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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第四章 銀の鎖と空の鏡
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33-A -アーク・オブ・アルテミス-

 月夜(つきよ)のノスタルジアで闇討(やみう)ちを(おこな)う男、銀楼(ぎんろう)。サツキによって撃退(げきたい)されたが、皆は奈樹(なじゅ)の家に避難(ひなん)した。

 蒼輝(そうき)勾玉(まがたま)風魔(ふうま)、レイ、月花(げっか)は銀楼を探すことにし、奈樹(なじゅ)の家から出たその時……家の前に月と(つな)がる光の柱があった。その中から現れたのは……女神。



蒼輝「これは一体……」


アルテミス「私は月の女神アルテミス……。アルテミス・エフェソスピカです」

挿絵(By みてみん)


 月の形をした浮遊(ふゆう)している乗り物に座っている。女神と言うだけあって、そこには神秘(しんぴ)さが(ただ)っていた。

 その現実とは思えない光景を前にしている蒼輝(そうき)達。


奈樹「ア……アルテミス……? 女神様……?」


蒼輝「オイオイ、こっちはそれどころじゃないんだ……そういうコスプレとか遊びは別でやってくれ」


 闇討ち犯がいる緊急事態(きんきゅうじたい)()。状況的に構っていられないと言った思いから、(まった)く信じていない蒼輝だった。


勾玉「異世界(いせかい)の者であれば、もはや悪魔(あくま)だろうと天使(てんし)だろうと来ても(おどろ)かんと思っていたが……神と来たか」


奈樹「けど、雰囲気(ふんいき)は出てますね。完成度の高いコスプレだと思います」


 勾玉も奈樹も、突然(とつぜん)神などと言われても信用できていなかった。


アルテミス「いいえ、私は正真正銘(しょうしんしょうめい)……月からやってきた女神です」


 目を閉じ、胸に手を当てて落ち着いた様子で語る。だが、蒼輝達は何かの冗談(じょうだん)としか思っていなかった。


蒼輝「月に人がいるわけないしさ、女神がこんな童顔(どうがん)なんて信じられるはずないだろ」


アルテミス「ど……童顔……。気にしていることを……」


 ハハハッと笑い、コスプレと決め込んで笑う蒼輝。ションボリする自称(じしょう)女神のアルテミスと名乗った女性。


アルテミス「コホン……。人間に神などと言っても、信用できないのは仕方ありませんね。それでは私が女神だということを正銘(しょうめい)をしましょう」


 咳払(せきばら)いをして仕切(しき)り直し、自身が神であるということを(しめ)すと言う。


月花「……」


勾玉「神と言う割に、どうも人間味(にんげんみ)がありすぎるな」


アルテミス「それは、私が(みやこ)(たみ)(した)しみやすい身近な神であるということです。高貴(こうき)であることと近寄(ちかよ)りがたいというものは(となり)り合わせですから」


レイ「うん。よく出来た設定だね」


アルテミス「設定じゃないです! 事実です!」


 すぐさま反応するアルテミス。どれだけコスプレだと思われていても、女神だということを絶対に(ゆず)らなかった。


蒼輝「んー、そういうなりきってるのはいいかも知れんがな……」


アルテミス「今に(おどろ)かせてあげましょう。私のことを教えてあげなさい……月光嗔(げっこうしん)


 アルテミスは自信満々に、銀楼と言う男が探している者の名を言った。


奈樹「月光嗔……!」


 皆は息を飲んだ。そして、その者が(あらわ)れるのを待った。


蒼輝「……」


奈樹「……」


勾玉「……」


風魔「……」


レイ「……」


月花「……」


アルテミス「……」


 しかし、誰も出てこなかった。


アルテミス「あっ、あの……」


蒼輝「なんだ、やっぱコスプレじゃねーか……」


 蒼輝は(あき)れていた。(あせ)るアルテミスは、オドオドして少し涙目になっていた。


アルテミス「ど、どうして反応してくれないのですかっ。月光嗔」


月花「俺に言われても困りますよ……」


 アルテミスは月花に向かって(うった)えかける。その様子に蒼輝は(あき)()てていた。


蒼輝「前フリ無しでそういうノリに乗ってくれる奴じゃないから。やっぱりコスプレ……」


アルテミス「ち……違います!」


 蒼輝のコスプレ発言に(たい)し、すぐに否定(ひてい)する。(あせ)っている様子が、また神らしくないと思われることをアルテミスは気付いていなかった。


アルテミス「あの……月光嗔…。そろそろとぼけないでください。貴方はそう言った人物では無かったはずです」


奈樹「もしかして…月花さんのことじゃ……?」


月花「えっ?」


 アルテミスの視線。話掛ける人物。それは明らかに月花だった。


アルテミス「月花…? まさか……貴方、記憶が無いのでは!?」


月花「そうですけど……もしかして……」


蒼輝「月光嗔ってのが……月花の本当の名前だってのか!?」


アルテミス「そうです。この者は月光嗔。都で(つき)四使徒(しと)という戦闘部隊(せんとうぶたい)のリーダーを(つと)めていた者です」


 その話を聞いた皆は絶句(ぜっく)していた。アルテミスは話を続けた。


アルテミス「三年前……任務中(にんむちゅう)に何らかの事故に巻き込まれたのか、行方不明(ゆくえふめい)となっていました。それ以来(いらい)……月光嗔は月へ戻ることはなかったのです……」


勾玉「それが月花だと言うのか?」


アルテミス「はい。間違いありません」


月花「……」


 月花は(だま)っていた。


 突然(とつぜん)、目の前に(あらわ)れた女性が月からやってきた女神だと言い、自分が月光嗔と言う名前で月の四使徒という部隊(ぶたい)のリーダーだったという。

 普通なら、そんな話を信じられるはずがない。蒼輝達のように、神という時点で冗談(じょうだん)か何かと思ってしまうだろう。


 だが……月花だけは……アルテミスの言っていることが(うそ)とは思えていなかった……。


 この女性、アルテミスから……どこか懐かしさを感じていたからだった。

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