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第9話 眼鏡ですね。

「先生!うちの領で眼鏡を作ります。できれば量産化してコストを抑えて、庶民にも手が届くくらいにしたい。」

「ああ。そうだな。ようやく気が付いたか。」


え?ああ…フールの雑誌にいろいろな眼鏡の広告が載っていた。そういえば。

そうか、ヒントはちゃんと用意してくれていたんだ!!


「そうと決まれば丸投げですね!レンズ部分は兄に丸投げするとして…フレームは…。」

「うん。どうする?」

「領地の木材で加工する?強度はどうでしょう?硬い材質?」

「木材ね…まあ、ないわけじゃないだろうけど。そっか、見に行くか?眼鏡。」


自分の席で私が仕上げたばかりのオイゲン領のレポートを読んでいた先生が、

こともなげに言う。いや、しかし、先生?眼鏡を扱っているような高級宝飾店に?



*****


「あらあ♡お久しぶりです、教授。あんまりご無沙汰だから、忘れられちゃったかと思ったわ。」

「ああ。今日はこいつに眼鏡を見せてやってくれ。」

「あんらあ~教授には珍しくちんちくりんのツルペタ娘ね?趣味が変わったの?この子…女の子よね??」


ここは王室御用達の宝飾店ではないですか??ずかずか入って大丈夫なんですか??


ドア前にいた方々は、執事さんのような恰好でしたが。この人は…なんというか…上質なシルクのブラウスにスカート?お支度がシンプルなので、付けている宝飾品が際立っていますね。身長は先生とそう変わらないので、しゃべらなければ長身の知的美人、って感じですが…。


この失礼な人は…男??


ふーん、と観察されている。


「ねえねえ、実はこんな感じが本命なの?教授?あたしにしておいたらいいのにい。ね?」

「は?アカデミアの学生だ。」

「ふーーーん。」


そう、木綿のシャツにスラックス。髪は一本縛り。旅行中ずっとこんな感じだったから、そのままの格好で来てしまった。急なお出かけだったし。まあ、普段もそんなに変わらないけど。


おんなじ格好をしても、この人の方が色っぽい決定だろう。爪はピカピカ。メイク完璧。長く伸ばした金髪は動くたびにいい香りがする。

綺麗な色っぽいつやつやの唇からは…毒舌が飛び出してますけどね。

先生と絡んでいると、なんというか…目の毒ですね。


「じゃあ、ちびちゃん、こっちにいらっしゃい。」


別にチビといわれるほど小さくはない。先生とこの人が大きいんだと思うけど。

逆らっても何のメリットもなさそうなので、おとなしくその人についていく。

先生はそのままお茶を頂いて待つらしい。


「あなたのそのメガネはなに?おばあちゃんの眼鏡?」


年代的にはそんな感じですね。


「だっさ。物は良さげだけどね。貸してごらんなさい。」

「・・・・・」

言うこととは裏腹に、凄く丁寧にレンズを拭いてくれているようだ。良く見えないけど。

「荒い木綿とかで拭くと傷がつくから、シルクで拭きなさいね。」


ほお。


「さて、ご予算はいかほど?ごめんなさいね、さほど裕福そうには見えないから。」

「いえ。本当に見学だけなんです。」


返してもらった眼鏡をかけて、ガラスケースにずらりと並んだ眼鏡を眺める。


「あら、そう?ゼミの課題かなんか?」

「いえ、国産の眼鏡製造を目指そうかと思っておりまして。」

「・・・へえええ。」

「レンズは丸投げ先に心当たりがあるんですが、フレームまで考えが及ばなかったものですから。」

「そう。じゃあ説明していくわね。かけ心地も大事だから、ここにお座りなさい。」


猫足のクラシカルな椅子に座ると、ガラスケースからいくつか出して来てくれた。


「まず、これね。若い女の子に人気なの。フールで雑誌のモデルさんとかが流行らせてるわ。」

ふむふむ。前に置かれた鏡で眺める。細いフレームは赤。


「定番はべっこうね。柔らかい感じになるわ。」

ほお。明るい黄色っぽいべっこうのフレーム。つるっとしてかわいい。


「これはなんていうの?ちょっと成金ぽくて私はあんまり好きじゃないんだけどね。」

そう言ってかけさせてくれたのは、金色のフレーム。金具部分に赤い宝石が埋め込んである。

「お値段は…そうね、小さな家が一軒買えるくらいかな。」

「ぐえっ。」


一番プレーンなのが、と出してくれたのは銀色の定番だという眼鏡。

「これでも、庶民のお給料の3か月分くらいにはなるわ。国産ができるのは歓迎ね。」

「…でも、あなたの御商売的にはどうなんですか?」

「あら。商品には質とか格差とか、いろいろあるでしょ?そうなったらそうなったらで、ちゃんと対処するわよ。眼鏡は本来、医療機器なのに高額過ぎると思っていたのよ。まあ、おかげさまで儲かっておりますけど。うふふっ。」

「なるほど…。」


「あなたさあ、」

「へ?」


ものすごい美人が顔を近づけて耳元でささやく。


「あなた、エルヴィン教授には惚れちゃだめよ?あんたみたいな小娘が太刀打ちできる相手じゃないからね?」

「え?いえ、そんなこと絶対にありません。」

「みんなそういうのよ。あの人、やる気のある学生には面倒見がいいから、みんな勘違いしちゃうのよね。」


そう言って物憂げにおくれ毛を耳にかけている。何気に…色っぽくてどきどきする。


「・・・あなたも、ですか?」


「はああ?俺はこう見えても、男だけど??」






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― 新着の感想 ―
給料三ヶ月分……私なら怖くて付けられず、ずっと棚に飾りそうです〜(。ŏ﹏ŏ)
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