シラユリ団地
白百合団地、というのがF市にあった。白百合団地は、管理人が中庭いっぱいに白い百合を植えていることからそう呼ばれていた。今ではもう閉鎖されている、「いわくつき」の団地だったそうだ。
白百合団地の管理人には、ミオという娘がいた。いつも「リオちゃん」という名前の人形を肌身離さず持っていた。
管理人はそんなミオのことをとても可愛がっていて、住人達も彼女を可愛がっていた。一部の住人は、管理人が不在の時にミオのおままごとに付き合っていたようである。
しかし不幸なことに、ミオは6歳の誕生日に亡くなってしまった。管理人の運転する車に乗っている際、逆走車に追突されたそうだ。管理人は奇跡的に回復したが、ミオは亡くなってしまった。管理人はもちろん、団地の住人達も大いに悲しんだ。彼女の棺には、天国でもおままごとができるようにと、いっぱいの人形が詰められた。
ある日のことである。団地に生えている白百合ががくの先からぽきりと折れた。それならばただの偶然として処理されることだが、さらに奇妙なことに、その折れた白百合の花弁は、住人の玄関前に置かれていたらしい。その住人は、ミオと仲が良かったソノコだった。
2日後、ソノコは団地の5階から飛び降りて死んだ。白いワンピースを着ていた。折れた白百合の花弁とワンピースを真っ赤に染める住人の手には、ミオと共に焚き上げられたはずの人形が握られていた。
死んだのはソノコだけではなかった。301号室のタケル、107号室のミカ、505号室のスミも死んだ。死体は須らく折れた白百合と人形と共にあり、真っ白な服を着ていた。
これは死んだミオの怨念だということで、住人たちは次々と引っ越し、白百合団地には誰も寄り付かなくなり、いつしか閉鎖された。
ミオを一番かわいがっていた管理人についてだが、その消息は誰も知らない。スミが死んだ日と同時、行方をくらましている。




