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蒼咎のシックザール  作者: ZERO-HAZY
第三章 冥幽との邂逅
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25-B -冥幽の世界-

 次の日……光芒(こうぼう)結社の用事を済ませたレイが島へ戻ってきた。事情(じじょう)(すべ)て説明した。紫闇(しおん)のこと、悪魔が(おとず)れたことや、紫闇を連れ戻しに冥幽界(めいゆううかい)へ行くということを……。


 そして数日が経過した…。蒼輝(そうき)奈樹(なじゅ)、マテリア、颯紗(さらさ)商店街(しょうてんがい)喫茶店(きっさてん)に来ていた。


マテリア「ふぅ…ここのミルクティーは絶品(ぜっぴん)です」


颯紗「奈樹ってケーキ好きだったの? 知らなかった…」


奈樹「小さい頃に食べてから、(いちご)のショートケーキが好物なの」


蒼輝「へー、俺は甘い物だったらなんでもイケルな」


奈樹「(から)い物でも何でも食べてるイメージあるけど…」


マテリア「ケーキは太りそうで食べられないです…」


 平和そのものといった雰囲気(ふんいき)雑談(ざつだん)していた。冥幽界への門を無事に開けるか…それすら判明していなかったが、ここ数日ずっと修行をしていた。それは悪魔の力に対抗するためだけでなく、いつ侵攻してくるかわからないイーバに対抗する意味でも修行は必要だった。

 

 そうしていると先日、ムトから知らせがあった。冥幽界を往復(おうふく)することが可能ということが判明したのだ。

 真っ先に決断したのは月花(げっか)だった。紫闇を守ると言いながらも、自身の居ない所で連れ去られたことが(くや)しくて仕方なかったのだ。それに続いてバサラが申し出て、マリアも同行すると決めた。レイも悪魔の力を自身の目で確かめてみたいと言い、同行することを決めた。

 そして(すで)に行くことを決めていた蒼輝、奈樹、風魔(ふうま)勾玉(まがたま)とマテリアも冥幽界へ向かうことにした。


 

 一同は作戦を立てた。冥幽界に乗り込み、城へ潜入、そしてアスモデス四死公(ししこう)だけでなくアスモデスも倒さなければ、本当の意味で紫闇を助けたことにはならない。

 連れ戻すだけでは、また生幽界(せいゆうかい)に追っ手が来るかも知れないからだった。


 そうして…一日が経過し、手すりのある崖の上へと来た。



ムト「この下が冥幽界と(もっと)も近い場所じゃ。四人の咎力(きゅうりょく)で冥幽界への門を開く」


 芙蓉(ふよう)が左手で桔梗(ききょう)と、右手で桜羅(さくら)と手を(つな)ぐ。桔梗は右手で芙蓉と、左手で蓮華(れんげ)と手を繋ぐ。蓮華は右手で桔梗と、左手で桜羅と手を繋ぐ。桜羅は右手で蓮華と、左手で芙蓉と手を繋ぐ。

 四人が()を作るように手を繋いだ。


芙蓉「行くわよ…集中して」


 四人は目を閉じた。芙蓉から流れた咎力が桔梗、蓮華、桜羅へと流れ、再び芙蓉へ帰還する。そして何度も循環(じゅんかん)していく内に、桔梗と桜羅に芙蓉の強大な咎力が少しずつ宿(やど)っていく。


奈樹「凄い…これが…サンサーラの(うつわ)…」


 桔梗と桜羅から邪術(じゃじゅつ)の力を感じる。二人に負担(ふたん)()からないように、調整しながら咎力を(あた)えてゆく芙蓉と蓮華。絶大な力が四人を(つつ)んだ後、その力は花火のように打ち上がった!

 そして天より渦巻(うずま)きながら(がけ)の下へと落下してゆき、その咎力(きゅうりょく)は海へと落ちずに空間に衝突(しょうとつ)した!


