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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第四章 銀の鎖と空の鏡
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32-A -銀の三日月-

 触れたものを死に追いやる力を持ち、(みずか)らを死神と言う金色の(ひとみ)を持つ女性、(みお)がノスタルジアに降り立った。ディアナは何故(なぜ)か澪に触れても平気であり、った。ディアナは勝手に澪を引き取って家へ帰っていった。



 そして次の日……ムトの家を(おとず)れた蒼輝(そうき)奈樹(なじゅ)、ディアナとブラック、そして澪。


ムト「ふむ……。そんな能力を持っているとはのう」


 澪の能力を聞いたムト。様々な推測(すいそく)と予測をしているようだが、すぐに答えが出ている様子ではなかった。


ディアナ「ムトっちゃーん。どうにかなんないのー?」


ムト「そうは言われてもの。どういった力か調べるにも、その方法を考えるところから始めることになるじゃろうからの」


蒼輝「そうだよな……ディアナとしか触れ合えないなら調べるにも調べられないか……。(むし)ろ、澪の能力がディアナに効かないのを調べるとか?」


ムト「それをするにも澪を調べる必要があるんじゃがの。澪がどういった力を持ち、ディアナにどういった抵抗力があるのか調べなければ意味がない」


 名案だと思った蒼輝だったが、即座に却下されてガッカリとした。


奈樹「とりあえずは案が見つかるまで、このまま生活するしかないみたいですね」


澪「……」


澪は何も言わず、何もせず大人しく立っていた。


ムト「長く放っておいてもロクなことにはならんのはわかっておる。じっくり対処法を考えるとするかの」


ディアナ「しょうがないねー。けど早くしてね! 澪ちゃんが触っちゃったイス壊れちゃったんだから!」


蒼輝「マジか。それは大変だなぁ」


ディアナ「そうでしょ!? でしょー!? それと澪ちゃんったら、すっごく大食いで冷蔵庫カラっぽになっちゃった! だから早くしてね!」


 澪は申し訳なさそうに、()つ照れ臭そうにしていた。


蒼輝「大人しいのに大食いかぁ……って、その対処法(たいしょほう)をムトに要求するのはおかしいだろ!」

 

ディアナ「あれ? あれれ? そっかー。ごめんね! ムトっちゃん!」


奈樹「……」


澪「……? なにか……?」


奈樹「……いえ……何も……」


 奈樹は気が付けば、澪の持つ颯紗(さらさ)芙蓉(ふよう)以上に豊満(ほうまん)な部分を見ていた。何をどれだけ食べたらこうなるのか……と、考えていた。


ムト「そうじゃ、頼まれておった物が完成したんじゃ。サツキ」


サツキ「はい、ムト様」


 サツキは戸棚(とだな)を開く。その中から何かを取り出す。歩く度にガチャガチャとなる大きな袋を持ってくる。


奈樹「これは……?」


蒼輝「あぁ、俺が頼んどいたんだ」


 中身を取り出すと、そこにはポケットに入る程度の小さな機械。


ムト「伝信機(でんしんき)。簡単に言えば通話のできる無線機(むせんき)じゃ。各機にナンバーが割り振られており、一斉通信、複数通信、個別通信と音声会話が可能になっておる」


 技術の発達(はったつ)した都市では流通しつつあるもの。いわゆる携帯(けいたい)できる電話(でんわ)のようなもの。ノスタルジア全域(ぜんいき)で、島の(はし)から端までなら通信が可能な無線機。


蒼輝「便利そうだろ? いつでも連絡してきていいからな」


 奈樹に向かって言う蒼輝。『連絡してきていい』ではなく、『連絡してきてほしい』という意味であった。


奈樹「うーん……でも家近いから、あまり使わない気がする…」


 ガックシと肩を下げ、見るからにションボリする蒼輝だった。それを見た奈樹は、言葉の意味に気付いた。


奈樹「家に帰ったら、試しに連絡入れていい? ちゃんと動作してるか確認しておきたいから」


蒼輝「おう!」


 (うれ)しそうに返事をする。奈樹もその様子を見て微笑(ほほえ)んだ。


ディアナ「はい、ブラック!」


 伝信機にストラップを通し、ブラックの首に引っ掛けるディアナ。


蒼輝「いやいや、必要ねーだろ! 多分!」


ディアナ「えーっ!? なんでー!?」


 喋れないから。という根本的(こんぽんてき)な理由を言うところだったが、奈樹はディアナの納得しそうな理由を言った。


奈樹「ディアナさんとブラックは一心同体(いっしんどうた)みたいなものですから」


ディアナ「そっか! そうだね!」


 納得(なっとく)して、ブラックの首から取る。


ディアナ「じゃあ、これは(みお)ちゃんの分! 自分で持っても大丈夫になったら渡すね!」


澪「ありがとう…」


 ディアナはニッコリと笑った。自身の能力のせいか、いつも不安そうな表情を浮かべる澪。だが、ディアナの笑顔を見ると元気になった。


蒼輝「……」


 蒼輝は、ノスタルジアで女神様と呼ばれていたカノンのことを思い出していた。ディアナの笑顔はカノンを彷彿(ほうふつ)とさせる。笑顔を向けられた者の不安を取り除き、(しあわ)せにする気さえしてしまう。


奈樹「それじゃあ、伝信機を島の皆に(くば)らないと」


ディアナ「一緒に行こっ! 澪ちゃん! 自己紹介していこう!」


蒼輝「そうだな。ディアナと一緒なら、どこかに触れる心配もないだろうしな」


 こうして、蒼輝達は伝信機を配るためムトの家を出た。澪は何処かに手を触れてしまわないように、ディアナと手を繋いでいた。



 雑談しながら家を渡り歩いた結果、夕方を過ぎてしまった。しかし季節のせいか、まだ少し明るい。


ディアナ「疲れたー! 今日はグッスリ眠れそう!」


蒼輝「いつも寝付け悪いのか?」


ディアナ「ううん! すぐに眠くなっちゃって、普通に寝てるよー!」


蒼輝「寝てるのかよ!」


 いつものディアナ(ぶし)にズッコケる蒼輝だった。だが、なんだかんだでこのやりとりが好きだった。こんな日々が、いつまでも続いて欲しいと願うばかりであった。

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