第2話 ご褒美特典です!!
結婚式を無事に終えて、伯爵家の離れに戻る。
実家の両親も兄も、この度の結婚をあきれながらも応援してくれた。
以前はおばあさまがお住まいだったという離れは、こぢんまりとしてちょうどいいですね。侍女1名、女中2名、料理番1名…使用人さんは多すぎですが。
本宅はアードリアン様のご両親がお住まいです。
肝心の花婿はまっすぐ愛人のもとに帰りましたのでね。
「若奥様…よろしいんですか?」
「え?何が?」
私付きの侍女になったヘラさんが申し訳ない顔でそう言う。
「お坊ちゃまが…。」
「ああ。いいのよ。気にしないで。私たちよく話し合ったし、お互いのためを考えての結婚だから。それより、これを。」
結婚指輪をヘラさんに渡す。ついでにしまってあった婚約指輪も。
「未来のお嫁様のために、綺麗にして保存しておいてほしいの。この家代々のものらしいから。」
「・・・・・」
そう。肩書だけ妻になるということで、なかなかの好条件で話し合いが付きました。
①お互いの私生活に干渉しないこと。(大事ですね!!)
②最低限の生活の保障。(これは、どうもカミラさんが金食い虫だかららしいですね。)
③慰謝料の前払い。(2年後のことですので、その時に泣き寝入りしないように。)
④社交は基本的にはカミラさんを同伴するが、王城の場合のみ仕方ないので妻として同伴。(まあ、それは仕方ないですね。)
⑤ご両親と必要以上にかかわらない。(デスヨネ?)
⑥カミラさんを貴族令嬢として最低限教育する。(ここ、大事ですからね!)
⑦十分な教育後におじさまにカミラさんを養女にしてもらう。(これはもう、話がつけてある。)
⑧親に怪しまれないように、たまに一緒にお茶を飲む。(…どこの年寄よ?)
⑨2年たったらきれいさっぱり離婚すること。(問題ありません!あらかじめサイン入りの書類も用意してありますしね。)
⑩俺に惚れるな。(安心してください!惚れませんから。)
そう。私には何のメリットもなさそうなこの結婚…実は王都に居を構え、お金も時間も自由になる、というもう、ご褒美特典ですか!!!というくらいの好条件。
国境近くの山と森しかない自領。おじいちゃんの代からガラス製造をやっている。エトガル子爵家。
ガラス器。その頃はそこそこ需要もあったのだが、お隣のフール国でクリスタルガラスが開発され、普通のガラス器は普段使い用になった。
父の代で板ガラスに力を入れて、まあ、なんとか持ち直し、兄の代では色付きガラスを改良して、教会のステンドグラス用に出荷・加工をしている。
兄は跡取りということもあり、王都でアカデミアに通わせてもらったが、妹である私には金銭的になかなか難しかった。
・・・そこに、降って湧いたような好条件な縁談!飛びつきます。
もうこちらに向かう前に、アカデミアに願書と論文2本は提出してあります。
そうそう、結婚式前日には私の口座に、前払いの慰謝料が振り込まれていました。なかなか真面目な方ですね。2年暮らして、そのあとに自立するなり、国元に帰るなり…どちらにしても十分な額です。