった。


 ダイアナは、そのまま澪を保護(ほご)した。行く(あて)のない澪を、自身の使徒として(つか)わせることにした。



 そして……紫闇との出会い。それもまたダイアナが出掛けていた時だった。


 月にまう怪物におそわれ、追い詰められている紫闇がいた。見た目の年齢は12~13歳くらいで、おさなさが残っている。怪物の本体から伸びる無数の触手によって四肢を拘束され、ギリギリと締め上げられていた。


ダイアナ「今すぐ放しなさい!」


紫闇「……!」


 ダイアナは怪物に向かって崖上がけうえから飛び降りた!


ダイアナ「宝具ほうぐ……瞋恚(しんい)月光(げっこう)!」


 手に発生した球。光輝ひかりかがやき、それを自分の身体に当てる!


ダイアナ「ドレスアップ!」


 身にまとったドレス。クルクルと回転し、(すそ)鋭利えいりやいばへと変化する! その刃で次々と触手を切り裂き、紫闇を救出する。


ダイアナ「ドレスアップ!」


 その声と共に服が変わる。騎士のような格好になり、鋼鉄(こうてつ)の剣を手にする。その剣で本体を切り裂き、一撃で倒した。そして宝具の力を解除し、元の衣装に戻る。


紫闇「あ……あなたは……」


ダイアナ「私はダイアナ。月の都の女神だよ!」


紫闇「め……女神様でしたか……。失礼しました……」


 紫闇はすぐさま頭を下げた。


ダイアナ「あー、いいっていいって! (かしこ)まらないでっ。そういうの苦手だからっ! それより可愛い服着てるねー? どこの子?」

 

 胸元が出ている露出(ろしゅつ)の多い服。あらゆるところを、まじまじと見ている。


紫闇「か……かわいい……。わ……私は紫闇……。あ……悪魔です」


 紫闇は恥ずかしがって胸元を隠しながら自己紹介をした。


ダイアナ「紫闇(しおん)っちゃんね! よろしくね! 冥幽界(めいゆーかい)から来たの?」


紫闇「はい……私にもよくわからないのですが……」


 冥幽界めいゆうかいにて怪物と戦っていた紫闇。追い詰められていた時に、近場に発生していた次元の狭間はざまに落ちて月の地で彷徨さまよっていた。傷付き、弱っていたところに月で怪物におそわれ命を落とす寸前だった。

 紫闇は冥幽界に戻ることはせず、命を救ってくれた恩人おんじんであるダイアナに忠誠(ちゅうせい)(ちか)い、の四使徒(しと)となった。



 そして数ヶ月後……


アルテミス「澪。単調な動きでは相手に読まれてしまいます」


澪「はぁ……はぁ……。すみません……」


アルテミス「紫闇はフェイントを掛けようとし過ぎて、スタミナを消耗(しょうもう)が激しくなっています」


紫闇「改善します……」


 澪と紫闇は肩を上下させて息を切らしている。四使徒となったからには修行に妥協(だきょう)はしなかった。

 「ダイアナ様の役に立ちたい」。「ダイアナに恩を返したい」。二人はいつも言っていた。



 ―――……


アルテミス「澪と紫闇はダイアナを守るために、すさまじいほどの努力を続けました」

 

奈樹「話を聞いてみると……紫闇さんに強い力があるのも、澪さんに不思議な力があるのも納得できる……」


蒼輝「アルテミス様って、自分は戦わないのに指摘(してき)は出来るものなのか?」


アルテミス「わ……私だって戦えます……! ただ……身体が弱く、戦わないようにとダイアナと約束をしたので……自衛でなければ戦いません……」


蒼輝「……そうか……。約束したんなら仕方ないよな」


 蒼輝は奈樹を戦わせないと誓った。アルテミスを思うダイアナの気持ちを強く理解できた。

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