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神のみぞ知る世界


 留奈さんへの報告は早く済ますに限ると考えた。また忘れると面倒だからだ。自転車をコンビニの駐車場に置いたまま、店内で買ったレモン味の炭酸飲料を片手に、少し歩いてお稲荷さんの社の方に足を伸ばした。どうしたら留奈さんが呼べるのかは考えていなかった。多分向こうから出て来る。敢えて言うならば何とかなる予感がした。


「お疲れ様〜。」


ほらやっぱりだ。声だけが聴こえるが、鳥居を潜ると直ぐに竹藪の緑の中からキラキラと輝く何かが降ってきた。以前に見た時は敷地の外からも見えたのだけど、今日は声だけのせいか近くまで来ないと気が付かなかった。

「…留奈さん?だよね。」


「他に誰がいるの〜?…てか珍しいね、日曜日に。

 どうしたのこんな時間に。」


「前に聞かれてた田端の話。」


「?は?今頃なにそれ。遅っそ。…まぁ聞くけど。」


「駄目だったっぽい。」


「ぽいって何?…あ、はっきり言わんてこと?

 謙虚な子なんやな、神社の跡取りは。」


「謙虚かどうかは知らんけど…。」

ちょっと違うニュアンスで受け止められているのが気にならなくもないが、留奈さんも言う通りコレはもう何か月も前の話だ。結果だけ伝われば問題無いだろう。今はそんな事より周囲の他人の目が怖い。ここでこうして会話している俺の姿は、外から見れば一人で虚空に向かってブツブツ呟いているだけの異様な光景のはずだ。出来るだけ手短に済ませたい。


「…で、ホントのところ何しに来たの?」


「え?…や、だから報告しに。」


「そんなんでわざわざこんな時間に来る!?」


「?来るよ。ついでやし。」


「ふ〜ん…何のついでかが大事なやつね。」


流石は神様の御使い。勘が良い。

「バイトやっただけ。今帰り。」


「何か神様絡みやったってことやろ?

 私の事思い出したってことは。」


やっぱり怖いわこの人。年の功というやつか。人間をよく知っている。

「神寄せについて色々聞いてきた。」


「ふ〜ん…人の子なりの考え方があるからなぁ…。」


「あのさ…この辺で神寄せが力を使ったら、

 留奈さんにはそれが分かる?」


「……。待って。長くなる。

 そっちに集中したいから、形作るわ。」


人の形を作るというのだろう。神様にしてみれば人間と同じ形態をしていた方が集中しやすいのか。思わぬところで新事実を知ってしまった。

 …そっちに、って…俺の話に?

 人間に合わせやすいってことかな…。

確かに人間には形から入るタイプというのは居るけれど、それと同じ理屈なのかは解らない。神のみぞ知る世界である。

風もないのに舞い散る光の粒から人間の形が作られる。ついさっきまで常識がどうとか普通の人みたいな事を偉そうに考えていたはずだが、そういえばもうそんな事を語る権利は自分には無いのかもしれない。なんで俺はこれを何度も見て平気なんだろう、本当に。腰抜かすとかじゃないんだから怖い。自分の知らない自分が他人のように垣間見える。どういう反応が正しいのかなんて自分でも決められない。

 ………そうか…。

 だから俺はこんなに気にしていたんだ…。

猫を追いかけて未知の光を見てしまった、あの時の水池に共感したのだ。自分のことのように思えたから必死だった。それは多分…昔のことだけど、水池が森川を気に掛けていたのと似たような事で、今になって何となくアイツの考えていた事がちゃんと解った気がする。


「本当にどうしたの、ぼ〜っとして。」


瞬きする間に思えた自分の時間と、すっかり何時も通りに姿を整えている目の前の留奈さんのリアルな存在感に脳が混乱した。そもそも神様の御使いなんて存在がバグだから仕方がない。何も考えないまま、感じないままの乾いた笑いが出た。

「…何でもない。」

実はそうでもなかった。胃のあたりがグズグズに溶けた感じがする。けれどそれが何なのか、何故こうなったのかは全く見当もつかなくて、上手く説明が出来なかった。

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