第15話 番外編 人生のパートナー。(ローゼマリー)
先生にエスコートされて、嬉しそうなローレンツ。
今日も綺麗。紫のシックなドレスに、派手過ぎないけど際立つアクセサリー。
今日のために一生懸命選んだのね。先生の色だわ。
毒舌だけど、真面目で、大雑把な私の計画を細かく詰めて行ってくれる。ビジネスパートナーとして信頼してるし、尊敬しているし…。
かたや私はもうすぐバツイチになるし、そのあとは貴族籍を抜けるから平民になる予定。ちんちくりんでツルペタで、並び立ちようもないんだけどね。目だって細いし…せめてもう少しかわいかったり、せめてボンキュッボン、だったらなあ。
先生への尊敬とは、少し違った感情をローレンツに持ってしまったのは、一生秘密にしようと思う。あの人が好きなのは、エルヴィン教授なんだから。ビジネスパートナーとしてなら、ずっと一緒にいれるもんね。
お約束通り、堂々と旦那の前で手を差し伸べるカミラさんは、自信に満ちていた。いいなあ。
さて、幕引きです。
旦那に、練習した通り訣別を告げる。ここまでは良かった。どうしたことかエルヴィン教授が横入りして、よりにもよって、私にプロポーズ???
ちらりとローレンツを見ると、顔を背けて口を覆っている。
この野郎!!!ローレンツの前で何言ってくれんのよ!!!ひどい!ひどすぎる!ローレンツの気持ち、わかってるんでしょう?今日、エスコートまでして喜ばせておいて!!!
ローレンツの手を取って、走り出す。
その後も、何度か先生はわざわざ奥さんになった方を連れて、ローレンツの店に来る。その度に…ローレンツは元気がない。私は気が付かないふりをして、仕事の話をする。
いつか…その気持ちが癒えるといいね、ローレンツ。
貴方は素敵だもの。きっとまた、もっと誠実なあなただけを愛してくれる人が見つかるよ。ね?本当にそう思っているけど、胸がチクリと痛い。あはは。笑うしかないな。
黙々と働いて、支店が3店舗になった。
道のりはまだ半ばだけど、順調だと思う。
今日はまた、先生が奥さんとお店に来たらしい。
お得意さんだから、来るなとも言えないんだろうけど…ローレンツの憂い顔を見ると、もう二度とこないでほしいと思ってしまう。
眼鏡を合わせる鏡の前に座る。
いつも感謝してる。伝わっているかな?
鏡越しのローレンツに笑って見せる。うまく笑えてるかな?
貴方に好きな人ができても、ビジネスパートナーとしてなら、ずっと一緒にいれるもんね。