第五話
お待たせしました、五話になります。
今回は少し短くなっています。
申し訳ないです…暇つぶしにでも読んでいただければ嬉しいです。
林檎と2人歩きながら…拓也に言われた武具屋を探していると……
それらしい店が沢山並んでいる大きなホールのような広場に辿り着いた、メニュー画面を開いて、マップを見てみるとどうやらこの広場は始まりの町の中心部のようで…周りを見渡すとプレイヤーがかなりの人数集まっているみたいだ。
その中でも1番の活気を誇っているのが生産組プレイヤーが店を連なるプレイヤー街である、この【クロススキルオンライン】にも生産スキルがちゃんとあり、プレイヤーメイクの武器や防具はNPCが作成したもの以上の性能を引き出すことができる。
「うわー…お兄ちゃん、かなり賑わってるよ?まるでお祭りの屋台みたい…」
林檎がプレイヤー達が声をあげて賑わっている光景を見て唖然としていた。
しかし、正直なところ…俺も唖然としていた…何故なら俺が今まで経験してきたVRFPS等での大規模イベントでもこれだけの数のプレイヤーが集まって祭りの様に賑わうことなど…1度も目にしたことも経験したこともなかったからだ。
「そうだな…この光景を見る限り…VRMMOが最近人気急増中って情報は本当なんだろうな、あれだけの人数の人間がVRゲームをプレイしていると思うとびっくりだな」
そんなお祭り騒ぎの様な光景に圧倒されていると、1人のプレイヤーに後ろから声をかけられた。
「そりゃ、いまじゃあ誰でも遊べるゲームとして、普及し始めてるからな…これだけならまだ…少ないもんだぞ?まぁどの道これからまだ増えるだろうとはおもうけどな」
いつの間に?と思いもしたが…目の前の光景に圧倒されていたために、気がつかなかっただけだという答えを導き出して…大体の予想が付いている…プレイヤーに振り返った。
「うん、やっぱり時雨っちだったな!その見た目だからいつも確認するのに骨が折れるぜ…いい加減少しはアバターを弄ったらどうだ?時雨っち…あっ…こっちではシグだったな…」
やはり、後ろに立っていたプレイヤーは拓也であった。
「…うるせい、しょうがないだろ、そこまでこだわっているわけじゃないし…別にもう慣れちまったから今更変えるのも変だろ?そういうお前はセイントっていうのか…また変わったネームにしたな…お前…」
「ん?…いや、いつも通り特に理由はない、つまり適当だ」
最初にも説明はしたけれど…俺のアバターは何故か女にしか見えない厄介な珍しい型のアバターらしく…始めた頃は往生した。
しかし、俺たちは武具屋をまだ見つけてないはずなのに、何故拓也が居るんだ?
「拓…セイント、なんで分かったんだ?俺たちまだ武具屋に着いてないのに」
俺が不思議に思い聞いてみると…セイントは少し可笑しそうに笑ってから答えた。
「そりゃ、プレイヤー街の真ん前で唖然としてるプレイヤーが居たら、気になるだろ…普通…それで見た目がお前に似てたし、お前VRMMOプレイしたことないから最初は唖然とするかな?と思ったから一応声をかけたら当たったってわけさ」
「まぁ確かにびっくりしたけど…セイント、一言余計だぞ」
セイントが苦笑しながら余計な一言を言ってきたので少しはむっとしたが…
「あ、気に障ったなら悪りぃ…謝るわ…すまん」
セイントが素直に謝ったため、怒る気が失せた…こういう時にいつも拓也は素直過ぎるのが良いところなんだけど…
「いや、良いけどさ…それで、セイント?合流したけどどうするんだ?」
俺がセイントにこれからどうするか聞くと…セイントは少し考える様な素振りを見せた後に…
「そうだな…なんなら俺はこっちで飯でも食いながら話を聞こうかと思ってたんだけど…シグはまだ始まりの町から出たことないんだよな?」
セイントが確認するように聞いてきた…
「あぁ…俺もリンリンもまだ始まりの町から出たことはない…」
ここは普通に経験者の言う通りにするのが最良だろうからと思い素直に答えると。
「シグとリンリンはまだエリアに出たことないんだな…なるほど……」
そうセイントは呟くとまた考え込んだ後に、俺達にこう告げた。
「よし、まずはエリアに出て2人のレベル上げとVRMMOの簡単な基礎知識を教えるわ…シグ…悪いんだが、話はその後でも大丈夫だよな?」
まずはVRMMOに慣れろって事か…
