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次世代


「さっきの答えはもう出てる。

 勉強会には連盟の偉い人も居たんだから、

 無いと言ったら無い。間違いなく無い。」


「?…なんで言い切れんの?」


梅村さんは心から分からないといった風に真摯な態度で疑問を投げかけた。直前の怒りより探究心が勝ったようだ。


「神衆連盟は元々アニミズム由来の信仰を、

 合祀されたり忘れ去られたものからも、

 掘り起こして研究してる。

 …松尾君には失礼かもしれないけど、

 神寄せは何度か途切れていると考えられてる。」


「…ああ、フゥン。…で?」


「途切れた期間の事は松尾君とは関係無い。

 …無いと言わざるを得ない。」


「??先代は曾祖父の次郎右衛門さんだろ?」


「恐らく血縁は継承の必要条件ではなく、

 松尾君は曽祖父の才能を遺伝的に受け継いだ。

 その能力者としての適性が由縁だと、

 蓬莱さんは考えてるらしい。」


「ふ〜ん…?…いや、関係無いってなんだ??

 それ以前は血縁関係が無かったとしても、

 継承されるタイプの神通力なら、

 神寄せは神寄せとして…同じ性質のはずだ。

 通じているのは同じ神様なんだから。」


「俺も理解しがたい推論なんだけど、

 蓬莱さんが言うには、神寄せの"神"というのは、

 能力者もその一部に組み込んだ大きな回路…、

 集合体と仮定するなら能力者自身が、

 まるでその中の一柱であるように機能する…。

 つまり能力者が変われば同時に変質するもの、

 という…他に例の無い性質の浮遊生命体。

 そのせいか憑依型の様に恐ろしく自己中心的で、

 自分のしていることがどうやら見えていない。」


「……………。」


梅村さんが信じられないものを見るように此方を上から睨んでくる。ギクリとするものの、言われている内容の意味が解らないから何が不味いのかもピンとこない。取り敢えず、開いていた口をつぐんで顎を引くと、梅村さんは慌てて表情を取り繕った。


「あ、ごめんごめん。

 …憑依型と同じってのは…同化してるからか。

 そのへんが同じ理屈ってこと?」


どうも呪い師よりは祈祷師の範疇の話であるらしい。怪訝な顔で尋ねる梅村さんに、特に面白くもないといった口調で木根さんは何処までも平静に説明を続けた。


「恐らくね。連盟に確認されてる表象では、

 ぶち猫は現時点で松尾君が目にした唯一の眷属。

 既に自分のものであることが分かってる。」


「姿は捉えられるのに何をしたか解らない…?

 …憑依された人格にもちゃんと反応はある。」


「あれね、覚えてないんだよ。例外なく。

 認識出来ない。松尾君もそれ。」


「あ〜、そうか!…本人の精神を守る為か…。」


「そうゆうこと。エフが全てを操る。

 制裁の感覚と記憶が無いってこと。」


「…いや、それもまだ仮説のはずだろ…。

 ぶち猫が見えるのは先代の遺したものだから?」


「表象を見る分には問題無いんだろうな…。

 先代に縁の聖域の中では抜群に見えたとか…、

 確か言ってたよね?エフが綺麗に見えたって。

 ぶち猫は其処から逃げた猫で、

 多分、能力者よりも本体を優先したから。

 …古参の仲間と例えた方がいいかな。」


「……能力者の意思じゃない…。

 意思統制の出来ない集合体の神様??

 それに憑依されるって…どっちかって言うと、

 呪いか祟りみたいなもんじゃないか?」


「そう思う。暴走の危険も高いかもしれない。

 …随時発動の憑依型霊能者…。

 だからマコには聴こえなかったと考えたら、

 繋がる。…多分何処かでスイッチが入るんだ。」


「待て。赤沢の能力者判定は自称してるだけ。」


「結構当たるよ?」


「占い感覚で本職が語るのやめろ。

 看板が重いにしたって、自由過ぎる。」


「信じるも信じないも自由。」


「お前が言うな。迷惑考えろ。

 フザケてるといつか本当に罰当たるからな。」


「祈祷師のクセに罰当たりか…ははっ。面白い。」


「…………。」


言葉を無くした梅村さんに対して、笑顔の木根さんは一人でいつまでもウケている。生温い目で見守られて正気に返ったのか、気を取り直したように再び語り始めた。


「随時発動するタイプは過去にも例がある。

 多いのが呼応する形。その時限りの能力。

 蓬莱さんは生来の才能と言ったけど、

 俺達からすれば神様が予定した次世代だよ。

 本人由来の才能ではなく、神寄せの為の媒体。

 正しく神様のお告げ通りに現れた御使いだ。」


「…まぁそうなるな…。俺は気に入らないけど。

 てかそれ、本人に話して良いのか?」


「解釈の一つに過ぎないとは言ってた。

 配慮する義理もないけど、一応伝えとく。

 悪いけど失礼なのはお互い様。」


「………。ホントごめん。」


梅村さんはゆっくりと首を項垂れて、また謝った。

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