芙蓉「成功ね…!」


桔梗「ふぃー! 積極的(せっきょくてき)にやったから疲れたー!」


桜羅「毎日、精力的(せいりょくてき)に練習したから…成功して良かった…」


蓮華「さぁ、後はお前さん達の仕事だよ! 今になって躊躇(ためら)うんじゃないよ!」


風魔「それじゃお先っ」


 風魔は手すりをヒョイと飛び越えて降りていった。狭間に入ると、風魔の姿は消えた。続いて月花は手すりの上に立ち上がった。下には暗闇(くらやみ)(ただよ)狭間(はざま)が発生している。


刹那「月花様! 気を付けてね!」


 手すりの上で振り返る月花。


月花「ありがとう、刹那ちゃん。それに芙蓉さん、桔梗ちゃん、桜羅ちゃん、蓮華さん…ここを開いてくれてありがとう。行ってくるよ」


 後ろに倒れるようにして飛び降りた! 狭間へ入り、姿が消える。


リリア「マリア様…お気をつけて…」


 結局、同行することはせずマリアを止めることも出来なかった。リリアは、自分に出来るせめてもの(おこな)いをすることにした。それは皆が留守(るす)の間、ノスタルジアを守るということだった。


マリア「神に(つか)える者として、(けっ)して悪魔に(くっ)したりしない。行って参ります」


バサラ「あぁ。絶対にアイツをぶっ倒してやるサ!」


 そう言うと、バサラはマリアをお姫様抱っこをして持ち上げた。


マリア「ち…ちょっと…!」


バサラ「ちゃんと(つか)まっとけよ、マリア」


 予想外のことに照れながらも観念(かんねん)して、バサラの首に両腕を回してしがみつく。そして手すりを乗り越え、二人が落下して狭間へ入り込んだ。


芙蓉「ほら、アンタ達も同じことすれば?」


 後ろから奈樹の両肩に手を置き、蒼輝へ向かって軽く押した。


蒼輝「か…からかうなよ…」


奈樹「普通に降ります! 普通に!」


 奈樹は、よいしょよいしょと手すりを(また)ごうとするが、微妙(びみょう)に身長が足りなかった。よじ登ろうとするが、上手く乗り越えられずに苦戦している。


蒼輝「よっと。それじゃ、行ってくる」


奈樹「結局こうなっちゃった…」


ディアナ「お土産よろしくねー!」


蒼輝「あるかよ、そんなもん!」


ディアナ「えぇー!? お土産屋さんとか無いの!?」


奈樹「行ってみなきゃわからないけど……多分無いかな」


 マイペースなディアナに癒され、少し緊張感の(ほぐ)れた蒼輝は奈樹を(かか)え上げて、狭間へと飛び込んだ!


勾玉「やれやれ…緊張感(きんちょうかん)の無い奴らだ…」


マテリア「それでは、私達も行くです」


勾玉「留守(るす)を頼む」


 マテリアがゆっくり手すりを(また)ぐ。勾玉も乗り越える。


マテリア「……」


 崖から飛び降りる…と言うこともあってか、躊躇(ちゅうちょ)してしまっている。


勾玉「怖いか…? …心配するな。俺も恐れている」


マテリア「勾玉さん…」


勾玉「(おのれ)の力が、悪魔相手に通用するのか…。不安であれば…(みじ)めな思いをするくらいなら行かない方がいいのかも知れんがな…。それでも…仲間が一致団結(いっちだんけつ)して戦いに(おもむ)くと言うのだから放っておけんものだ…」


 マテリアを見て、フッと笑った。そして崖を前に(おく)しているマテリアの手を握り、崖を飛び降りた!


マテリア「ひっ…きゃああああぁぁ!」


 勾玉とマテリアの二人も狭間へと入り込んだ。こうして蒼輝、奈樹、勾玉、マテリア、風魔、バサラ、マリア、レイ、月花は冥幽界へと突入した。


 見送った者は刹那、芙蓉、桔梗、桜羅、蓮華、ディアナ、ブラック、ムト、サツキ、リリア。


ムト「それでは、ワシらは家に帰って無事に戻ることを祈るとするかの」


サツキ「はい、ムト様」


リリア「本当に…大丈夫なのでしょうか…?」


ムト「心配無用…とまでは言わんが、ワシの発明品を(いく)つか持たせてある。その一つは冥幽界でのみ発揮する、所有者の力を増幅(ぞうふく)させる腕輪、冥増輪(めいぞうりん)を持たせた。手強(てごわ)いと言っておった悪魔相手でも多少は戦えるようになるじゃろう。問題はない」


 何故(なぜ)、ムトが冥幽界でのみ……などと言う、ピンポイントに効果を発揮する装置を造ることができるのか……そのことについて、触れるものは居なかった。今はただ、冥幽界へと旅立った者達を心配していた……。

  

 

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