第5話 夏休みの過ごし方。
アカデミアのサマーセミナーに申し込みをする。
後期のゼミの選択の参考になるらしい。
そうでなくとも、いろいろな学部の教授の話を聞けるのはうれしい。
ワクワクした日々を過ごしていると…。
「僕、カミラと海沿いのリゾート地にバカンスに行くから。カミラはさあ、家庭教師から厳しく教育されててさあ…うふふっ。ご褒美?」
「あ、どうぞ。」
「お前と行くことになっているから。その日は一緒に朝出かけて、そうだなあ…国元にでも帰る?」
「え?」
この!色ボケ野郎!!
私はサマーセミナーがあるんだってばさ!!
その後は、図書館にこもろうと思っていたのに!!!
はあああああ…。仕方ないか。
王都に知り合いらしい知り合いもいないし、タウンハウスを持っているような親戚もない。何人かアカデミアで知り合った方はいるが、旦那が愛人とバカンスに出かけるので、泊めてほしい、と、言えるほどの付き合いではない。
お義父様とお義母様は領地に帰るようだが、微妙に日程がずれている。
詰んだね。仕方ない、実家に帰るかあ…。
放課後の図書館で途方に暮れていたが、解決策など見つかりようもない。
はああああ…。図書館に泊めてくれないかな?ん?いいな。いや、無理か。
「お、珍しく悩んでいるな?相談に乗るぞ?」
声をかけて下さったのは産業再開発講座のエルヴィン教授。
近くで見る機会がないので、声で覚えた。
「・・・・・」
「で?どの辺が問題なんだ?」
教授は私が広げた兄上の卒業論文を眺めているようだ。
「・・・サマーセミナーに出てから、図書館にこもろうと思っていましたら、なんというか…夏休み中、下宿先に滞在できなくなってしまいまして…。仕方ないから国元に帰ろうかと…。」
「へえ。お前、下宿してんの?」
「ええ、まあ…そんな感じですね。家の人が留守にしてしまうので…。先生、図書館で寝泊まりさせてもらえたりしませんよね??」
「え?そりゃあ…無理じゃない?」
「デスヨネ。」
はあああ。
「じゃあさ、うち来ない?」
は?
「僕はサマーセミナーが終わると、本来のコンサルティング業に戻るから、結構忙しいんだ。僕の助手ってことで働いてくれれば、住むところは何とかなるんじゃない?僕の事務所に住めばいいし。」
「え?でも…先生、独身ですよね?」
「ん?ああ、僕は生徒には手を出さないから安心してよ。君に手を出すほど困ってもいないし。」
「はあ。」
さりげなく失礼な奴だな。まあ…でもいいかも。勉強になりそうだし。
翌朝やってきた色ボケ旦那に、教授の助手をして泊まり込むことになったと告げると、
「いーーんじゃない?」
と、軽く承諾を貰った。もうこいつの頭の中はバカンスだな。