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やり尽くしたゲームの悪戯王子に転生したけど、冒頭で国と家族を滅ぼされるのは嫌だから全力で抗います  作者: MIZUNA


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転生の前日譚2

「は、母上。それに父上まで……⁉」


「アテム、聞きましたよ。また悪戯をして皆を困らせたそうですね」


「う……⁉ そ、それは……」


アテムが決まりが悪そうに目をそらすと、ミリーナはにこりと微笑んだ。


「貴方はとても賢い子です。ですが、その賢さは悪戯で皆を困らせるためのものではありませんよ」


「ミリーナの言うとおりだぞ」


オルガが相槌を打って手を差し出すと、アテムは怒られると思ってびくりと体を震わせて目を瞑る。


しかし、その手はアテムの頭に優しく置かれるだけだった。


「とはいえ、兵士や給仕たちを出し抜くという行為は咄嗟の機転が利かなければできぬことだ。その機転と賢さは良い王となれる資質とも言えるが、悪知恵ばかり働かせては家臣や民の信頼は得られぬ。王を人で例えるならものを考える頭であり、体と手足は家臣や民だろう。しかし、だ。アテムが自由自在に走り回れるのは、その手足があるからであろう?」


「……はい」


優しくも威厳ある声で諭されたアテムは、しゅんと俯いてしまった。


「生まれながらにして持つ手足を当たり前……そう考えるのはしょうがないことかもしれん。だが、アテムは明日で十歳となるのだ。そろそろ、当たり前の大切さに気づき、感謝せんとな」


オルガはそう言うと、アテムを両手で抱きかかえて自らの太い腕の上に載せた。


「案ずるな、アテム。お前は良き王になれる。私とミリーナの子なのだからな」


「父上の仰るとおりです。でも、そろそろ悪戯王子は卒業しましょうね、アテム」


「……はい、父上、母上」


両親に優しく見つめられたアテムは嬉しそうに微笑むと、オルガは三体の女神像を見据えた。


「さぁ、ここは三女神の間だ。お三方にアテムの今後を見守っていただくよう、お祈りしていくぞ」


「そうですね」


オルガはアテムを腕から下ろすと、その場でミリーナと一緒に片膝を突いて頭を垂れた。


アテムも慌てて畏まって片膝を突き、見よう見まねで頭を下げる。


ややあって、「……よし」とオルガが顔を上げた。


「さぁ、アテム。悪戯した者のところに謝罪にいくぞ。幼い我が子のしたことは親の責任だ。我らが直接詫びて、頭を下げねばな」


「えぇ⁉ 父上と母上が頭を下げるんですか」


アテムが目を丸くすると、ミリーナがこくりと頷いた。


「父上が仰ったでしょう。幼子のしたことは親の責任です。もし、私達が頭を下げる姿を見たくないのであれば悪戯は控えましょうね」


「う……⁉ 畏まりました」


決まりの悪い顔を浮かべるアテムだったが、彼は両親と共に悪戯をした城内の兵士や給仕たちに頭を下げて回ることになるのであった。


そして、翌日。


アテム・アステリオンが十歳になる誕生日を迎え、城下町の誕生祭が最高潮を迎えていた。


夜になると城内では盛大な誕生会が開かれて両親、妹、家臣、兵士、給仕たちの祝福を受けるなか、アテムは会場の中心に用意された蝋燭が灯されたケーキの前に歩み出た。


周囲を見渡せばアテムが十歳を迎えたことを、誰も彼もが喜んでいる。


『皆そろいもそろって僕に酷い悪戯されたっていうのに、誕生日を祝ってくれるなんてね』


心の中で憎まれ口を叩くアテムは、嬉し恥ずかしそうに鼻を鳴らした。


目の前に用意された大きなケーキを見つめていると、母ミリーナと父オルガの言葉がアテムの脳裏に蘇っていく。


『貴方はとても賢い子です。しかし、その賢さは悪戯をして皆を困らせるためのものではありませんよ』


『当たり前にあることの大切さに気づき、感謝せんとな。案ずるな、アテム。お前は良き王になれる。私とミリーナの子なのだからな』


『父上の仰るとおりです。でも、そろそろ悪戯王子は卒業しましょうね』


自分の五体満足にある手足と体を、アテムはそれとなく見やった。


『……当たり前にあることの大切さ、か。まぁ、城内の連中は手応えなくて悪戯も飽きてきたし、そろそろ僕の本気を見せてやるかな』


アテムは心の中でそう呟くと、大きく息を吸い込んで蝋燭の火を一息で消しきった。


直後、会場が大歓声に包まれる。


「……まぁ、見てろ。僕が王になってお前達のことを守ってやるよ。なんたって、僕は父上と母上の子供なんだからな」


誰にも聞こえないようアテムが小声で呟いたその時、彼の視界がぐにゃりと歪み、激しい頭痛と吐き気に襲われる。


「う……⁉ なんだよ、これ」


『聞こえますか、アテム・アステリオン。貴方の決意に応え、導きの記憶が蘇らせましょう』


唐突に、澄んだ女性の声がはっきりと聞こえてくる。


誰の声だと、アテムは周囲を咄嗟に見渡すが、彼は目を見開いてぎょっとした。


会場にいる誰も彼もが固まっており、瞬き一つしていない。


まるで、時間が止まったかのようだ。


『怖がらないでください。私は貴方の心に直接話しかけているのです』


『僕の心に直接だって……⁉』


アテムが虚空を見上げたその時、『そうです』と再び澄んだ女性の声が聞こえてきた。


『しかし、詳しい説明をしている時間はありません。アテム・アステリオン、貴方は導きの記憶を持って自らの運命に抗う機会を与えられたのです』


『み、導きの記憶? 自らの運命に抗う機会、だって。な、何を言っている。そもそも、お前は一体何者なんだ⁉』


『私は全てを司るものです。いずれ貴方は全てを知って私の前に現れ、このやり取りを思い出すことでしょう。その時を楽しみにしていますよ、アテム』


『ちょ、ちょっと待て……⁉』


アテムが呼びかけたその瞬間、彼の脳裏には次々と自分ではない誰かが過ごした十数年の映像が再生されていく。


『なんだ、このうだつの上がらなそうな男は。いや、知っている。僕はこの男を知っているぞ。この男の名は確か、清水一平……僕の、僕の前世だ』


脳裏に流れる映像が前世の自身の姿だと理解したアテムは、困惑したまま意識を失いその場に倒れ込んでしまった。


「どうした、アテム……⁉」


「アテム⁉」


「お兄様⁉」


時が動き出したようにオルガ、ミリーナ、アルテナの叫び声が会場に響き渡る。


アテムの誕生会は騒然となり、終わりを告げた。






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