3-A -風の落とし子-
前回のあらすじ
過去に飛竜 勾玉の妹を殺害した者は金雀児 奈樹と判明した。影葉 蒼輝は勾玉を止め、奈樹を守るために勾玉と対決した。
その闘いの決着を見た風魔は奈樹に対して行動を起こそうと考えるのであった…。
ベン「はい、これお釣りね」
蒼輝「ほい、ちょうどだな。サンキュー」
ベン「相変わらずお釣り数えるの早いな」
蒼輝「へへっ、これだけは得意なんだ」
まんじ「うわー! スンゲーカワイイ!」
恋夢「ねぇねぇ! お姉ちゃん名前なんていうの!?」
コータ「遊んで…遊んで…」
奈樹「ちょ…ちょっと…」
蒼輝と勾玉がぶつかりあった同日の昼、ホームに四人の子供達が来た。ベンは蒼輝に言われた通り小屋の中に弁当を置きに行った。他の三人は外で奈樹を囲うようにピョンピョン跳んで脚や手にしがみついている。
風魔「人気者だねー」
奈樹「あっ…あの…一度離れて…ッ! いっ…イタイイタイ!」
蒼輝「おい! コータ! 絞めすぎだ!」
コータ「ごっ…ごめん…」
コータが奈樹の脚を離し、半歩ほど後ろへ下がる。恋夢が奈樹を座らせる。奈樹は自分の脚をさすっている。
奈樹「大丈夫よ。気にしないで」
奈樹はコータに微笑んだ。子供達は奈樹と自己紹介し合う。少しすると、また甘えて子供達は抱きつき始めた。するとベンの声が聞こえた。
ベン「おい、帰るぞ」
恋夢「えぇ~!? もう!?」
弁当を置いてきて小屋から出てきたベンが言った。座る奈樹の太ももの上に座りながら、恋夢は残念そうに言う。
ベン「次の配達があるからな。ほら手伝え」
恋夢「奈樹お姉ちゃん! あっちの子がベン君ね!」
まんじ「なぁベン! スンゲーカワイイだろ!」
奈樹「もう、からかわないの! えっと、よろしくね。ベン君」
ベン「よろしく。じゃあ、行くぞ」
恋夢「またね!」
恋夢がフワッと浮き上がり、まんじとコータも一言いって、三人はさっさと去っていくベンに付いていく。奈樹が座ったまま、去っていた子供達を見ている。
蒼輝「嵐みたいな奴らだろ? また今度遊んでやってくれよ。」
奈樹の方へ歩きながら言った。
奈樹「良い子達だった…。脚…ちょっと痛かったけど」
風魔「勾玉はまだ戻らないかな」
蒼輝「とりあえず先に食っちまおうぜ」
昼食。弁当屋の作りたては温かくて美味しかった。蒼輝は食べたら眠たくなったのか昼寝を始めてしまった。
風魔「今朝あんなことがあったし疲れたんだろうね」
奈樹「……」
風魔はマフラーの先端をコネコネしながら言った。奈樹は申し訳なさそうにしている。
風魔「…ねぇ、奈樹さん。散歩でも行かない?」
奈樹「二人で…ですか?」
奈樹は少し迷った。風魔のことが嫌いなわけではない。だが、掴み所のない雰囲気が少し苦手だった。
風魔「どこか行きたい所とかあるなら案内するよ? ダメな場所はダメって言うけどね」
奈樹「えっと…それじゃあ…」
断るのも悪いので、気になっていた場所を言った。
前を歩く風魔。後ろを歩く奈樹。思惑通りに物事が進んでいることに、ニヤリと笑う風魔だった。