自己紹介
「それで!?お二人は何なんです!?」
卓袱台を叩きつけ、苛立っている少女。四畳半の部屋に、卓袱台と四つの座布団。随分と和風な部屋だ。
「まぁまぁ…お茶でも飲みなさいな。」
女は落ち着いて、いやまったりとして、お茶を少女の前に出す。
「…お婆ちゃんみたいだな。ミカンでも食うか?」
「いいえ?結構よ」
二人の会話は熟年の夫婦のようだ。
「あのねぇ…貴女?あぁ、女の子の方。貴女は何故私達に、お前達は何者か、なんて質問をするのかしら?村の人に何か吹き込まれた?」
お茶をすすりながらゆっくりと聞く。吸血鬼?いや違う。お婆ちゃんだ。
「……何者か、じゃなくて、どういう存在か、ということです。地位って言った方がいいですか?あと、外の人達にはあなた達の事は、何も聞いてません。」
少女は、少年にそうよね、と聞くと、やっとこさ怒りを鎮めた。
「な~んかここ~…落ち着くなぁ~…すっごくま~ったりできるよ~」
少年がにこにこしながら言う。少女は空気を読め、という表情だ。
「そうなのよ。わかる?この部屋に来ると…何でかしら、凄く落ち着くの…」
二人とも目を閉じて、にこにこしている。
「おいおい、これから天に召されるんじゃないだろうな。」
「そんなわけないじゃない。……それより、そうねぇ…」
女の目が急に真剣になる。それに応じて二人は身構える。
「貴方達の名前は?まだ聞いてなかったわね」
「何だ…そんなことかぁ。急に目が厳しくなったから、どうしたのかと…」
少年は、ほっ、となって緊張を緩める。
「私はコノハです。凩木葉。苗字は風って言う漢字の中を、木にして凩。名前は木に葉で木葉です。」
「僕はカイライ。迅傀儡です。苗字は迅雷の迅。名前は傀儡って言う漢字…分かりますか?」
「うんうん」 「分かるわよ?」
二人は頷く。
「まぁ…そういう名前です。」
「最近の子って皆こんな小難しい漢字なの?」
男は女を、肘で小突き、囁く。
「知らないわよ、俗に言う、キラキラネームってやつじゃないの?」
……この時代ではそんな言葉など存在しない。よって俗も知るわけがないので、言っているわけがない。
「…さっきから何をこそこそ話しているんですか?何か分かったん──」
「いいや、いや?何でもないよ!?」
鋭い目付きで、質問してくる木葉に、男は顔の前で手を振り、何故か必死になってそう言った。この少女は怖い。男はそう思った。