「あぁ…別にそれで構わないぜ、大丈夫だ」
セイントにそう答えた俺は、リンリンに一応どうするか聞いてみた。
「リンリン、どうする?俺と一緒に来るか?」
案の定予想通りの返事が返ってきた。
「う、うん…それなら私も付いて行くよ…お兄ちゃん」
さて、それなら早速行こうとセイントに言おうとしたら…
「待て、待て早まるな…お前らまだ、初期装備だろうが…せめて、武器ぐらいは売ってるのを買った方がマシだぞ」
まぁプレイヤーメイドの方が本当は良いんだけどな…とセイントが小さい声で呟いたのは、聞いてない振りをしよう
確かに、プレイヤーメイドの方が性能が良い事は知ってるんだし、だけど作ってくれるプレイヤーの知り合いが居ないから意味ないだけだ…はぁ…どっかに居ないかな…
「よし、それじゃあ武具屋に案内するぜ?逸れるなよ?」
そして、俺とリンリンはセイントの案内で無事に武具屋に辿り着けたのだが…少し問題にぶつかっていた…
「そう言えば…お前ら金…初期値だろ?」
……セイントに言われるまで、全くもって気にもしていなかった事に気が付いた…全く間抜けにも程があるよな…
「あー…確かに…5000しかない…」
「私も、5000しか持ってないよ…」
二人とも案の定バリバリの初期値安定だった。
本当のところ…俺は決闘したからもしかしたら初期値以上あるかと思ったが…実際は初期値のままだった。
「やっぱりか…普通に初期値だな」
あー、武具屋に着いたのは良いが…金が足りないと話にならないからなぁ…
「なんなら、しゃーなしで俺が貸してやろうか?」
流石に、見かねたセイントが貸そうかと聞いてくれたが…あまり、借りても良い気がしないし…悪いしなぁ…
「いや…流石にそこまでしてもらうのは悪いよ…」
俺がやっぱり貸してもらうのは悪いと断るとリンリンもそれに賛成なのか、こくりと頷いていた。
「うーん…それじゃあ参ったなぁ…どうすんだ?」
セイントはもうお手上げだ…といった様子で聞いてきたのだが、金の問題がまだ解決していない…
「なぁ…セイント、なんか…こうエリアに出ないで金が手に入る場所ってないのか?…ほらVRFPSにカジノとかあったじゃんか…あんな施設とかないのか?」
俺が実際にVRFPSをセイントに誘われて始めた時はカジノで金を手に入れて、装備を整えたから、そんな施設がないか聞いてみたのだが…
「残念だが…VRMMOには基本的にカジノみたいな施設はない…だからVRFPSでやった事は通用しないぞ?だから俺が貸してやろうか?って聞いたんだぞ?」
…なるほど、俺はこの瞬間に頭の中が絶望で染まった。
しかし、この後に思いもしない事から問題が解決した、その思いがけない事とは…
「…あっ!…シグ、カジノなんてものはないけど…闘技場ならあるぞ?まぁお前はまだ行けないけどな…ていうか、シグはVRFPSのアバターの金を引っ張ってくれば解決じゃないか?」
VRゲームを同じVR装置でプレイしていればVR装置の中にはいっているゲーム内の金を違うゲームに移行することができるのだから、俺のVRFPSのアバターが持っている金をVRMMOに持ってくれば問題が解決できるということ…
それに、同じVR装置で違うゲームをアップロードして新しく始める時に前プレイしていたゲームのアバターをそのまま引き継ぎの様な感じで移行することをコンバートというんだが、俺は基本的にコンバートをしないため、やったことはないが…どうやら前のゲームの内容を出来る限り引き継ぎするゲームで再現し、プレイヤーが違和感をあまり感じないようにできているらしい…もちろんその逆の再コンバートも出来る。
「あぁ…その手があったな…」
今更ながら思い出したために…拍子抜けだった
「おい、おい…一応VRFPSやり始める時に説明はしたはずなんだけどな…シグ、まぁ興味なさそうにしてたから印象に残ってなかっただけだろうが…」
セイントが呆れた様子で言ってきたが…正直図星だ。
「いやー、そんなわけじゃないんだけど…忘れてたのは、本当に忘れてた」
あははと言いながら答えるとセイントはやれやれといった表情を浮かべて首を振っていた。
「それじゃあ、一旦抜けるからさ…セイント、リンリンに手出したら…そん時は覚えとけよ?」
俺はリンリンについてはかなり念を押してセイントを睨みつけて、その後に一旦ログアウトした。
