33-A -アーク・オブ・アルテミス-
月夜のノスタルジアで闇討ちを行う男、銀楼。サツキによって撃退されたが、皆は奈樹の家に避難した。
蒼輝、勾玉、風魔、レイ、月花は銀楼を探すことにし、奈樹の家から出たその時……家の前に月と繋がる光の柱があった。その中から現れたのは……女神。
蒼輝「これは一体……」
アルテミス「私は月の女神アルテミス……。アルテミス・エフェソスピカです」
月の形をした浮遊している乗り物に座っている。女神と言うだけあって、そこには神秘さが漂っていた。
その現実とは思えない光景を前にしている蒼輝達。
奈樹「ア……アルテミス……? 女神様……?」
蒼輝「オイオイ、こっちはそれどころじゃないんだ……そういうコスプレとか遊びは別でやってくれ」
闇討ち犯がいる緊急事態時。状況的に構っていられないと言った思いから、全く信じていない蒼輝だった。
勾玉「異世界の者であれば、もはや悪魔だろうと天使だろうと来ても驚かんと思っていたが……神と来たか」
奈樹「けど、雰囲気は出てますね。完成度の高いコスプレだと思います」
勾玉も奈樹も、突然神などと言われても信用できていなかった。
アルテミス「いいえ、私は正真正銘……月からやってきた女神です」
目を閉じ、胸に手を当てて落ち着いた様子で語る。だが、蒼輝達は何かの冗談としか思っていなかった。
蒼輝「月に人がいるわけないしさ、女神がこんな童顔なんて信じられるはずないだろ」
アルテミス「ど……童顔……。気にしていることを……」
ハハハッと笑い、コスプレと決め込んで笑う蒼輝。ションボリする自称女神のアルテミスと名乗った女性。
アルテミス「コホン……。人間に神などと言っても、信用できないのは仕方ありませんね。それでは私が女神だということを正銘をしましょう」
咳払いをして仕切り直し、自身が神であるということを示すと言う。
月花「……」
勾玉「神と言う割に、どうも人間味がありすぎるな」
アルテミス「それは、私が都の民に親しみやすい身近な神であるということです。高貴であることと近寄りがたいというものは隣り合わせですから」
レイ「うん。よく出来た設定だね」
アルテミス「設定じゃないです! 事実です!」
すぐさま反応するアルテミス。どれだけコスプレだと思われていても、女神だということを絶対に譲らなかった。
蒼輝「んー、そういうなりきってるのはいいかも知れんがな……」
アルテミス「今に驚かせてあげましょう。私のことを教えてあげなさい……月光嗔」
アルテミスは自信満々に、銀楼と言う男が探している者の名を言った。
奈樹「月光嗔……!」
皆は息を飲んだ。そして、その者が現れるのを待った。
蒼輝「……」
奈樹「……」
勾玉「……」
風魔「……」
レイ「……」
月花「……」
アルテミス「……」
しかし、誰も出てこなかった。
アルテミス「あっ、あの……」
蒼輝「なんだ、やっぱコスプレじゃねーか……」
蒼輝は呆れていた。焦るアルテミスは、オドオドして少し涙目になっていた。
アルテミス「ど、どうして反応してくれないのですかっ。月光嗔」
月花「俺に言われても困りますよ……」
アルテミスは月花に向かって訴えかける。その様子に蒼輝は呆れ果てていた。
蒼輝「前フリ無しでそういうノリに乗ってくれる奴じゃないから。やっぱりコスプレ……」
アルテミス「ち……違います!」
蒼輝のコスプレ発言に対し、すぐに否定する。焦っている様子が、また神らしくないと思われることをアルテミスは気付いていなかった。
アルテミス「あの……月光嗔…。そろそろとぼけないでください。貴方はそう言った人物では無かったはずです」
奈樹「もしかして…月花さんのことじゃ……?」
月花「えっ?」
アルテミスの視線。話掛ける人物。それは明らかに月花だった。
アルテミス「月花…? まさか……貴方、記憶が無いのでは!?」
月花「そうですけど……もしかして……」
蒼輝「月光嗔ってのが……月花の本当の名前だってのか!?」
アルテミス「そうです。この者は月光嗔。都で月の四使徒という戦闘部隊のリーダーを務めていた者です」
その話を聞いた皆は絶句していた。アルテミスは話を続けた。
アルテミス「三年前……任務中に何らかの事故に巻き込まれたのか、行方不明となっていました。それ以来……月光嗔は月へ戻ることはなかったのです……」
勾玉「それが月花だと言うのか?」
アルテミス「はい。間違いありません」
月花「……」
月花は黙っていた。
突然、目の前に現れた女性が月からやってきた女神だと言い、自分が月光嗔と言う名前で月の四使徒という部隊のリーダーだったという。
普通なら、そんな話を信じられるはずがない。蒼輝達のように、神という時点で冗談か何かと思ってしまうだろう。
だが……月花だけは……アルテミスの言っていることが嘘とは思えていなかった……。
この女性、アルテミスから……どこか懐かしさを感じていたからだった。