4-A -降り立つ刺客-
前話のあらすじ
昼寝をしている蒼輝と、勾玉が居ない間に奈樹と二人になり連れ出し、自らの正体を明かす風魔。かつての奈樹が【蒼の悪魔】と呼ばれる存在だったと予想し戦いを挑む。
しかし奈樹は戦う意思を見せなかったことからか、風魔はアッサリ諦めた。蒼輝だけでなく勾玉と風魔とも話し合えた奈樹は、安堵を覚えていくのであった。
奈樹がノスタルジアへ来て三日目…。朝から4人の子供達が森へ遊びに来た。
ベン以外の3人の興味は奈樹にあり、ワイワイと戯れている。コータはアームを使わず座る奈樹の体に抱きついている。まんじと恋夢は一緒に花を摘んでいる。
奈樹「んー…」
奈樹は考え事をしていた。色々と思うことはあったが、今はこの瞬間にイーバからの追っ手が来ないかが不安だった。
恋夢「はい! 奈樹お姉ちゃんにあげるね!」
摘んだ花を結んで作った冠を渡される。
奈樹「ありがとう、恋夢ちゃん」
奈樹は微笑み、受け取った。
まんじ「それ頭に乗せるんだぜー! 絶対スンゲー似合うって!」
奈樹「こう?」
受け取った花の冠を頭に乗せる。
恋夢「似合ってるよー! お姫様みたーい!」
子供達が大はしゃぎする。蒼輝が奈樹と子供達の所へ来る。
蒼輝「悪いな、奈樹。コイツらの相手、大変だろ?」
奈樹「ううん、大丈夫。楽しいから…ひゃあ!」
奈樹がビクッとして抱きついてるコータを見る。
コータ「んー…」
奈樹「ちょ…ちょっと…!ダメ…!」
コータが奈樹の胸元に顔を埋めている。衣服の上からだが、まるで母の乳をねだるように胸を咥えている。
奈樹「あっ…! コータ君…息が…熱っ…ダメ…!」
まんじ「こら! コータ離れろよー!」
恋夢「奈樹お姉ちゃんダメって言ってるでしょ!」
コータを無理矢理引き剥がす二人。顔を赤くした奈樹が俯いて胸を隠すように押さえてる。
蒼輝「な…奈樹…大丈夫か?」
奈樹「う…うん…へ…平気…。」
顔を上げた奈樹だけでなく、蒼輝の顔も赤くなっていた。
コータ「ご…ごめん…」
恋夢「ダメだよー!コータ君!」
まんじ「蒼輝兄ちゃんのお嫁さんなんだからな!」
蒼輝「おい!?」 奈樹「えぇっ!?」
二人が同時に声を上げる。
まんじ「隠さなくていいっていいって!」
蒼輝「俺達はそんな関係じゃ…なぁ!?」
奈樹「そ…そうよ…まだ出会って三日なんだから…そんな関係あるはず…」
恋夢「じゃあこれから先ずっと一緒にいたら、そういう関係になるの?」
返答に困り二人は沈黙したが、そこへ別の所にいたベンが現れた。
ベン「そういうのは本人達の問題だから聞くなよな」
恋夢「え~だって~」
ベン「ちょっと一緒にいたくらいじゃ恋なんて生まれないだろ。蒼輝兄ちゃんが、『つるぺった』好きならともかく」
奈樹「うっ…つるぺった…」
一層、腕で胸を隠す奈樹。無意識にそこへ視線をやってしまう蒼輝だったが、すぐに視線を逸らす。
恋夢「ベン君! そういうこと言っちゃダメ! 女の子は『でりけーと』なんだから!」
ベン「はいはい…。そんじゃ、そろそろ戻るぞー」
まんじ「え~、もう? 時間経つのスンゲー早く感じるぜー」
蒼輝「もう配達の時間か」
ベン「そういうことなんで。じゃ、行ってくるわ…」
コータ「ばいばい…」
まんじ「またなー!」
恋夢「またね! ばいばい!」
奈樹「ばいばい。またおいでね」
四人が走って行く。嵐のように去っていった後には静けさが漂う。
蒼輝「…奈樹…平気か?」
奈樹「えっ?」
蒼輝「あぁ…その…コータがさ…。」
また顔を真っ赤にする奈樹。蒼輝は しまった、と思いすぐに謝る。
蒼輝「ご、ゴメン! 別に深い意味は…!」
焦ってフォローしようとしたが、奈樹が俯いている。
奈樹「……」
蒼輝のほうを見て微笑む。
奈樹「大丈夫…! 気にしてないから」
蒼輝「そ、そっか。ならいいんだ。そうだ、飲み物取ってくるわ。喉渇いただろ?」
奈樹「うん、ありがとう」
蒼輝が小屋に向かって歩いてゆく。
奈樹「…あの子達…お母さん…いないのかな…」
特に何があるわけでもないが、一点を見つめながら呟いた。
奈樹「私も…お母さんを…知らない…」
ふと奈樹は自分の胸を見る。
奈樹「誰でも大きいほうが…好きなのかな…。はぁ…」
独り言を言っていると木の陰から声がした。
「奈樹」
声のした方を振り返った。立ち上がり見渡す。
誰もいない。しかし、もう一度声がした。
「奈樹」
確かに声がした。奈樹はそちらの方へ向かっていった。
「奈樹」
いくら声のする方へ近付いても、その姿は見えない。だが、奈樹は走って行った。
その声の主を確かめるべく…。