道程は遠くとも
人間が主体でない現象が神寄せならば俺という人格はどんな位置付けになるのだろうか。そういえば留奈さんの言った"次元を超える(越える?)"という言葉もどういう意味だろう。例えなのか文字通りなのかもはっきりとしない。
「私等としては…何ていうの?パワーバランス?
序列は氏神様より下やな。重くんは。」
「それは解る。」
接触したのは一度きりとはいえ、あの恐ろしさは敵わないものの圧力だ。俺の感覚でしかないけど、序列と呼ばれるものの位は相当の違いがあると思う。
「つか、やっぱり俺なの?
俺なのに俺じゃないの?俺の力だけの部分?」
「!あ、でもそれ間違ってないかも。
私等の都合で必要になる一部分の力…と…、
無理すれば言えなくもないかも。」
…なんか駄目っぽい。俺の性格だとポジティブな"言えなくもない"の意味は、"言えない"の方に寄っていると考える。変に無理しないで何処が正解に近いのかを教えて欲しいところだけど、これは俺の振りも悪い。
「…アレかな…回路の一部とか言ってた。」
「?カイロ?…冬に使うやつやつじゃない方?」
「当たり前やん。」
「そうよな。回路やよな〜?…う〜〜ん…。
ワードチョイスがかなり難しいと思うけど、
大きな意味で言うと合ってる。
同じ世界のことやから。」
「?同じ世界?世界規模??」
「そんくらい目線を引いたら…まぁ合ってる。」
「……。遠いってこと?」
「道程は遠くとも目指す処は間違いでもない。
…文豪みたいに言うなら。」
「文豪でもないけど。」
なんだか理屈は間違っていないとか道理は通っているとか、それくらいの話に聞こえてきて自然と此方も目がショボついてきた。ショボい。ショボショボする。…しかしゼロから始めるとは恐らくこういう事だ。今日の勉強会で会った人達の顔を思い浮かべると何も言えない。俺はあの人達を凄いと思うし、素直に尊敬している。今なら六堂の言っていた事が解る。俺が持っているものに俺の納得のいく答えをくれたのはあの人達だけだ。
「結局さ、つまり…俺は神様の一部なの?」
「そんなわけないやん。
あんまり酷いこと言いたくないけど、
神様から見たら人の子なんて吹けば飛ぶ。
どんだけ仲良く見えてもな、
力の一部として使ってる木偶も同然やで。
思い上がりも甚だしいわ。」
「……。」
めちゃめちゃ真顔でブチキレられた。怖っわ…。
分かりやすくビビってしまい、話を次に繋ごうにも動揺が隠せない。それでもここで臆してなるものかと息を潜めて調子を整えた。落ち着け落ち着け。正体が何だろうと留奈さんは留奈さんだ。言っていることが本当なら、本気でキレていた場合にはとうに俺は吹き飛んでいるはずなのだから。
「"力の一部として使ってる木偶"…てこと?」
「いや、例えやしそれぞれやけど…、
それに近いのは、さっき重くんが言ってた、
憑依するとか何とかってタイプかな…。
だけど神寄せはもっと流動的な意識で、
主体も移ろう。色んなものが同時にある。
その中の一つとして人の子も招かれる。
思考は反映される。人格は幾つかあるとも、
何一つ無いとも言える。生きてる物総て。
…本当はこういう存在は他にも結構居る。
この辺りの神寄せが特に強力なだけ。」
「???どういうこと???」
「重くんに解る言葉で言うと、
近いところでもせいぜいこのくらい。
これ以上は何言ってるか解らんと思う。
…てか、私も上手く言えん。」
悪いけど既にサッパリ解らない。
「…けど、なんで"神寄せ"っていうの?」
「そんなの、アンタ等がそう呼んだから。
次郎右衛門より前から、ずっと此処に在る、
アンタ等人間にも感じる力をそう名付けた。
人間が見つけて、人間が決めたもの。
それ以上でも以下でもない。」
「………。」
結論は思っていたよりもずっと簡単な答えとなって俺に提示された。俺が思うことは、おかしな話、人と人以外とは自分と自分以外を想定することに似ているのかもしれないなと、そんな程度の考察だった。こんなもんなのだろうか。こんなチョロい理解でいいのだろうかと不安になりつつも、今はこれ以上は何も考えられないのだからどうしようもない。
サポートしてくれる人達には申し訳ない感じはあるが、これが現時点での神寄せの本性なのだ。




