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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第三章 冥幽との邂逅
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27-B -暗躍の交錯-

 魔王アスモデスと対峙(たいじ)した蒼輝(そうき)奈樹(なじゅ)の二人。

 アスモデスに攻撃を仕掛けるが、風魔に(はば)まれた。そして、風魔は詠唱(えいしょう)して出した風旋斧(ふうせんぷ)トルネドで攻撃しようとした……その時だった。


 ドゴオォォォォォォォォォン!


 突如(とつじょ)轟音(ごうおん)(とも)に壁を()(やぶ)り、巨大な(おおかみ)が風を(まち)って室内に侵入(しんにゅう)してきた! 突き破った壁の破片(はへん)を巻き上げ、吹き飛ばした!


奈樹「この力は…!」


 奈樹は狼と目が合った。奈樹はこの狼の持つ力が何によるものか理解した。その大きな身体の全身を見渡(みわた)した。その背には二人の男女が乗っていた。

挿絵(By みてみん)


勾玉「遅くなったな」


奈樹「マテリア! 勾玉さん!」


蒼輝「やっと着いたのか…えらく遅かったじゃねーか」


マテリア「私達は…牢屋(ろうや)(とら)らえられていたです…」


勾玉「その通りだ…そこにいる…風魔の手によって…!」


奈樹「…!」


 風魔は勾玉とマテリアを見て、ニヤリと笑っている。


アスモデス「…この力…幻召獣(げんしょうじゅう)か…? なぜ冥幽界(めいゆうかい)に…!?」


 マテリア「風迅狼(ふうじんろう) ハリケウルフ…私の召喚術(しょうかんじゅつ)です」


アスモデス「下がっていろ、風魔」


 風魔はフッと風旋斧(ふうせんぷ)トルネドを消滅(しょうめつ)させ、数歩(すうほ)後ろへ下がる。


アスモデス「アスモデス四死公(ししこう)(たお)したことを賞賛(しょうさん)する。そして…感謝(かんしゃ)せねばなるまい」


蒼輝「感謝…?」


アスモデス「その通り…四死公は…」


 広げた手を上に(かざ)す。 蒼輝達を(へだ)てて分厚い咎力(きゅうりょく)の壁が出現する! その手から、四つの光線(こうせん)(はな)たれ、床を貫通して下の階へ向かって()びてゆく!


奈樹「…! なに…!?」


蒼輝「これは…!」


アスモデス「わざわざ集めてやった四死公。それは()が力を吸収(きゅうしゅう)するためだけに存在している! 感謝するぞ! これで私は完全なる力を持つ魔王となれる!」


マテリア「させません!」


 幻召獣、風迅狼(ふうじんろう)ハリケウルフが(いきお)いよく壁に体当たりをする! が、壁にビリビリと電流が走る! マテリアは(はじ)き飛ばされ、落下する! 


マテリア「きゃああああぁぁ!」


 蒼輝と奈樹が落下地点で待機するが、落下中のマテリアを勾玉が(かか)えて着地する! 風迅狼ハリケウルフは消滅する! 


マテリア「そんな…!」


アスモデス「この障壁は絶対に破れん……。何故(なぜ)なら妨害(ぼうがい)されることを絶対に阻止(そし)するため、余の力の半分を消費して作り出した! その程度(ていど)で崩せると思うな…!」


奈樹「このままじゃ…!」


蒼輝「四死公の(すべ)ての力が…アスモデスに集まるってのかよ…!」


 伸びていた光線が、収縮(しゅうしゅく)してアスモデスの手に戻ってくる! そして、その光線の先端(せんたん)に三つの(てのひら)サイズほどの大きさで、火の玉のような(かたまり)。玉と言ったところだろう。

 その塊は、アスモデス四死公の咎力を含めた力そのものだった。アスモデスは階下(かいか)にいる四死公の魂を()き取り、その力を吸収(きゅうしゅう)しようとしていた。


アスモデス「む…三体分か…まぁ良かろう…全て余の力となるがいい!」


 伸びたゴムが(ちぢ)むように(いきお)いよく、アスモデスの手元に吸い寄せられる! 全ての魂がアスモデスの手に収まる…。



 その直前に…三つの玉は消え去った!



アスモデス「なに…!?」


 思いがけない事態(じたい)。その動揺(どうよう)から、手にしていた咎力(きゅうりょく)障壁(しょうへき)解除(かいじょ)される。周りを見渡(みわた)したアスモデスが10メートルほど先で目にしたもの…それは三つの四死公の(たましい)


勾玉「フッ…」


蒼輝「へへっ…」


 それを手にして背を向けて立っている…風魔の姿だった。


アスモデス「風魔…!」


風魔「やっぱりね…そんなカラクリだと思ってたよ…」


マテリア「風魔…さん…!?」


風魔「紫闇が力を(うば)われたと言っていた時点で、アスモデスが他の悪魔を吸収して強くなるタイプ。つまり……四死公さえも(みずか)らの力にしてしまう気だと判断できた」


アスモデス「ほう……余を裏切(うらぎ)るのか…風魔…」


風魔「裏切る…? 俺は最初からアンタに(したが)ったつもりはない。最初から四死公の力を吸収させることだけは絶対に阻止する。最初から、今の今までそれだけが俺の目的さ」


