表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/112

パトロール


 どこがどう違うのか。違いを区別するには分類を知るだけではなくて、物事に対して厳しい判断を下す胆力、みたいなものが要る。判断力と呼ばれるやつかもしれない。これを持つことは、違うものだと結論する行為に必要な条件だ。はっきりと周りに伝えるならば、その責任を受け入れなければいけないとも思う。そして、違うものだと結論づける為には、まずその対象を詳しく観察して身に付けた知識や経験と照合することで、違うものだと区別する能力が要る。これが出来なければ違いは認識出来ない。前提だ。つまり、違いが分かる為には判断力と鍛錬された観察力と知性が要る。違いが分かっていると主張するならば責任も伴う、ということだ。

人の知識や経験なんてものは様々で、不注意な人間も珍しくはない。俺も自分がそうだとは思いたくないが言い切れない。実際に体験したことを直ぐに、ああ…これはコレコレこういう名の現象で、次はあんな事が起こり、こんな結果になる。実はその原因はアレなんだ。などと即座に判断出来る人間がどれだけ居るだろう。医者とか科学者は出来そうではある。けれど俺は当然そうじゃない。


「fs能力と伝統的な霊能者は、現状では、

 関係があると考えられてるだけの別の物。」


頓珍漢な反応を見せたせいで全く状況を理解していない事が解って貰えたらしく、蓬莱さんが初心者向けの解説を始めてくれた。ようやく少しホッとする。


「重紀君の様な神寄せや、

 木根さんの祈祷、梅村さんのまじないや呪術は、

 神様と呼ばれるものの力を借りるものであって、

 それは自然に発生した大いなる力。

 人間の能力者はその一部に作用する事は可能。

 だけど比べれば不完全なモノだから、

 まだ人が直接関わるケースには使えないの。」


「…そうなんだ…。」

言われてみればバイトでついて行った先は廃墟や山の中で、そもそも人影の無い処だった。蓬莱さんが毎回一緒だったから安心出来たけれど、そうでもなければ闇バイトかと思ってしまうところだ。


「神様の特性を利用する方法が主にまじない。

 御祓いは聞いた事があるだろうけど、

 木根さんの家系は神道の神社とは形式が違う。

 神寄せに近いかもしれない。

 …ただね、重紀君が継承した力は恐らく、

 神様に関係するものの中でも珍しい。

 次郎右衛門さんの時に解った情報だけでも、

 文吾町の土地神様は異質なの。名前の無い大物。

 神寄せ以外には本体が滅多に観測出来なくて、

 御使いに当たる眷属が多いから影響力がある。

 …形態として集合体なんじゃないかって、

 仮説はあるけど、正体は今も解らない。

 土地神様ではあるのだろうけど。」


「…それは、どうして解るんですか?」


「その場所を動かないから。

 それが土地神と呼ぶ定義。」


「……。同級生の情報とか…話さないと駄目?」


「いいえ。貴方は通報してくれたようなもの。

 此方から見つけられるから、大丈夫。」


「?」


「警察のようにはいかないけど、

 fs環境の調査をするだけなら、

 環境保全局の通常業務。

 重紀君も手伝ってくれてる仕事の一環。

 パトロールみたいに遠くからでも、

 訓練した観測者にやってもらえば、

 ちゃんと分かる。

 本当に問題があれば二人の様な霊能者に、

 行政から派遣される形で出向いて貰う。」


「へぇ…。」

成程。俺達みたいな人間が行く前にパトロールして異常な所を見つけているのか…。

 …?じゃあ、俺は要らなくないか?

 その観測者さんがやってくれれば良い事だろ?

「パトロールしてるのに、

 なんで僕が見る必要があるのか、解らない。」


「それで分かるのは、さっき言ったような、

 自然発生した大いなる力の類だけ。

 昔からある避けがたい不運や不幸の元。

 重紀君がバイトとして重宝されるのは、

 そこまで大きくなる前のfsの反応について、

 悪いものの急所がズバリ見えるから。」


「?」


「そういう観測者は稀有なの。

 反応の中心というか…なんて言うのか、

 回路を保っている楔の様な部分が、

 的確に観測出来てるのが解ってきたから。

 …理由は解らないけど。」


「……あ〜、其処さえ壊せば散らばる?」


「そういうこと。精度が全然変わってくる。」


「へぇ〜、そうなんだ…。

 じゃあ、蛇もその調子でやれるってこと?」


「主だった被害の対象が人間になり得る場合、

 fs能力は使えない。基本的に禁止。

 役に立たない可能性の方が高いから、

 危険なだけでいいことないの。

 蛇だとすれば霊能者の出番。」


「あ、そっか…。」

自分の頭も慣れない情報を急に詰め込んだせいで大分危うい。直前の話を繰り返させてしまった。


「正直私には蛇かどうかは、

 話を聞いただけでは判断出来ないのだけど、

 間違いなく土地神の不興を買うものは居る。

 そうでなければ次郎右衛門さんの…、

 例のぶち猫が相手にするはずがない。」


「…相手?」


「お互いを認識するにも格が違うと成立しない、

 みたいなこと。普通は相手にしない。

 猫が光を追いかけるという事が初めてなら、

 尚更、ぶち猫が現れたのには意味がある。

 …話を聞く限りは直接的な関与ではなく、

 その状況を作る為にfs操作してエフを動かし、

 重紀君の前に引き摺り出してきたのだと思う。」


「引き摺り出す…?」

まるでぶち猫が犯罪者集団の首領みたいな表現をされているのだけど、それは本当に適切で正しいのだろうか…。何か怖い。


「猫に追われる類は表象さえ持たない事も多い。

 …けど、興味深いな。もし表象を持っていたら、

 重紀君にはどう見えるのかしら…。」


「え?」


蓬莱さんの言葉にまたもや周りがザワザワし始めている。


「それ、気になってます。」


「そう。それですよね。」


木根さんと梅村さんが同意した。

そういえばそうだ。蛇も鼠も蛙も起こった現象に付けられた名前でしかないと言っていた。蛇と呼ばれるものの表象が蛇に見えるとは限らないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