さて、現実に一旦戻った俺はVRFPSのデータを呼び出して、ゲーム内の通貨を今の【クロススキルオンライン】内の通貨に変換作業をし始めた…
「うげっ!全部で1時間も掛かるのかよ…マジでかー…」
なんで、通貨変換だけでそんなに時間が掛かるんだよと思いながらも…金がなければ仕方ないため…渋々待つことにした。
ガタッ……ゴトゴトッ……
すると、下から物音がした。
「…?今、下から物音がした気が…」
うえーなんでこんな時に…泥棒か?めんどくさいなぁ…
しかし、今日なんかに来ないでも良いだろ…誰だか知らないが…泥棒ならお帰りください。
「もう、やだなー」
とは言いつつも人間、物音がすると気になるもので…下に降りて確認しようと決めて、階段をゆっくり降りると…
ガタッ…ガタガタッ……
物音は台所の方から聞こえてきている。
俺はまず、玄関に向かい、一応武器として金属バットを手に持ち…台所に向かう。
台所の扉を開けるとそこに居たのは……
_____その頃、俺が金の移行作業やなんやかんやをしてる頃リンリンとセイントは…
「リンリンちゃんはシグの妹さん?なんだよな…?」
あわわ…どうしよう…お兄ちゃんの友達に話しかけられたのです。
はわわ…何か話さないと、でも話すことなんて…
「リンリンちゃん?聞いてる?」
セイントがリンリンの顔を覗き込む様に聞いてきた。
そのため、緊張で混乱していたリンリンは、更に混乱してしまい…
「……!?っ…はわわ…えっ!?…はい…卵焼きが好きです…」
いつも通り、変な事を口走ってしまっていた。
「えーと…リンリンちゃん?」
しかし、そんな事をセイントが知るわけもなく…リンリンが変な事を口走ってしまった理由が分からず、セイントはリンリンにどう接すれば分からないという状況に陥ってしまっていた。
_____その頃現実の俺は、昼ご飯を作っていた。
何故昼ご飯を作っているかって?それはな…
__5分前にさかのぼる…
俺が台所に金属バットを持って入ると…そこに居たのは…
「うぅ…ううぅ…お腹すいたよ〜…死んじゃうよ〜」
台所のテーブルに突っ伏して腹を空かせた…捺葉姉の姿があった。
実は捺葉姉は料理を作れるのだけれど…かなりの気分屋で自分が作りたいと思った時や、誰かに食べてもらいたいといった理由がなければ自分で料理を作りたがらないのだ…
しかも、ましてや長期休みの真っ最中捺葉姉に料理を作る気があるはずもなく…どうやら起きてきたは良いが俺と林檎がVR空間に行っていたため、ご飯は作られておらず…腹が減ったまま…台所でグッタリしていたようだ。
「捺葉姉…大丈夫か?」
俺が声を掛けても、「ご飯…ご飯…」とうわ言を言っているため…どうやら重症なようだ。
「待ってろ、いまなんか作ってやるからさ!」
という事があり、今に至るというわけである。
「ううぅ……あれ?…クンクン…クンクンクン…」
俺が手っ取り早く野菜炒めとベーコンステーキを作っていると…捺葉姉が正気を取り戻したのか…キョロキョロしだした。
「あっ!捺葉姉、起きた?ちょっと待ってね…もう出来るから」
俺が捺葉姉に振り返って…そう言うと捺葉姉はようやく状況を理解したようで…
「あれ?夕君…?あれ?私…ってそれより…お腹すいたんだよ〜夕君…ご飯〜」
といつも通りに戻ったので…ベーコンステーキを作りながら…ホッとした俺であった。
「待って、もうすぐ出来るから…心配しなくてもご飯は逃げないから…」
俺が作ってるベーコンステーキを睨みつけるようにガン見しているために…余程お腹が空いているのだろう。
「はい、簡単な物しか作れなかったけどベーコンステーキと野菜炒めだよ?召し上がれ…捺葉姉の好きな味付けにしてるから」
「ありがとう〜やっぱり夕君が弟でほんと良かったよ〜」
目を潤ませながら、俺に泣きついてくる捺葉姉にドギマギしながらも…少し嬉しくもあった。
「それじゃあ…捺葉姉、俺と林檎はちょっとまだVRの方でやることあるからさ…用があったら食べた後にでもVR空間に入ってきてね?」
「りょーかいだよ〜」
捺葉姉に一応用がある事を伝えて移行状態を確認してみると…ちょうど移行が完了していた。
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