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やり尽くしたゲームの悪戯王子に転生したけど、冒頭で国と家族を滅ぼされるのは嫌だから全力で抗います  作者: MIZUNA


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問題発生

「どうしたのだ、アテム。どこか痛むのか?」


「い、いえ。悪戯王子と呼ばれているのに、父上からそのように仰っていただけたことが嬉しくて……」


「そ、そうか。しかし、泣くことのことではあるまい」


「す、すみません。何だか涙腺が緩くなってしまったみたいで、これも夢のせいでしょうか。あはは……」


それっぽいことを言って誤魔化そうとすると、今度はアルテナがあんぐりと口を開けて唖然としてしまう。


「お兄様、本当にどうしちゃったのよ。何だか別人になったみたいだわ」


「そうですね。ですが、決して悪いことではありませんよ。人はいずれ変わっていくものですからね」


母上の言葉で部屋の雰囲気が柔らかくなると、僕は咳払いをして父上を再び見つめた。


「父上。その、もう一つお願いがあるんですがよろしいでしょうか?」


「うむ。言ってみなさい」


皆の注目が集まるなかで、意を決して切り出した。


「僕の専属騎士にグレイ……グレイ・フロストを任命してほしいのです」


グレイ・フロスト。


彼はラグナロクファンタジーの冒頭で父上から僕の護衛を任され、一緒にアステリオン王国を落ち延びた優秀な兵士だ。


ゲームで彼を操作することはできないけど、いざ戦闘が始まると雑魚敵を次々と一掃してくれる頼もしい存在【NPC】として有名なキャラクターだった。


プレイヤーなら誰も憧れる二回行動。


序盤とは思えない攻撃力に加え、異様に高い会心率。


回復魔法と高級アイテムを惜しみなく使用しての支援。


グレイに怯え○○は逃げ出した、という特殊メッセージ。


戦闘終了後の度に主人公は回復してくれる。


などなど、彼の活躍を挙げればきりがない。


ラグナロクファンタジーをやった者であれば、『グレイ』にお世話にならなかったプレイヤーはまずいないだろう。


最序盤、ゲーム初心者で右も左もわからなくても、グレイさえいれば基本的に全滅はありえない。



ゲームをある程度やった者であれば『あ、これでレベリングできるじゃん』となる。


前世で見た動画サイトでは『【ラグファン】最序盤でグレイに手伝ってもらってレベルとジョブをカンストしてみた』とか『【ラグファン】グレイがいるのに全滅してみた』なんてやり込み系の動画も多数あったほどだ。


彼さえいれば、確実に職業【ジョブ】を極める時間が短縮できるはず。



そう思って切り出したんだけど、父上は眉を顰めて「グレイ、だと……?」と首を捻ってしまった。


あ、あれ、想像していた反応とちょっと違う。


困惑していると、母上が心配そうに切り出した。


「アテム、本当にグレイでいいんですか」


「えっと、それはどういう意味でしょうか?」


「どういう意味って。アテム、貴方はグレイを一度専属護衛にしているではありませんか」


「え……?」


目を瞬くと、母上は深いため息を吐いた。


「彼に悪戯を散々注意された腹いせに『お前はクビだ』と怒った挙げ句、私達に三日三晩も駄々をこね、無理やりに専属護衛の任を解かせたではありませんか。まさか忘れたわけではありませんよね?」


「え、えっと……」


そんなことしたっけ⁉


母上の指摘で真っ青になった僕は、慌てて記憶を掘り起こして辿っていくと『アテム様、悪戯はお止めください』と指摘され続け、悪戯を何度も防がれたことに激昂した僕が『ぎゃあぎゃあとうるさい奴め。お前なんかクビにしてやる!』と怒号を発した姿が脳裏に蘇る。


サーッと血の気が引いて真っ青になっていくと、母上は再びため息を吐いた。


「その様子だと思い出したようですね」


「……はい。グレイには本当に申し訳ないことをしました」


僕が項垂れてがっくりすると、父上がゆっくりと切り出した。


「王である私が命令すれば、グレイは再びアテムの専属護衛となるはずだ。しかし、それでは王族に対する信頼を失いかねん。最悪、グレイが国を出て行くことになるだろう」


「そ、それは困ります」


僕は慌てて頭を振った。


グレイはアステリオン王国滅亡を防ぐため、絶対に必要な人物だ。


それに彼が優秀であることは、大臣のガスターもよく知っている。


あの男は邪神ペルグルス復活のため、優秀な手駒を増やすべく暗躍もしているはずだ。


もし、グレイがアステリオン王国を出て行けば、最悪天光衆に入信して敵対する未来だってあり得なくはない。


「そうか。ならば、アテムができることは一つだけだな」


「一つだけ……?」


意味深な言葉に首を傾げると、父上はにやりと不敵に笑った。


「誠心誠意をもって謝罪し、自らが変わったことを告げるのだ。その上でグレイが専属護衛を引き受けるとなれば問題なかろう」


「あ……⁉」


確かにそうだ。


どうしてこんな簡単なことに気付かなかったんだろう。


心から謝罪してグレイに認めてもらえれば、彼は国を出て行くことはない。


そして、僕の専属護衛になってもらえれば、アステリオン王国滅亡回避に向けた活動を開始できる。


僕はこくりと頷いた。


「そうですね。それなら僕にもできそうです」


「うむ。だが、グレイが断れば他を当たるしかないぞ」


「畏まりました。ありがとうございます、父上」


にこりと目を細めてお礼を告げると、皆がきょとんとしてしまった。


あれ、何か変なこと言ったかな。


「あの、父上。どうかされましたか?」


「あぁ、いや、すまない。アテムがそのように無邪気に笑った顔を見たのは、かなり久しぶりだったものでな」


「え……?」


思いがけない答えに今度は僕が呆気に取られると、母上が「ふふ」と噴き出した。


「最近のアテムはいつも悪巧みばかりしていましたからね。親の私達から見れば、いつもどこかぎこちない笑顔でしたよ」


「そ、そうだったんですか。申し訳ありません」


父上と母上から温かい視線を向けられ、過去に行った数々の悪戯が脳裏に蘇る。


当時は笑って誤魔化せていたつもりだったんだけど、どうやら二人にはばればれだったようだ。


いたたまれず、ばつが悪くなった僕は誤魔化すように頬を掻いて苦笑した。


「ねぇ、お兄様。本当にグレイに謝罪するつもりなの?」


アルテナが目付きを細め、訝しむように尋ねてきた。


「うん。そのつもりだけど……」


「そう。じゃあ、まず私とリシアに謝ってみてよ」


「え、アルテナとリシアに?」


聞き返すと、アルテナはにやりと笑った。


「練習と思ってくれればいいわ。それとこの間、お兄様にされた悪戯を私はまだ許してないからね?」


「あぁ……」


言われて思い出した。


誕生会の前日、僕はアルテナとリシアに木の上にいた沢山の『虫』を渡すという悪戯をしている。


恥ずかしい話、まだその件を二人にちゃんと謝っていなかったはずだ。


「ほら、やっぱり。お兄様が……」


「うん、わかった」


「は……?」


アルテナが勝ち誇ったように鼻を鳴らしたその時、僕の言葉が被ってしまう。


でも、彼女は目を瞬いていたから、僕は威儀を正してそのまま続けた。






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