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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第一章 ノスタルジア
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3-B -風の落とし子-

 蒼輝(そうき)勾玉(まがたま)がぶつかり合った同日。弁当を届けてくれたE生物(スティグマ)の子供達と打ち解ける奈樹。昼食後、蒼輝は眠ってしまい、風魔と奈樹は二人で散歩に出た。




 一本だけ大きな木がそびえ立つ丘。島のほぼ真ん中にある為、この場所から色々な場所が見渡せる。


風魔「あそこがさっきまで居た森だよ」


 風魔が指をさす。そのまま商店街の場所も教える。何故かは説明しなかったが、奈樹が一人で行かないように忠告(ちゅうこく)する。


奈樹「あそこは…?」


風魔「あれは公園。その(となり)(がけ)があって、その下は浜辺だね。あぁ、崖には手すりがあるから安心して。まだ春だし、もうちょっと暑くなったら浜辺で泳いでもいいんじゃない?」


 今まで森の中にしかいなかった奈樹は、見晴らしの良い風景に見とれている。


風魔「ねぇ…奈樹さん…」


奈樹「はい?」


 奈樹が風魔の方を振り向く。しかしそこに風魔はいない。


奈樹「えっ…? …!」


 後ろから肩に手を置かれる。


風魔「(スキ)だらけだね…それでも戦闘用のE兵器(クリミナル)?」


 奈樹は硬直(こうちょく)している。


風魔「戦闘用なら察知(さっち)能力くらいあるはずなんだけどな…。で、奈樹さんは創造(アドベント)(タイプ)? それとも改造(オルタ)(タイプ)?」


奈樹「…!」


風魔「せっかく『誰もいなくて』静かな場所なんだからさ。教えてくれてもいいんじゃない?」


 肩に乗せていた手がゆっくり動き、指が首筋に触れる。触れられた感触と『誰もいない』と言う言葉に奈樹はビクッと反応し、後ろを向けずに(わず)かに(ふる)え始める。


奈樹「目的は…なんですか…?」


風魔「俺ね…君のこと…昔から知ってたよ」


奈樹「……!?」


風魔「金雀児(えにしだ)博士が娘だか(まご)だかのように可愛(かわい)がっているE兵器(クリミナル)がいる…。E生物(スティグマ)落ちになって廃棄(はいき)寸前だった所を博士が拾ったとかね。意外な出来事だったせいで、当時のイーバでは有名な話だったからね。下の名前しか知らなかったから、最初は君のことって気付かなかったけど」


奈樹「…あ…あなたは…一体…何を知って…」


風魔「今…イーバで何が起きているのか…。一体何があってこの島へ逃げてきたのか…。色々興味あってね…そういうのも聞きたいんだよね」


奈樹「貴方は…貴方は何者なんですか…!?」


風魔「ここまで言ってても気付かない?」


 指を銃のように二本指を立て、奈樹の首筋に触れる。そして耳元で(ささや)いた。



風魔「君と同じ『E兵器(クリミナル)』だよ。」

挿絵(By みてみん)


 ガサガサッ。木の枝が風で大きく揺れた。奈樹の心の動揺と同調するかのように。




「おい、蒼輝。」


 勾玉が寝ている蒼輝を起こす。


蒼輝「ん…?あっ…勾玉…戻ってたのか…! さっきはスマン! 結構マジで(なぐ)って…」


勾玉「構わん…。泉で殴られた箇所(かしょ)と…頭も冷やしてきた…。俺こそ冷静になれなくて、すまなかった」


 蒼輝と勾玉はお互いを理解し合うように笑う。


蒼輝「そうだ。届けてもらったからさ、弁当あるから食えよ?」


勾玉「あぁ…それより…風魔と奈樹はどこへ行った?」


蒼輝「え?」


 小屋の中を見渡すが、二人の姿はない。


蒼輝「飯食ったら寝ちまったからなぁ…。風魔が一緒だし安心だと思ってな…あっ、もしかしたら二人で散歩でも行ってるんじゃないか?」


 寝起きな蒼輝は伸びをして、頭を()きながら言った。


勾玉「まぁ…風魔が一緒なら心配はないだろう」


蒼輝「勾玉が弁当食い終わったら、二人に合流しに行くか」


 そう言ってホームでのんびりする蒼輝と勾玉。



 一方その頃、丘の上では強い風が吹いていた…。

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