表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/112

幼馴染み


 大人しく成り行きを見守る今の俺はまるっきり所謂指示待ち状態である。慣れたものであるとは言え、今回は心配な点が幾つかある。まず俺は基本的には同級生に関する情報をあまり大人に話したいとは思わない。それぞれ知られたくない事もあるだろうから。しかも水池は浮遊生命体が見えているのに大人達にはそれを隠しているフシがある。森川はどうやら話を聞いているらしいが、アイツ自身がそもそも大人を頼るタイプではない。それは標的にされる理由にもなるし、だからこそ無理をする。

水池は話す相手を見て選んでいる可能性がある。俺と話した時の様子を思い出すと、そうとしか思えない。いつまでたっても息は合わないし気軽に話せる仲でもないが、今まで交流が無かった訳ではない。寧ろ森川の件以来、俺の交友関係を基準にすれば女子の中では喋る方だ。それでも昨日まで、自分にだけ何かが見えるなどという普通に考えればオカルトじみた話を水池がしたことは一度も無かった。だから俺も珍しいと感じて話にノッた。本来のイメージは真逆である。徹底したリアリストだ。

怖い大人の様な過激な思想や計略を平然と話し、"やろうと思えば出来るって、考えたことも無い?"と言い放たれたのを覚えている。よっぽど性根が悪いのかとドン引きしたら、"その必要が無いなら、その方が良いよね。"と笑った。当時は馬鹿にしているのかと思って面白くなかったのだけれど、あの頃の俺達は中学生である。言っていることは正しい。アレでも芯はしっかりしている。ただ何と言うか、複雑で奥まった所に住んでいるのだ。

 …………。

最初は森川についてだった。徐々に学校に復帰する様子は担任が気を遣って俺にだけ話すようになった事だ。何処で聞いていたのか、水池はそれを教えて欲しいと話し掛けてきた。他の生徒には言いふらさないように言われていたのだが、水池が気に掛けていたのは知っているし、一応、悪い事をしたと思っていた俺は簡単に経過だけを話した。良かった良かったと言って嬉しそうなので俺も話して良かったのだと思ったくらいだ。実際、水池は森川にとって不都合な事は何も起こさなかった。

解りやすくライトノベルやアニメに例えると、俺と田端の関係が悪友の様な幼馴染みならば、森川と水池はきちんと助け合える幼馴染みだと思う。当然、あんな風に甘くも緩くもない。アイツ等の共通項は、大人を警戒して無理をしているというところだ。



 自分で始めた物語が独り歩きするという現象を身を持って体験してみると、不思議と中学の頃にやっていたバレーボールを思い出した。相手のコートにサーブを打ったら、あっさりと拾われて巧みに撹乱され何処に返ってくるか分からない。そんな状況なのだろうなと他人事の様に冷静だ。例えろくでもない解答が出されたとしても判断は任せるしかない。俺には身に染み付いてしまっている諦観がある。森川の様に足掻けないし水池の様に達観は出来ない。…正直水池のあの台詞は言い方が良くない。馬鹿を肯定している様にも聞こえる。今思えば置かれた状況の話だったのだろう。

無力であれども責任を感じない訳では無いから、それなりに行く末を心配して顰め面をしているところに、世間話でもする様な軽さで蓬莱さんの説明が聴こえてきた。


「外に出た浮遊生命体表象は、

 もう小さな神様みたいなもの。

 重紀君もよく知ってる、御使いに近くて、

 ただの猫に追い掛けられて逃げるとは考え辛い。

 逆ならともかくね。

 光の球はもっとずっと扱い易くて抽象的な、

 中身の無い存在だと思う。」


珍しく蓬莱さんが明るく笑っている。いや、明るいと言うより可笑しくてしょうがないといった感じだ。一区切りついたと見たのか気になる所があったのか、小羽田さんが挙手して"いいですか"と断り、後を引き取った。


「中身が無いと言うのは、

 どういう意味なのか解りづらいと思いますよ。

 僕もちょっと解らない。

 人格を持つ程のものではないとか、ですか?」


「そうですね。

 本当だ。重紀君に伝えるなら、

 人格を持たず形骸も場合によって固定しない…、

 眷属という本体の一部の様な存在でもないから、

 軽いとか若いとか例えた方が解りやすいかな?

 それでどうですか?」


「あ〜…何となく解ります。

 ありがとうございます。

 …松尾君は見えんかったの?その光。

 それともタイミング逃して見れんかった?」


「……。見てない、としか。…わかりません。」

言われてみれば、どちらか分からない。もっと言えば、水池がどこまで本当の事を言っていたかも分からない。適当に誤魔化していたとしても俺にそれが見抜けるわけがない。


「そらそうや。そんなん判断出来ひんもんな。

 …その子は光の球を見たのは初めて?」


「や。…あ、でも…わかりません。すみません。」


「いや、いや。とんでもない。

 正直が一番助かるから。」


上手くいかない変な受け答えに笑顔で応対する小羽田さんが奇妙で何だか変な人みたいだ。同じ事を思ったらしい六堂が普通にツッコんだ。


「…めっちゃ嬉しそうスね。」


「別に嬉しくはない。素晴らしい。」


 !本当にこういうこと言う人って居るんだ…。

小羽田さんがマッドサイエンティストみたいになっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