表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第四章 銀の鎖と空の鏡
133/176

第四章 銀の鎖と空の鏡 プロローグ

 チリン……チリン……。



 薄暗(うすぐら)夜道(よみち)灰色(はいいろ)砂丘(さきゅう)をたった一人で歩き続ける。歩く度に鳴り(ひび)く鈴の()。この鈴が自分の居場所を知らせる音色(ねいろ)。道に迷った時、場所を知らせる音色。


 ずっとずっと歩いた。ずっとずっと探し続ける。

 何処に行っちゃったのかわからないけど、きっと見つけてあげる。

 何処に行っちゃったのかわからないけど、きっと見つけてくれる。

 この鈴の音を(ひび)かせる。


 その(さび)しさでいっぱいのその心を、少しでも()めてあげる。

 (ふさ)がらない心の隙間(すきま)()めてあげるから。

 だから一緒に居よう。また一緒に居たいよ……。

 

 ここが何処かわからないけど歩いた。いつか辿り着くと信じて……どこまでも歩いた……。






 浮遊要塞研究所(ふゆうようさいけんきゅうじょ)イーバ内部。


 薄暗(うすぐら)い一室に一人の兵士が入る。その部屋に居たのはイーバ幹部(かんぶ)のダークと葛葉(くずのは) 陽子(ようこ)


兵士「ダーク様、例の者の投下(とうか)準備が完了しました」


ダーク「ククク……それでは行くといいカナ……『死神(しにがみ)』」


 ダークの前に立つ、黒く長い髪に金色の瞳をした『死神』と呼ばれた少女は、兵士の後ろを歩いて行った。


陽子「はぁ……」


 陽子は深い溜息(ためいき)をついた。


ダーク「クク………お(つか)れみたいカナ……?」


陽子「当たり前よ……この二か月で何回、骨を()られたと思ってるの……? ようやく開放されてホッとしたわ……」


ダーク「今回の実験で155箇所(かしょ)…242回カナ……」


 数えてるなんて悪趣味(あくしゅみ)……などと思う陽子。しかし、実験のデータを取ることは研究者にとっては当然のことである。


ダーク「このデータが収集(しゅうしゅう)できたのも、陽子の持つ超再生能力(ちょうさいせいのうりょく)のお(かげ)カナ……ククク……」


陽子「まさかE兵器(クリミナル)に改造されていないのに、あんなチカラを持つ者がいるなんて……」


ダーク「異世界(いせかい)


陽子「……?」


 ダークの一言が理解できなかった。


ダーク「その手に触れた生物を死に追いやる死神の力……と言ったところカナ。まるで異世界の力……素晴らしいデータだったカナ……」


陽子「その異世界の力だか、死神だかの力の人体実験(じんたいじっけん)なんて(そん)役回(やくまわ)りだったわ……」


 これは二か月前、アリスがノスタルジアで戦闘を行うという命令違反(めいれいいはん)を、上官に黙秘(もくひ)するという約束のためにしたことだった。


陽子「それで……その死神の処分(しょぶん)はどうするの? 何処(どこ)かへ連れて行ったみたいだけど」


ダーク「元々は吾輩(わがはい)が拾ってきたモノ……。地上に帰りたそうにしていたから返してあげるカナ……。せっかくだからノスタルジアに(はな)っておく……それで面白いことになるといいカナ……ククク……」


 ダークは気味の悪い笑いが部屋に(ひび)いた。陽子はもう一つ、気になっていたことを質問した。


陽子「近頃(ちかごろ)、貴方の部屋に見知らぬ男が出入りしていたみたいだけど……アレは誰?」


ダーク「ククク……異世界の男……」


陽子「……?」


 意味が解らない。といった表情の陽子。ダークは笑うだけで、それ以上答えようとはしなかった。


ダーク「ククク……」


 このまま(だま)っているつもりと言うことを(さっ)した陽子は、ダークとの約束を終えたので足早(あしばや)に部屋を出た。


ダーク「これで幹部(かんぶ)全員のデータも(あつ)め終えた……。そろそろあの兵器のテストもしなければいけないカナ……ククク……」


 (ひび)く笑い声。その笑いの意図(いと)はノスタルジアに災厄(さいやく)をもたらすことになるのか……。




 光芒結社(こうぼうけっしゃ)


レイ「……」


 真っ白な部屋。光芒結社内のレイの個室。白いアイマスクをして、(うつむ)いてソファーに座るレイ・ハーレット。

 その(となり)には光芒結社No.2の実力者である、ミネルヴァ・ストリクスが居た。


挿絵(By みてみん)

ミネルヴァ「短期間で二度も、『あの力』を使ったのだから。当然の結果よ」


レイ「……」


ミネルヴァ「完全無欠(かんぜんむけつ)のレイ……その名を(ささ)えている力は絶大(ぜつだい)。使いすぎると、その反動は大きい。わかっているでしょう?」


レイ「あぁ……。けど、仕方ない場面だった。あの悪魔相手に勝利(しょうり)するには使うしかなかった。二度目は……油断していたある状態ならイーバ幹部を仕留(しと)められると思ったんだ」


ミネルヴァ「想定していた以上に耐久力があったということね」


レイ「イーバの技術は予想を上回っていた……。もしかしたら、僕らの想定を(はる)かに上回っているかも知れない……」


ミネルヴァ「レイは名実(めいじつ)ともに光芒結社No.1。貴方が簡単に倒れてしまったら結社の名に傷が付くわ」


レイ「……そうなった場合……君が後を()いでくれればいい……。君も十分な力量(りきりょう)器量(きりょう)を持ち合わせている」


ミネルヴァ「何を言ってるの……? レイらしくない……。貴方はまだ、倒れることはできない。ついに探している人が『見つかったかも知れないのだから』」


レイ「……! それは本当かい?」


ミネルヴァ「まだ(さが)かではないけど……。目撃情報と予測データは酷似(こくじ)している。貴方の探している人物にね」


レイ「……」


 レイは顔を上げた。アイマスクを外し、ミネルヴァを見た。


ミネルヴァ「だから無茶はしないで。ずっと探し続けて来た対象なんだから」


レイ「あぁ……。ミネルヴァ……君も気をつけるんだよ。もしも僕が狙いなら、結社No.2である君が狙われる可能性も少なくは……」


ミネルヴァ「心配いらないわ。光の正義の(もと)に、驚異(きょうい)(くっ)したりはしない」


レイ「そうだね……。僕も……まだ倒れるわけにはいかない……」


 次の日……レイはノスタルジアへ戻った。レイは考えていた。ノスタルジアは何かを()きつける力を持っていると。奈樹(なじゅ)多種(たしゅ)の属性を使いこなす不可思議(ふかしぎ)な力、特殊な力を持つ一族、そしてイーバの兵器が集まる。それだけでなく、悪魔さえも呼び寄せてしまった。


 これらは偶然(ぐうぜん)とは思えなかった。何かの運命が、全てを集約(しゅうやく)させているような気がしていた。

 だからこそ、レイはノスタルジアへ向かう。


 

 次はどんな出来事が起こるのか、楽しみに思う気持ちがあった。



 そして……自身の目的対象である者が、いずれ島に(おとず)れると感じていたから……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