第6話 夏休みの過ごし方 その2
エルヴィン教授がサマーセミナーで使う資料に目を通す。
この方の知識量はどこから来るのかと思っていたんだが、机上の知識だけでなく、ちゃんと実践の実績があったんだなあ。
自身、アカデミアを出てから、コンサルティング業の事務所を立ち上げてあちこちの領地に出向いて実務とアドバイスをしていたらしい。そのあと、アカデミアに呼び戻されて、教授になった、って感じか?最年少教授だったらしいね。
経理をきちんとしただけで立て直しできたところもあった。ついでに領地での不正もあぶりだしたり。領地の管理をまるごと親戚筋とかにお任せしているところは結構あるからね。当主は王都在住で帳簿だけ見てる、みたいな。そういうところに、アカデミアの卒業生を派遣。
工業系の所では、やはりアカデミアの工業系の卒業生を送り込む。
送り込まれた子は、詰め込んだ知識を現場で使えるし、勉強にもなる。送られたほうは、今までの工法プラスで最新の知識と技術を知ることになるし…融合したら強いよね。
なるほど。兄のように、自領のために勉強して戻る子が多いんだろうけど、確かに貴族籍だが次男、三男なんかもアカデミアにはたくさんいる。
そのほかには…大小の商社や、店舗。農業改革まで…
そのコネクションで、領地の特産物を流通させるのに大手商社を動かしたり…。
スゴイデスネ???
一件一件、きちんとレポートとしてまとめてある。資料整理の時にざっと見たが、大したもんだ。ただの女子学生が群がる教授、ではなかったのね。
その本人は、資料整理を私に丸投げして、事務所のソファーに寝転がって雑誌を読んでいる。フールの大衆雑誌らしい。表紙に真っ赤な口紅の女の人が描かれているのがなんとなーーく見える。
そうか!なるほど!流行の最先端ですものね??
邪魔くさいなあ、と思った山積みの雑誌は、情報収集用ですね???
焚きつけに使っていいと言われましたが、今日から少しずつ読もうと思います。
サマーセミナーの資料を参加人数分揃えて、ちゃちゃっと机を片づけてからお湯を沸かす。
先生の事務所は郊外にある小さい一軒家。普段は誰もいないらしい。
来客用の応接室。事務所、書庫、その奥に先生の使っている休憩室。トイレ、小さな台所。お風呂もあるがめんどくさいので使っていないらしい。2階に二部屋。そのうちの一部屋をお借りした。
窓を開けると、小さな中庭が見える。なんというか…十分ですよね?
私も、離婚したらこのくらいの小さい家を探して…あ、今、旦那とカミラさんが住んでる家を貰うのもありか?
中庭に茂って野生化していたミントを摘んで、ミントティーにする。