第7話 夏休みの過ごし方 その3
雇った助手は、思ったよりもいい仕事をする。
今回コンサルティングを頼まれたオイゲン領の下調べをするよう言っておいたら、2日くらいでまとめてきた。南部の漁港しかないような閑散とした土地。
「主要産業は漁業。これは昔から変わりませんね。漁獲量によってその年の税収に随分差が出ますが、大漁だと値下げされてしまって増税にはならず、廃棄もあるようですね。もったいないですね。」
「どう思う?」
「そうですね…干物?は、もうやってるでしょうから…資金的に余裕があるのでしたら、廃棄するお魚を瓶詰や缶詰に?あらかじめ味を付けてすぐ食べれたりしたらいいかも?あとは…安定した漁獲量を確保するなら、生け簀?でも、そんなに大きなプールを作るのも、お金がかかりますよねえ…。そんなに裕福な領地でもなさそうですし。」
こいつ、面白いな。やっぱり。
図書館にこもって調べつくしてきたんだな?
「じゃあ、実際お前も見てくるか?明日の朝、迎えに来る。」
「え?ああ。はい。」
「んじゃあ、明日な。俺はこれからメラニーちゃんとご飯だから。」
「はあ。」
下手な時間に家に帰ると母親が見合用の絵姿を揃えて手ぐすね引いて待っている。
「もう30になるんだから!!身を固めなさい!!!」
と。
その前は、
「胡散臭いコンサルティング業とかやってないで、身を固めなさい!!!」
だったな。
アカデミアの教授になってからはしばらく満足していたようで何も言わなくなったが、このところ再燃している。
「かわいらしい学生がたくさんいるんでしょう?その中からでも選べば?」
と、短絡的なことを口走っていた時期もあったな。
女には特に不自由していないから、心配しなくてもいいのに。
今夜のメラニーちゃんは旦那が30も年上。アバンチュール、ってやつ?
ちゃんと後腐れのない、口の堅い女の子としか付き合いはない。あんまり、深入りもしないのがコツかな?
助手は…フール語の辞書を持ってきて俺の読み終わった雑誌を片っ端から読んでいるようだ。そう、頭は柔らかく、視野は広く…って、あいつの目、細いけどな。
きっかけやヒントといったものはその辺に転がっている。
気が付くか、スルーしてしまうか…何かの時に思い出すか?