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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第三章 冥幽との邂逅
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29-A -陰と陽-

 遠く離れたグリーミア大陸から、八束水(やつかみ) 氷雨(ひさめ)という少女を連れてノスタルジアへとやってきた刃塚(やつか) 氷牙(ひょうが)とシアン。

 氷雨は探し人が居た。その人物とは月花(げっか)だった。月花と氷雨は八束水家で育てられた幼馴染(おさななじみ)らしく、当時は身の回りの世話をしていたという。

 氷牙とシアンはノスタルジアの森の中に家を建て、月花と氷雨、そして居合わせた恋夢(こゆめ)と一緒に住むことが決まった。


 ……一方その頃。蒼輝(そうき)奈樹(なじゅ)、マテリア、颯紗(さらさ)の前に……正体を明かしていないイーバ幹部の葛葉(くずのは) 陽子(ようこ)が立っていた…。



奈樹「ん……」


颯紗「よかった…目を覚まして」


奈樹「私……。そうだ……恋夢ちゃんに(おどろ)かされて…」


マテリア「すぐに目が覚めて良かったです」


 奈樹は陽子の姿に気が付いた。陽の光で(かがや)いているように見える金髪、風に揺れるポニーテール。片目が隠れ気味で、その影響か少しミステリアスな雰囲気がする印象を受けた。


奈樹「あっ…」


 奈樹が目覚めるまで、皆で雑談(ざつだん)をしていた。内容は氷牙達とたまたま遭遇(そうぐう)して一緒に行動していたこと。意識が戻ったので、自己紹介をすることにした。蒼輝、マテリア、颯紗が挨拶(あいさつ)をした。そして奈樹も自己紹介した。


奈樹「私は金雀児(えにしだ) 奈樹です。よろしくお願いします」


陽子「よろしくね。私は葛葉(くずのは) 陽子(ようこ)太陽(たいよう)(よう)に子供の()で陽子よ」


蒼輝「ほほう……陽子って姉妹がいるのか?」


陽子「いえ…姉妹は居ないけど…どうして?」

 

蒼輝「名前が陽子だから、妹に陰子(いんこ)とかいると思って…」


颯紗「そんな安直な…名前に銀が入っているとしても、兄弟に金がいるなんてことはないと思う…」


蒼輝「そ、それもそうか」


マテリア「インコだと鳥の名前になるです」


 蒼輝と颯紗のやり取りと、マテリアの発言に笑う陽子。


陽子「クスッ…。そうね…けど陰子(いんこ)って悪者(わるもの)の名前に感じるわ。陰湿(いんしつ)なイメージがする」


蒼輝「人の心には、(いん)(よう)…影と光がある。仮に陰湿なイメージがしても、きっと明るい心を持ってたりするものだぜ」


陽子「そう…。だったら……陽である私の心には影があるってこと?」


蒼輝「あぁっ、いやいや、そういう意味で言ったんじゃなくて…」


 機嫌を(そこ)ねてしまったと思って、急いで(あやま)る蒼輝。


陽子「気にしてないから。ところで…どうして車椅子に座っているのかしら?」


奈樹「ちょっと先日から風邪(かぜ)で…随分(ずいぶん)と良くなりましたけど」


陽子「風邪…。早く治るといいわね。出来るだけ早く、万全に」


奈樹「はい、もう二日ほどあれば完治すると思います」


 奈樹は心配掛けさせまいと、(やわ)らかく微笑(ほほえ)んだ。


陽子「そう…。それじゃ…観光は終わりにして、そろそろ帰ろうかしら」


蒼輝「帰るのか? もっとゆっくりしていっていいんだぜ」


マテリア「また会えるですか?」


陽子「えぇ、会えるわ。近い内に…」


颯紗「あっ…皆で見送りに……」


陽子「ここで構わないわ。それと…少し離れておいて」


 陽子は静止するように、手を伸ばした。そのまま距離を空けていく。


蒼輝「離れる?」


陽子「えぇ。近いと(まぶ)しいから」


奈樹「眩しい…? 一体どういう…」


陽子「金雀児 奈樹と、そのお仲間さん…また会いましょう。恐らくは二日後…『次は、敵同士として』」


 その言葉に(おどろ)く蒼輝達。陽子の身体が光の粒子(りゅうし)(つつ)まれてゆく。


陽子「粒子帰還(リターン)


 光と共に、空へと飛んでゆく! 蒼輝達は、その様子を黙って、何も言えずに見ていた。



蒼輝「……」


マテリア「……」


颯紗「き…消えちゃった…どういうこと…?」


奈樹「あれは…イーバの…帰還(きかん)技術…」


颯紗「イー…バ? 陽子さんはイーバの人だったということ……?」


奈樹「それだけじゃない…『次は敵同士』と言った…。つまり…イーバのE兵器(クリミナル)…もしくは…」


マテリア「幹部…」


 皆は黙った。今、起きた出来事を脳内で整理していた。


蒼輝「二日後…二日後にイーバがノスタルジアへ来るってことか!?」


奈樹「皆に伝えなきゃ…!」


颯紗「……」


 蒼輝達は急いで蒼の館へと移動し、仲間達を集めて集合することにした。

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