奈樹「風魔さん…そこまで考えて…?」


蒼輝「奈樹。本気にしてたのナイスだったぜ」


奈樹「えっ? 蒼輝は知ってたの…? 風魔さんの目的」


蒼輝「いや、知らないぜ。 けど、風魔が俺達を裏切るはず無いからな」


風魔「悪いね、ナッちゃん。言った通りでしょ? 俺は正気だって。つまり…敵を(だま)すにはまず味方から…そういうコトさ」


奈樹「迂闊(うかつ)……」


 これで何度、風魔に(だま)されたか解らなかった。今までは冗談(じょうだん)で済んでいたが、今回は冗談でも作戦でも無いと本気で思っていた。


勾玉「俺と蒼輝は騙せていなかったがな…。(まった)く…わざわざ牢に()らえられて、(さけ)ぶ真似をするほど暑苦しい演技までしてやったんだ…」


マテリア「…気付かなかったです…」


 風魔が手の平に魂を維持(いじ)したまま、蒼輝達の所へ宙返(ちゅうがえ)りをしながらジャンプし、着地する。


アスモデス「おのれ…おのれ…! 余を出し抜くとは…許さんぞ…!」


 城全体が揺れるほどの地震が起こる。アスモデスの怒りが大地を(ふる)わせていた。

 

風魔「力を吸収していないのに、まだ余力(よりょく)があるか…マテリアちゃん、これを下の階に…頼んだよ」


 浮いた四死公の三つの魂を、マテリアに渡す。両手で(すく)うように持ち、呆然(ぼうぜん)とする。


マテリア「ど…どうすれば…?」


風魔「行けばわかるよ」


勾玉「マテリア、頼む」


奈樹「ここは私達に(まか)せて」


 マテリアは(うなず)いて、走って部屋を出て行った。蒼輝、奈樹、勾玉、風魔が並んで、アスモデスに向き合った。


風魔「風旋斧トルネド…」


蒼輝「陰剣(おんけん)ブレイド・シャドウ!」


 蒼輝と風魔の二人は武器を出現させた。


アスモデス「その程度では…余には(およ)ばん…。散れ!」


 アスモデスが目を見開く!


奈樹「きゃああぁぁ!」


 奈樹が突然、眼力(がんりき)から(はっ)せられた衝撃(しょうげき)で吹き飛んで倒れる!


蒼輝「奈樹!」


 瞬時に移動していた風魔が、アスモデスの後方の空中に(あらわ)れ、背後から斧を振り下ろす!


アスモデス「来ると思っていた。もう理解したぞ。そういう者ということをな」


風魔「しまっ…!」


 アスモデスは斧を右手で受け止める。そして、左手を風魔へと向ける。


アスモデス「闇術・冥弾黒衝波(めいだんこくしょうは)


 無数の弾が指から発射され、風魔の全身にヒットする!


風魔「ぐわああぁぁぁぁ!」


 そのまま勢いよく天井に叩きつけられる! そのまま埋まり、張り付いたまま落ちてこない。


奈樹「風魔さん…!」


アスモデス「余を騙した罰だ…今の力では、この程度のダメージしか与えられんがな…」


勾玉「紅蓮掌(ぐれんしょう)蛇炎(じゃえん)痛打拳(つうだけん)!」


 頭上を見上げていたアスモデス。その(ふところ)へ潜り込んでいた勾玉。炎を纏った拳。高速で10発のパンチを叩き込み、最後に強力な一撃を腹部に打ち込む!


アスモデス「ぐっ……! おのれ…その程度…!」


 反撃に出たアスモデスは、腕を振り下ろす! しかし、光の壁が出現してその腕は勾玉に当たる直前で止まる!


奈樹「ライト・シールド…!」


勾玉「炎獄掌(えんごくしょう)蛇紅(じゃこう)灰燼拳(かいじんけん)!」


 炎を膨張(ぼうちょう)させ、強力な一撃を腹部に打ち込む! 勾玉の拳から出た炎が、アスモデスの腹部から背を貫通する!


アスモデス「…! 舐めるな!」


勾玉「ぐっ…!」


 殴り飛ばされる勾玉! 20メートルほどある扉の近くまで吹き飛ばされ、倒れる!


蒼輝「陰式(おんしき)・日没落とし」


アスモデス「…! させるか…」


 高く跳んで、剣を振り下ろそうとする蒼輝。アスモデスは手を向けて受け止めようとする。


奈樹「闇術…ダーク・ミラージュ…」


 落下していた蒼輝が奈樹の闇術によって黒い(きり)(つつ)まれる! 霧はアスモデスの後方へ移動し、蒼輝が落下を開始してブレイド・シャドウで背を斬りつける!


蒼輝「陰式・黎明(れいめい)返し」


奈樹「アクア・スプラッシュ!」


勾玉「双蛇炎!」


 逆手に剣を持ち替え、切り上げる蒼輝。そして奈樹は近距離から水圧波(すいあつは)、勾玉は接近しながら蛇となって襲いかかる炎で攻撃した。三人で(たた)()ける!


アスモデス「舐めるな…この程度!」


 三人の攻撃を全て咎力で受け止め、反撃に出て左羽で勾玉、右羽で奈樹、頭で蒼輝に突進する! アスモデスは急停止し、三人は吹き飛んでゴロゴロと転がる。


アスモデス「ハァ…ハァ…余が力を吸収していれば…一撃で倒せたものを…」


蒼輝「…まだ余力あるのかよ…」


勾玉「くっ…」


奈樹「……」


 このままではアスモデスを倒すことは出来ない……。そう考えた奈樹は、危険な()けに出ようとしていた……。

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