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act.2 がくせいだから

刺激が足りない。あたしは毎日そんなことばっかり思って生きている。

刺激ってなに?そう聞かれると返す言葉に困るんだけど、あたしはこの単調な毎日から抜け出したかった。

だいたい何が楽しいの?同じ制服を来て、使わない知識詰め込んで、周りのあったま悪い奴らに合わせてさ、このまま平凡に老いていくのかとか思うと嫌気がさすね、あたしゃ。


今日だってぼんやり外を眺めてたら名簿で頭を殴られた。あの社会科教師め………。


あたしが外見てるのはねぇ、あんたの授業がつまらないからなのっ!


はぁ…溜め息でるわ。

今だってそう、こうやって放課後に何もない河原の土手に座って、夕焼けやら橋を通る電車やら草野球の少年達を見て時間を潰す。貴重な青春の一ページをこんなくだらない事で無駄にしてるんだ。

溜め息をつき、腕で顔を覆い隠すように突っ伏した。

したら…いつの間にか………寝ちゃった………。


気がつくと、当たりは真っ暗だった。無理な姿勢で寝てたからか体が痛い。

「も…もうかえろ。」

真っ暗になると野球少年達も家に帰ったのか辺りには誰もいなかった。

あたしはなんだか怖くなった。


「ねぇ。」

「ひぃっ!」


後ろから急に声がしたので、あたしはなんとも情けない声を上げてしまった。恐る恐る振り返ると警察官が立っていた。

「な…なんですか。」

「ねぇ…君こんな時間に一人で何しているんだい。」

様子が怪しい。警察官の格好をした男はあたしにそんな事を聞いてきた。警察官としては当たり前な質問なんだろうけど、そいつのオーラっていうかなんて言うか、ひどく気持ち悪く、あたしからしたらどう見ても変質者にしか見えなかった。

どうしょう…考えた挙げ句正直に答えることにした。変質者立った場合、変に逃げようとしてイタズラされたら嫌だし。


「その…時間つぶしてたんです…。」


「なんで?」


「なんでって…暇だから。」


「暇か…。」


「君は友達と遊んだりするのは楽しくないのかい?」


「楽しく…ないです。」

「なんで?」


「合わないからっ!毎日が楽しくないからっ!そんだけ!もういいでしょ!」


あたしが足早に去ろうとしたとき、肩を掴んで虚ろな目で男は言った。


「きみのつまらない生活に刺激を与えてあげるよ………。」


怖かった。虚ろな目で薄ら笑いを浮かべる彼が初めは怖かったけれど、話を聞いていくうちにだんだん楽しくなってきた。多分感覚がマヒしてたんじゃないかと思う。

男は一緒に町を停電させようと言う。そんな事してなんになるんだって思ったけど、刺激が欲しかった私にはどうでもよかった。

だからあたしはここにいる。変電所。

あたしはここの重要なケーブルを切って停電させればいいらしい。切るために高枝切りばさみみたいな工具ももらった。

男に一緒に来てくれないのかともきいたけど、彼は彼でやることがあるらしい。知らないけどさ。

さて、どれだ?

あたしは探した。で、一番それらしい線を見つけた。高圧電流、立ち入り禁止って書いてあるし。こんなん切っていいのか…?

少し迷ったけど、切ることにした。

心拍数が上がっていく。犯罪だ。しかもこんなん切ったらどうなるか分かったもんじゃない。でも切るしかない。女は度胸。


深呼吸をして刃を線にかける。


せーのっ!


切った瞬間体中に電流が走った。めちゃくちゃ痛い!倒れた私の薄れゆく意識の中、最後に目が捉えたものは、徐々に消えていく町の灯りだった。


「やったよ…おっさん。成功…だよ。」


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