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 僕は急いで彼のもとへ駆けていった。

 なぜか吉久保さんも走ってついてくる。

  

 先生は片手に花束を持ちながら、息を切らしてへたり込んでいた。

 スーツを着たままということは、授業が終わってすぐに病院に来たということになる。

  

    

    

「お前授業終わってすぐ帰ったろぉ? おかげで校舎中探し回っちまった」

「す、すみません」

   

 

       

 僕はとりあえず頭を下げて謝った。

 そうか。だから先生は俺を指名したんだ。


 しかし、次に僕の背後から吉久保さんが投げかけた言葉は、それまでの暗い雰囲気を吹き飛ばしてしまった。

 

「あらら、年よりなのに無理するからー」

「うるせえ、加奈子。それより、こいつ! 俺がせっかく車で病院まで送ってやろうと思ってたのに、さっと一人で行っちまいやがった」

   

 まるで知っているような口ぶり。

 さらにはこうだ。


「先生また髪の毛少なくなってるー」

「お前だってよ、高校生ん時は、それこそそこの藤村よりも背ェ低いちんちくりんだったじゃねぇか」

「ハイハイ」

「ホント久しぶりだな、元気にしてたか?」

「それなりに。先生も元気そうですね」


何が起こったのか分からなかった。

 笑いあう二人を傍らに、僕は訳が分からなくて一人取り残されていた。


「お二人は、どういう……?」


先生は男性にしては高い声で笑って答えた。


「ん? あぁ、ここにいる加奈子は、お前の先輩だ」

「ごめんねー。まだ言ってなかったけど、実は狭山先生の教え子でーす。藤村君の担任って先生だったんだね」

「電話で言ったろ? 俺のクラスの生徒が加奈子のとこ行くって」

「そういうことだったんだー」 

    

 狭山先生と吉久保さんは、しばらく再会して思い出話に花を咲かせていた。

 二人ともニコニコ嬉しそうにしている。


 なんだか、ちょっとほっとした。

 

 先生も吉久保さんもとてもいい人たちだった。

 僕にも将来こんな再会を喜びあえる人ができるのだろうか。


 しばらくの間、僕は二人のやりとりに見入っていた。 

 

    

「そうそう、藤村。今日お前に聞こうと思ってたんだけど……」 


    

 ひとしきり喋った後、狭山先生はちょっと真剣な顔をして僕の顔を見つめた。


 また、あの目だ。

 今日の授業中教室で僕を困らせた、あの眼差し――。

 僕の体は強張って、緊張しているのが分かった。


   

「はい」


    

 僕は固唾をのんで、先生が次にいう言葉に耳を傾けた。

 眼鏡越しに僕を真っ直ぐ射止める二つの瞳。


    

「白石は、いじめられてるのか?」 


    

 ――思った通り、と言ったらよくないかもしれない。

 

 でも、彼女には悪いけど、この質問で僕は少し気が楽になった。


 

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